131 道中の襲撃
ちょっとバトル
「ん・・・やっぱり来たか」
馬車での移動中に俺は思わずそう呟く。馬車の御者に止めるように指示をしてから降りようとするとセリュー様が聞いてきた。
「フォール公爵。何事ですか?」
「お客様がお見えのようです。セリュー様はここでお待ちを」
その言葉の意味に気づいたセリュー様は緊張したような表情でこんなことを言ってきた。
「あ、あの・・・フォール公爵。僕もお手伝いします!」
「お気持ちはありがたいですが、今のセリュー様では勝てないと思いますよ?」
「で、でも・・・僕はメフィを守りたいんです!」
一歩も退かないようにこちらを見てくる覚悟に俺は少しだけ返事を迷ってから答えようとするが、その前にメフィが声をあげる。
「ダメですセリュー様!絶対ダメです!」
「な、どうして止めるの?」
「大切な人に傷ついて欲しくないからです!私だってセリュー様を守りたいんです!」
「・・・!それでも僕は」
苦悩するセリュー様に俺は少しだけアドバイスを贈ることにした。
「セリュー様。本当に大切な人を守りたいのならその心も守るのが貴方の役目ですよ」
「心も・・・」
「相手が安心するくらい強くなってください。それに・・・子供を守るのは大人の義務ですから」
俺はその言葉を最後に馬車を降りてから人数を確認する。視認で20人、伏兵に何人かいるな。面倒だがまずは近い奴から叩くか。そう思って俺は隠れている伏兵の一人目掛けて突っ込むとそのまま一撃で無力化する。
「な・・・て、テメェ!」
「頭が高い」
俺は剣を構えるもう一人の男を拳で黙らせると、その次に視認できた20人へと突っ込む。
「な、なんだお前は!」
「構わねぇやっちまえ!」
俺を囲んだ連中を俺はさながら漫画のように回し蹴りで沈めてから飛び上がった勢いを利用してリーダー格の男を倒した。
「か、頭ぁ!」
「このやろう!」
リーダーがやられてムキになった連中を今度は拳を使って倒していく。一応剣を持ってきたけど使う必要ないなぁと思っていると俺は瞬間的に自分に飛んできた矢を素手で掴んでいた。
「な・・・受け止めただと!?」
自分でもびっくりしたけど、死角からの狙撃を普通に察して体が動けていた。鈍ってはいてもやっぱりカリスさんの身体能力は桁外れだな。そうして倒していくと、最後に逃げようとする奴がいたので俺はそいつの首を掴んでから言った。
「敵前逃亡は場合によって死罪だろ?」
「くっ・・・くるしぃ・・・助けてぇ!」
「全く可笑しな話だ。襲われたのは私達ではないのかね」
それが揃いも揃って返り討ちとはこの世界の賊の程度が知れるというもの。まあ、いいけどさ。俺は男を締め殺さないように意識を保たせながら聞いた。
「さて、質問だ。君たちの雇い主はだれかな?」




