127 祖母と侍女
プチ女の戦い
事件は時に思いもよらないところで勃発するものだ。互いに譲らない想いが時には衝突するものだ。そして現在争っているのはなんとユリーと母上の二人。その内容は・・・
「大奥様。バジル様のお世話は私の仕事ですので」
「あら?たまには私にもやらせて頂戴よ」
いつもは大人しいユリーが対抗心を燃やしている。その相手の母上も譲る気はないのか微笑んでいる。バジルを中心にして現在起こっている戦争。その中心人物のバジルは可愛らしく笑っておりなんとも大物になりそうだ。
「か、カリス様。あの止めた方がいいですよね?」
「止めたければ止めればいいさ。出来ればね」
「僕には無理です・・・」
たまたま居合わせたミゲルが困ったようにそう呟く。
「そもそも大奥様に逆らうなんて何を考えてるのでしょうかユリーは」
「女には時に引けない時があるのだよミゲルくん」
「で、でも無礼ですよね?後で罰があるかもしれません」
「それは大丈夫。あの程度なら母上は気にしないから」
とはいえ、このまま修羅場を続けても得るものはない。仕方ないので俺はバジルに近づいて抱き上げると二人に言った。
「お二人ともバジルのことが好きなのはわかりますが、このまま争うなら私がバジルと一緒にお風呂に入りますからね」
その言葉に二人ともぐっと押し黙る。俺はバジルに視線を向けると聞いてみた。
「バジルはパパとお風呂でいいかな?」
「うん!」
「と、いうわけです。二人ともこれに懲りたら譲ることも覚えましょう。母上も可愛い孫なのはわかりますが、風呂も侍女の仕事の一つですから」
「わかったわよ・・・」
「ユリーもだ。バジルを可愛く思うのはわかるし、世話も焼きたくなるだろうけど、祖母との交流も時には必要だからね。それくらいの器量は持とう」
「・・・すみませんでした」
まあ、このくらいのいざこざなら可愛いものだ。バジル大好きの母上が最近ユリーをえらく敵視しているのはわかっていたので想定内だが、せめてもう少し落ち着かないものか。まあ、二人ともバジルのことが大好きすぎるんだろうなぁ。
「お前は将来大物になりそうだ」
「おおもの?」
「ま、いずれわかるさ。風呂入ろうな」
「うん!」
息子というのも案外可愛いものだ。いつもは母上やユリーとべたべたしているので俺はそこまでバジルには干渉しないが隙を見つけてはこうして一緒の時間を過ごす。大切な我が子に優劣なんてつける必要はないからね。まあ、息子の場合は反抗期が早そうでお父さん少しだけ寂しいけど、息子は素直すぎると苦労するだろうから、その時はきちんと守らないとね。
まあ、ユリー辺りがその辺をフォローしてくれそうだけどさ。にしてもあんなに饒舌なユリーは初めて見た。それだけバジルに対しては本気なのだろう。




