閑話 少年と専属侍女
「よ、よろしくお願いします!」
侍女の衣服を来た少女・・・メフィを見ながらセリューは首を傾げて聞いた。
「本当に僕の侍女で良かったの?」
「は、はい。セリュー様に救って頂いた恩をお返ししたいのです」
「恩だなんて、そんな・・・僕なんかよりもフォール公爵の方が凄いよ」
セリューはこの前のことを思い出してそう言う。屋敷に忍び込み自分の命を狙った賊をあっさりと許して、なおかつ助けるなんて普通の人間には出来ないだろう。しかも自分の娘に似た容姿の子供の正体をあっさりと看破してみせたあの洞察力。色んな意味でセリューは勝てないと思いつついつかは越えたいと思うのだった。
そんなことを思うセリューを見ながらメフィは首を傾げて聞いた。
「セリュー様はフォール公爵に憧れているのですか?」
「もちろんそうだよ。僕は将来はああいう格好いい人になりたいんだ」
「将来・・・あ、あの。やっぱりセリュー様にも婚約者というのはいるのですか?」
「いるけど・・・それがどうかしたの?」
その言葉にメフィは少しだけ挫けそうになるがそれでもなんとかセリューを見て言った。
「その・・・仲はよろしいのですか?」
「そうだね。ちなみに僕の婚約者はフォール公爵の娘さんなんだよ」
「セリュー様は・・・その方のことが好きなのですか?」
その質問になんと答えるべきか悩みつつも素直に答えることにした。
「わからないんだ。フォール公爵への憧れの気持ちなのか、これが恋愛というものなのかどうか。ローリエ嬢は確かに魅力的な人だけど、成長するに従ってその気持ちが本当なのかわからなくなる。メフィは恋をしたことある?」
「私は・・・はい」
「それはどんな感じなの?」
その言葉にメフィは少しだけ悩んでから頷いて言った。
「その人のことを考えるだけで、フワフワしたような気持ちになれる幸せになれる人のことだと思います」
「フワフワ・・・」
「私はあの時確かにそう感じました。助けていただいた時に確かに感じた気持ち・・・それが恋だと思います」
セリューはその言葉に首を傾げる。まるで自分に向けられたようなその言葉に思わずメフィを見るとメフィは微笑んで言った。
「だから私は・・・あなたの側にいたいのです」
その笑顔と言葉にセリューはフリーズしてしまう。いや正確には見とれてしまっていたのだろう。なんと答えればいいのか悩んでからセリューはポツリ言った。
「少しだけ・・・考える時間をくれ」
「はい。それがどんな言葉でも私はあなたの側にいます」
こうして、使用人の身ではあるが大々的に告白をした少女の存在が今後セリューにとって大きくなっていくことは言うまでもないだろう。




