110 平和的な話し合い
お話
「さて、とりあえず。君たちの名前を教えてくれるかな?」
別室へと移動してから俺は四人にそう聞くとローリエそっくりの子がまず最初に名乗った。
「私はナナミといいます」
「そうか。最後に会った君は?」
「・・・オレンジ」
ポツリとそう名乗るその子の後に順番に活発そうな男の子がゲリラ。クールそうな女の子がメフィと名乗ったのを見てから俺は言った。
「君たちを我が家に歓迎しよう。ただその前に君たちの元の主のマッシュ伯爵の元から君たちの仲間を助けて、尚且つマッシュ伯爵にお灸を据えることにするつもりだけど異論はあるかな?」
そう聞くとオレンジがポツリと言った。
「本当に助けてくれるのか?」
「ああ。もちろん」
「なら聞くけど・・・どうやって仲間を助けるんだ?どうやってあのクソジジイにお灸を据えるんだ?」
「助けるのは簡単だ。どんな方法でも助けられる。問題はどうやってお灸を据えるかだけど・・・どうせなら私の手でやるよりも未来の国王陛下にでもやって貰いましょうか」
その言葉に疑問符を浮かべる彼らを放置して俺は聞いた。
「誰かこの中で怪我をしてる人はいるかな?」
「あ、あの・・・私が少しだけ」
そう手をあげるメフィという少女。なんでもマッシュ伯爵に殴られて出来た跡が残ってるそうだ。それなら都合がいい。
「なら、それを口実に行こうか」
「行くってどこに?」
「決まってるでしょう。マッシュ伯爵の元にです。その前に寄るところがありますがね」
そうして部屋を出ようとする前にローリエそっくりのナナミという少女が頭を下げて言った。
「あ、あの・・・さっきはすみませんでした。命令とは言え娘さんのふりをして襲いかかって」
「構わないよ。ローリエそっくりとはいえそれを見破れない私ではないからね」
「参考までに聞きたいのですが・・・どこがダメでしたか?」
そう聞かれたので俺は少しだけ考えてから答えた。
「全体にかな。立ってる姿勢とか、話し方とかも全部ダメ。確かに素人には見分けがつかないだろうけど、私ほどの愛妻家&愛娘家になれば見破れないことはないだろうね」
「そ、そうですか。凄いですね」
冷や汗を流しているナナミに俺はしばらく考えてから言った。
「まあ、でも。本当に似てるね。それ」
「生まれつきです。少しだけメイクしてますが、私はこの容姿だからマッシュ伯爵に拾われたのです」
「なるほど。なら、さっさと行こうか」
早めにこの茶番を終わらせて普通に戻ろうと中庭へと向かう。そこでセリュー様を懐柔してからそのままアポなしでマッシュ伯爵家へと向かうのだった。




