109 あっさり解決
騒ぎにはならず
「カリス様。侵入者を捕らえました」
サーシャの部屋の前に着くと丁度サーシャの侍女が侵入した子供の一人を縛って持っているところだった。
「ご苦労様。こちらで引き取るよ」
「・・・その後ろの子供達はよろしいのですか?」
途中で回収してきた二人を合わせて合計三人の子供を見てそう聞いてきたので、俺は頷いて言った。
「大丈夫。話が通じる相手のようだからね」
「オレンジくん!」
「・・・ナナミ。どうしてここに?」
最初に俺を襲撃してきたローリエそっくりの子供が話しかけると反応を示すその子に俺は微笑んで言った。
「簡単だよ。君たちの雇い主が変わることになったから迎えにきたんだ」
「どういうことだ?」
「えっとね。この人が私達を助けてくれるそうなの」
「そんなあっさり信じたのか?罠かもしれないんだぞ」
警戒するその子にローリエそっくりの子は頷いて言った。
「罠なんてなくてもこの人は私達を一瞬で殺せるよ。実際最初の襲撃は全部失敗してるのにこうして生かされてるのがその証拠だよ」
「それもそうか・・・どのみち捕まったから何をされても文句はないさ。それで、あんたは本当に俺らを助けてくれるのか?」
「その前に質問だ。君は私の妻を殺すためにここに来た。そして部屋に侵入する前に捕まった。この認識で間違いないかい?」
その言葉にこくりと頷いたのを見て俺は笑顔で言った。
「ならよかったよ。万が一サーシャに傷でもつけてたら容赦はしなかったけど、その前に捕まったなら許そう」
「そんなにあっさり信じていいのか?俺が嘘をついてるとは思わないのか?」
「その前に我が家の侍女に捕まってる可能性の方が高いからね。それに君がサーシャに手を出したならそこにいる侍女は私に渡す前に地下の拷問室まで連行してるだろうからね」
チラリと侍女を見るとこくりと頷いたので、彼の言葉が嘘ではないことはわかった。
「さて、それじゃあ、話し合いをしたいから場所を移そうか。いや、その前に縄をほどこう」
しゅるりと、縄をほどくとその少年は一度こちらにぐっと拳を突きだしてきた。それを受け止めてから片手で持ち上げると驚く少年に笑顔で言った。
「わかってると思うけど、おかしな真似をすれば皆ここで終わりだからね。私は平和的に話を進めたいんだ。君の勝手な判断で仲間を危険に晒さない方がいいだろう」
「はは・・・なんだよ。こんなの最初から勝てるわけないじゃん」
「そうでもないさ。私に従えば他の仲間も皆助けて今より真っ当に仕事ができるよ。もう人殺しはしなくて済むならその方がいいだろ?」
その言葉に黙りこむが、やがて力を抜いたのを見て冷静に実力差を認識できたようなので四人の子供を連れて俺は別室へと移動する。一瞬侍女に視線を向けて、このことを秘密にするように伝えるが、まあ言わなくてもこういうことは絶対にサーシャやローリエには伝えないように徹底してるので大丈夫だろう。




