97 納得と決意
ローリエ頑張ります!
「婚約者候補ですか?」
侍女のミリアが首を傾げる中で俺はローリエに説明する。
「公にはローリエはセリュー様の婚約者ということになるが、あくまで関係は婚約者候補のままにしてある」
「えっと・・・つまりお嬢様は基本的にはセリュー殿下の婚約者という扱いですか?」
「ああ、そうなる」
その言葉に驚くミリアを差し置いてローリエは言った。
「ということは、王妃教育なども受けるのですか?」
「うん。大変かもしれないが・・・できるかい?」
そう聞くとローリエは頷いてから言った。
「勿論です。絶対にフォール公爵家の娘として恥ずかしくないように行動します」
「ああ、期待してるよ。でも、もしローリエに好きな人が出来たらすぐに言ってくれていいよ。その時は応援するから」
「はい、でも私はお父様より素敵な殿方を知りませんから」
なんとも嬉しい台詞だけど、段々大人になっていく娘に寂しさも感じるのは仕方ないだろう。というか、この年でここまで達者に口が回るのはきっと賢さの賜物だろう。本当にハイスペックな娘に感心しつつも俺はミリアを見て言った。
「ローリエがセリュー様の婚約者"候補"というのは極秘の情報。故に基本的には他言無用だ。屋敷の者でも信用できる者だけに私は話す。その意味はわかるな?」
「は、はい!」
「君にはこれからローリエの専属侍女として忙しく働いてもらう。大変かもしれないがローリエを隣で支えてあげてくれ」
「もちろんです!お嬢様は命に代えても守ってみせます!」
心意気は立派だけど・・・
「自分のことを疎かにするのは許さない。きちんと君が無事であってローリエを支えることを私は命令する」
献身は立派だけど、尽くされる側の気持ちも考えなければならない。盲目的に何もかも尽くすというのは時に迷惑になりかねない。それに優しいローリエの負担になっては困る。そんな俺の台詞にミリアはパアッと顔を輝かせてから言った。
「わかりました!このミリア。精一杯お嬢様をサポートさせていただきます!」
「うむ、頼んだぞ」
「はい!」
そうしてから俺はローリエを見て言った。
「無理をする必要はない。ローリエはローリエに出来ることをやればいい。辛かったら私やミリアに頼ってくれて構わない。だから安心してローリエは出来ることをしてくれ」
「はい。ありがとうございますお父様」
ローリエに重いものを背負わせたようで少しだけ不安になるが、娘を信じることにした。きっとローリエなら大丈夫。大丈夫じゃなければ全力で支えればいい。だから俺はローリエを信じて自分の出来ることをしようと思うのだった。




