92 甘えん坊お嬢様
閑話含めて100話目ぴったり。ローリエ回です(^^)
「お父様、お疲れ様です」
セリュー様との初訓練の休憩に入るとローリエがタオルを持ってきてくれた。別に汗はかいてないけど、折角の娘の気遣いを無駄にしないように俺は受け取ってから言った。
「ありがとう、見ていたのかい?」
「はい、ついさっきから。流石お父様です」
近くにセリュー様と何故かセレナ様がいるからか、いつもより丁寧口調なローリエの頭を撫でながら俺は言った。
「まあ、このくらいは準備運動だよ。それにしても本当に口調が大人っぽくなったね」
「本当に?」
「ああ、いつもの可愛い口調も好きだけど、今の口調も可愛いね」
「えへへ・・・」
その言葉に嬉しそうに微笑むローリエ。そんな可愛い娘をみていると撫でる手を止められそうにないが流石にそろそろうざがられるかもしれないので手をひこうとすると、ローリエは俺の手を掴んで寂しそうな表情で言った。
「やめないで、もっと撫でて」
ローリエさん。あまりそんなことをそんな表情で言うものではありませんよ?悪い男にひっかからないかお父さん心配になるよ。それにしても、今のはサーシャに似てて一瞬ぐらつきそうになった。愛娘とはいええらい破壊力だ。まあ、とかなんとか言いつつそのまま頭を撫でているが、ふと、ローリエが俺の服の裾を掴んでいるのに気づいた。
「どうかしたの?」
「・・・なんでもない。お父様に会いたかっただけ」
「そうか、嬉しいよ」
何かあったのか心配になるが、今日はとくに大きな出来事はなかったはず。そういえば、俺の元に来る前にセリュー様と何か話してたようだけど・・・まさか、セリュー様とのフラグが立ったとか?いや、だとしたら俺にこんなに甘えてくるのは少しおかしい。そうなるとセレナ様に何か吹き込まれたのか?
あり得なくはないが・・・それも違う気がする。そうなるとまさか嫉妬とか?俺がセリュー様ばかり構うような気がして嫉妬したとか?なんて、少し自意識過剰すぎるか?
まあ、その場合でもこちらから愛情持って構ってあげればいいか。とはいえ、セリュー様とのフラグが立っていた場合を考えると少しだけ複雑な気分になる。一応聞いてみるか。
「ローリエ、セリュー様のことどう思う?」
「セリュー様ですか?」
「ああ」
「えっと・・・いい人です」
うん、多分大丈夫。こういう時のいい人はコメントに詰まっての言葉のはず。だとしたら杞憂か。しかし油断はできない。さっきから時折感じるセリュー様からのローリエへの視線。俺はそれになんらかの情があるように感じる。まだ小さいがやがて変わりそうな火種の予感。しばらくセリュー様は警戒した方がいいかもしれないな。
とりあえず、剣術の訓練でしばらくは顔をあわせるからなるべく注意して、もしローリエがその気になったら・・・素直に応援しながらバッドエンドを回避するしかないな。何より大切なのはローリエが生きて好きな人と子供を作って幸せに一生を終えること。それを大切にしながら俺は動けばいい。
ローリエの頭を撫でながらそう考えるのだった。




