第六話
さなside
一週間たった。
らいはあの日から一言も喋らない。
他のみんなの病状も、ずいぶん悪化したように思う。
_私は、世界が暗くなったように感じる。
それは私の奇病が目にまで進行してきたのか、はたまた、本当にそうなのか。
頭痛を感じた私は、自室に戻ろうと薄暗い廊下へでた。
「さな」
いきなり声をかけられて振り向くと、緑色の葉が目に映った。
「...ぁ、かろ...」
ニコニコと笑う彼女は、奇病の悪化で感情が欠落している。
喜怒哀楽でいうと、怒 と 哀 はもう無いに等しいだろう。
かつてはころころと変わるその表情が特徴的だったが、今では面影さえも残っていない。
親友の死が分かったときに死んでしまったのであろう彼女の瞳からは、何の感情も読み取れない。
そんな彼女のことを 怖い、と思うようになったのはいつからだろうか。
どうしたの、と尋ねると、少し間を開けてこういった。
「_さなはさ。このチームのこと、すき?」
予想していなかったこの質問に私は困惑した。
勿論、このチームのことは大好きだ。みんな仲がいいし、面白いし、何より居心地がいい。
だけど、だ。
何故今、そんなことを私に聞くのか。
逆にそんなことを聞くに相応しい機会があるのか、といわれるとなにも言えない。
__ただ、とてつもなく嫌な予感がして仕方ないのだ。
「......もちろんだよ。」
とっさにそう応えたが、目は合わせられなかった。
何故こんなに不吉な感じがするのだろう。冷や汗がにじんだ。
少し、時間が経ったように思えた。
「...........私ね」
その声は凛と綺麗に響き、私は反射的に顔を上げた。
黒く濁っていたはずのかろの瞳が、一瞬月のように輝いた気がした。
「私、このチームつくってよかったな、って。本当にそう思うんだ。」
そう言うと、彼女はだらしなく笑った。
何か言おうと口を開いたが、何故か一言も発することはできなかった。
かろはそんな私を気にとめる様子もなく、おやすみ、と言うとすたすたと去っていった。
それが、私の見た最後のかろの姿だった。