第二話
雪雨月side
目覚めると、右目に花が咲いていた。
見ているだけで気が狂いそうな、赤い、紅い花。
それに私が気付いたのは、全く見覚えのない部屋だった。
ここはどこだろう。....同時に、目覚めてからの得体の知れない違和感に気付く。
あれ。
私は、誰_______?
とたん、押し潰されそうなくらいの不安が私を襲った。
何も思い出せない。自分の名前も、生い立ちも、ここまで来た経緯も。
私が恐怖で押し潰されそうになったそのとき、
「あまづーーーん、今日のごは....ん....」
ノックもせずに入ってきた、青い髪に青い瞳の彼女は
私をみると目を真ん丸にしてぽかんとした表情を浮かべた。
数秒たって、やっと思考回路が復活したらしい彼女は、そばにあった机におぼんをおくと、ものすごいスピードで廊下を走っていった。
呆気にとられて固まっていると、さっきの彼女は十数名を引き連れて帰ってきた。
「あまづ起きたんだ、良かった...!!」「やっぱり奇病の影響?」「悪化は?」
次々と話し掛けられる言葉の内容は聞き覚えのない単語ばかりだった。
言葉に詰まった私が困惑していると、黄色い目と青緑の髪が特徴的な少女が、まあまあ一旦おちつこうとみんなを宥めた。
安心したのも束の間、彼女は私に向き直り、
「おはよう、あまづ!」
と話し掛けてきた。
あまりにもとんとん拍子で不可解なこの展開に私は驚くばかりで、やっとの思いで発することができたのは、
「あの、どちら様ですか......?」
という一言だけだった。