第十四話
いちごside
...目が覚めた。
何故か全身にひどい疲労感があり、怠い気がする。
まあ貧血かなにかだろう、と思うことにして、私はゆっくりと身を起こした。
朝八時半。梅雨の時期とは思えない暖かな日差しが、カーテン越しに私の体をぽかぽかと優しく包み込んでいる。
目が覚めたばかりだというのに、もう一度寝そうになった私は、ぶんぶんと頭を振って眠気を追い払った。
そんなとき、ふと私は自分の手に赤いものがついていることに気がついた。
「あれ...なにこれ、血....?」
まさかと思って顔を触ると、案の定鼻血だったのだろう、すっかり乾いたなにかがこびりついていることがわかった。
何の気なしに視線を移すと、床にはチョコレートの包み紙。
ああ、そういや昨日はこれを食べてから寝た___...そんな気がする。
なんだか、昨日の夜からの記憶がひどく曖昧だ。
チョコレート。これを食べた、ということも正直ほとんど覚えていない。
まあ、現に包み紙が落ちているのだから、おそらくそうなのだろう。
そんなことより、今ははやく身支度を済ませなければ。
こんな顔で白田あたりに出くわしたりでもしたら......やめよう。考えるだけで嫌になる。
今日1日笑い者になるなんて御免だ。
私はさっさと顔を洗うため、洗面所へと向かう。
口のなかが、まだ、異様に甘ったるいことに首を傾げながら。