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008 新スキル

 


 ——【亡者の峡谷】第二十一階層。



 我は現在そこにいた。



 それは先ほど進化し、至った種族——グールの実力を試すためだ。グール自体Bランクの魔物であり、この世界——【ユグドラシル】では割と上位の魔物に分類されるらしいからして、その実力の程度というものについては知っておきたい。



 また、新スキルの【身体強化】についても気になるところである。いったいどの程度まで強化されるのか? それによっては運用の仕方も多少変わるだろう。



 あっ。ちょうどいいところに魔物がいるな。アレはまだ見たことがない奴だが、まぁ大丈夫だろう。おそらく。



 我はその魔物に近づいていく。その魔物は10mほどまで近づくと我に気づいたらしく、飛びかかって襲いかかってきた。



 だが甘い! そんな単純な攻撃では我は倒せぬぞ!



 我は半身で攻撃をかわし、右手に持った剣で腹を斬りつける。その魔物はそれでバランスが崩したのか、着地に失敗し顔でスライディングをした。生身なら痛かろうが、其奴は腐肉を纏ったアンデッドだ。痛覚なんぞはない。よって、すぐに起き上がり、こちらを睨みつけながら唸ってきた。見た目と相俟あいまって中々の迫力だ。



 すぐに飛びかかってこないのは、最初の失敗があったからだろう。流石に、Cランク?の魔物ともなれば学習能力くらいはあるらしい。それが全魔物中一番知能が低いと言われるアンデッド系統であってもだ。



 だが、いつまでも睨み合っているわけにはいかない。先ほどの少しの攻防で相手の能力は多少理解できた。それから察するに、かの魔物は我よりも身体能力は低い。まぁ、ほんの少しの差ではあるのだが……。



 よって我から打って出ようと思う。我は剣を構えなおし、魔物へと接近を図る。魔物はそれに対し、歯をむき出しにしながら立ち向かう。魔物は我の腕をかみちぎろうと腕を狙うが、それを許す我ではない。すぐさま噛まれそうになった左手を引き、半身になってかわす。そしてすれ違いざまに剣を頭に突き立てた。



 魔物はそのまま地面に倒れ臥すと、全く動かなくなった。



 我の勝利である。



 確かにその速さは割と脅威ではあるが、油断しなければ問題がない程度だ。ハッキリ言って負ける気はしない。まぁ、囲まれたら多少マズイかもしれないが、それもレベルさえ上げていけば問題ではなくなる。



 というか、あの魔物はなんだったのだ? まだ、見たことがないヤツであったが……。【大図書館ダンタリオン】に聞いてみるか。



 “先ほどの魔物はなんという種族なのだ?”



 《解。先ほどマスターが戦っていたのはウルフゾンビという種族です》



 “この階層にどんな魔物が出てくるか知っているか? 知っていたら教えてくれ”



 《解。把握しております。この階層に出てくる魔物は六種類。スケルトンキング、ファントム、ウィッチ、ボーンファイター、フランケン、そして先ほどのウルフゾンビです。この階層以後、スケルトンキングによる【下位アンデッド召喚】以外ではEランク及びDランクの魔物は出現しません》



 なるほど。……さて、それでは迷宮ダンジョン攻略を再開するとしよう。グールの実力も気になるところであるし、新スキルの【身体強化】も試したいしな。



 我は迷宮ダンジョンの先へと歩を進めた。



 ♦︎♦︎♦︎



 結論から言えばグールの実力はやはり高いようだ。



 しかし、それ以上に【身体強化】は凄まじかった。この【身体強化】というスキルなのだが、使用するだけで普段の二倍ほど早く動け、そして二倍の力を出すことができる。つまり、全能力が二倍になるのだ。



 我が進化してから二週間ほど経過しているのだが、この間に戦闘らしい事態には発展しなかった。というのも【身体強化】が強すぎて、Cランクの魔物がまるで相手にならないのだ。おそらく、このスキルがあればAランクの魔物ともそれなりに戦えるのではなかろうか?



 また、この二週間で昼夜問わず大量のCランクの魔物を倒したおかげでレベルがかなり上がった。あと、1レベル上げれば、また、進化ができる。全くアンデッド様様である。食事もいらず、疲労しないアンデッドは強くなるのにうってつけだと言えるだろう。



 しかし、まだまだ我は強くなれる。というわけで、とりあえず後1レベルを上げてしまおう。



 その後、我は只管魔物を狩り続けた。そして、その日のうちにレベルは40になった。我は安全な場所に移動してから立ったまま(・・・・・)頭の中で進化を承諾する。



 《種族名:グールからの進化申請を受諾。選択進化先は種族名:下位吸血鬼レッサーヴァンパイア。それでは進化を開始します》



 そして我は意識を失った。



 ♦︎♦︎♦︎



 我は進化による意識消失後、いつもより早く目覚めた。最速記録である。



 何故目覚めが早いのか?



 それは……デコが痛いからだ。もう一度言う。デコが痛い。



 これは、生身の、それもキチンとした肉体を得た弊害とも言うべきか。座るか、寝転がるかしてから進化すべきであった……。まあ、今までちゃんとした肉体が無かったのだから仕方がないかもしれんな。



 だが、これからは立ったまま進化しない。コレは絶対に守っていこう。



 さて、気を取り直して、能力を確認するとしよう。



 “ステータス”



 ==========================================

 ==========================================

 〈名前〉なし

 〈種族〉下位吸血鬼レッサーヴァンパイア

 〈階級ランク〉A

 〈称号〉なし


 〈レベル〉1/60

 〈体力〉491/491

 〈魔力〉480/480

 

 〈究極スキル〉

 ▷なし


 〈ユニークスキル〉

 ▷【大図書館ダンタリオン】【無限収納インベントリ


 〈スキル〉

 ▷【暗視】【下位アンデッド召喚】【中位アンデッド召喚】【毒爪】【再生】(NEW)【吸血】(NEW)【身体強化】【服生成】(NEW)


 〈魔法適性〉(NEW)

 ▷火・氷・闇

 ==========================================

 ==========================================



 ふむ。スキルと、“魔法適性”という項目が増えているな。魔法が使えるようになったのか。だがまずは……



 “新しいスキルについて教えてくれ”



 《解。今回マスターが獲得したスキルの詳細は以下の通りです。



 ⚫︎【再生】…傷の再生を行う

 ⚫︎【吸血】…生物の血を吸うことで体力・魔力を回復する

 ⚫︎【服生成】…服を生成する。服は登録でき、姿を変えた時にも瞬間的に着ることができる。魔族イビル固有のスキル



 以上です》



 これは! かなり良いスキルではなかろうか! 下位吸血鬼レッサーヴァンパイアに至ったことで、魔法を使えるようになった今、これから魔法を使う機会は多々あるだろう。そんな中で簡単に魔力を回復できる手段があるのは大きい。



 よし。魔法を練習しよう。折角、念願の魔法が使用可能になったのだからな。



 ククク。待っておれ、魔物ども! 我の魔法の実験台として存分に利用してくれる!



 我は魔物を求めて、迷宮ダンジョンを再び歩き出した。



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