006 アンデッド召喚
スケルトンキングは我に顔を向けると、玉座に座ったまま、前方に右手をかざし、スキルを発動した。
スケルトンキングが発動したスキルは【下位アンデッド召喚】。我も持っているスキルだ。スキルが発動すると、地面には数十にも及ぶ魔法陣が出現した。そして、スケルトン系——スケルトン・ハイスケルトン・スケルトンメイジ・スケルトンナイト——やマミー、ゾンビが姿を現わす。
流石に我がアンデッドなのを理解しているのか、ウィルオウィスプやレイスといったアンデッドにとって無益な魔物は召喚していないようだ。
なるほど。相手は物量で攻める気か。ヤツはドヤ顔を決めながら、此方を見ている。(注:主人公が勝手にそう思っているだけです!)
ふんっ! ならば、此方も同じことをするまでよ!
我もまた、前方に右手をかざし【下位アンデッド召喚】のスキルを発動する。
すると、地面に100近い魔法陣が出現し、大量のアンデッドが召喚された。
数で言えば、此方が圧倒的に上だ。相手の軍勢はおよそ70といったところだが、此方はおよそ100。ハッキリ言って負ける気がしない。証拠に相手のスケルトンキングを見れば苦虫を噛み潰したかのような顔をしている。
我が弱いと勘違いしたか! 馬鹿者めっ!(注:勘違いしているのは主人公です! スケルトンキングに表情はありません!)
我は命令を下す。と言っても声帯がないために声は出せないので頭の中で念じるだけだが……。
そして我のアンデッドたちが動き出す。
作戦としては、前衛をスケルトン隊やハイスケルトン隊、ゾンビ隊。中衛をマミー隊。そして後衛をスケルトンメイジ隊。スケルトンナイト隊は別働隊として敵の軍勢側面を攻撃させる。
相手勢力はスケルトンキングを始め、大した知性はないので作戦なんぞはなく、思い思いに攻撃してくる。
ハッキリ言って数でも作戦でも負ける気がしない。いわば勝ち戦だ。
とりあえずスケルトンメイジ隊にスケルトンナイトを集中的に攻撃するよう命令を下す。前線を崩せれば後は楽に殲滅できるからだ。
スケルトンメイジ隊が我の命令通りに詠唱を開始した。
——カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。
うむ。極めてうるさい。スケルトンメイジ隊だけでおよそ三十体いるわけだが、三十体が一気に詠唱すると、こんなにうるさくなるのだな。まぁ、相手のスケルトンメイジもカタカタ言っているので実際は五十体くらいか?
戦況を見れば、此方が圧倒的に押しているようだ。特に別働隊として敵の側面を攻撃させたスケルトンナイト隊がいい働きをしている。そのおかげで敵の前線はすでに崩壊し始めている。
そろそろスケルトンメイジ隊の詠唱が完了する頃だ。というわけで、此方の軍勢には一度下がるように命令を下す。
そして、此方のスケルトンメイジ隊が魔法を放った。赤、青、緑、茶。それぞれ火魔法、水魔法、風魔法、地魔法が飛び交い、戦場を色とりどりに染め上げた。
スケルトンメイジ隊が放った魔法は数体の仲間を巻き込みつつも敵の軍勢を蹴散らしていく。
攻撃が止んだ頃、敵勢力は半分以上が消失していた。地面には大量の骨が散乱している。まだ、生きている者の中にも足や腕が折れていたり吹っ飛んだりしている者もいる。
我はこのタイミングで再び軍勢をさし向けることにする。
此方の現時点での損害はおよそ三十体。まだあと七十体残っている。対して向こうは残り二十五体ほど。
ふふふ。ははは。ふははは! 圧倒的ではないか! 我が軍は! よし! 行くのだ! 我が敵を討ち亡ぼせ!
我は命令を下した。
我が命令を下した途端、此方の軍勢が一斉に敵の軍勢へと襲いかかる。そして、圧倒的な戦力差を以ってこれを殲滅した。
我は最後まで玉座に座っていたスケルトンキングにゆっくりと近寄り、剣を一閃。スケルトンキングの頭蓋骨を真っ二つにした。
おー! キタ! 進化が可能になったようだ!
やはり、ボスモンスター戦は経験値が美味しい。おかげでレベルが25に達し、進化が可能となった。我は召喚したアンデッドたちを消滅させてから、進化を開始する。ボスモンスター戦後のボス部屋が安全なのは確認済みだ。
我は頭の中で進化を選択する。そして、あの声——“世界の声”が聞こえてきた。
《種族名:スケルトンキングからの進化申請を受諾。選択進化先は種族名:グール。それでは進化を開始します》
そして、いつしかと同じく我の体は淡く輝き出し、我は意識を失った。