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035 水晶の洞窟4

 


 ボス部屋に入ったコウガたちは、真っ暗な部屋を中心部に向かって進んでいく。そして、中心部に辿り着いた時、不意にボス部屋に明かりが照らされた。



 明かりに照らされて、ボスモンスターの全容が明らかとなった。



 この迷宮ダンジョン——【水晶の洞窟】の所々に埋まっている頑丈な青色の水晶クリスタル。それを全身に纏ったような鱗を持つ魔物がいた。全長は7mほどで、鋭い爪や鋭利な刃のようなものがついた長く太い尻尾を持っている。その赤い目は爛々と輝き、コウガたちを睥睨していた。



 魔物の名前はクリスタルリザード。Sランク最強クラスの魔物だ。



 その硬い鱗は様々な攻撃を弾き、鋭い爪から繰り出される攻撃は並の剣をはるかに凌ぐ斬れ味を誇る。口からは“サンドブレス”と呼ばれる地属性のブレスなどを放つことができるため、近距離でも遠距離でも戦闘が可能だ。



 コウガたちは各自戦闘態勢に入る。フィリアとシュリは後衛、彼女らを除く全員が前衛として打ち合わせ通りのフォーメーションにつく。レアハは迷宮ダンジョンボスということもあり、危なくなった者が出た場合に助けられるよう備えているが、基本はコウガたちに任せるようで壁付近に待機している。



「よし! いくぞ!」



 コウガの一言で戦闘が始まった。



 先手はコウガたちだった。



 レベルが大分上がった影響でかなり俊敏に動けるようになったコウガ、ガハク、キサキが自らの得物でクリスタルリザードに斬りつける。しかし——



 ——ガギィィィーン!



 彼ら三人の攻撃は硬いクリスタルリザードの鱗に弾かれた。



 クリスタルリザードはそれを見て、ニヤリと口の端を歪め、“今何かしたか?”とでも言いたげな表情を浮かべた。だが、そんなクリスタルリザードに背後より迫り寄る影があった。



「……油断大敵だ」



 ——?! グガァァァーッ!!!



 コウガたちの攻撃はただの囮であった。彼らを舐め腐り、警戒を怠ったクリスタルリザードは背後から急に現れたギンガに気づけなかった。



 クリスタルリザードは片目に短剣を刺され視界を半分奪われた。



「流石に体は硬くとも目までは硬くはないようだな」



 クリスタルリザードに攻撃を食らわせたギンガはすぐにコウガたちのもとに戻った。



「思った以上に上手くいったな、ギンガ」



「ああ。だが、二度も通じる相手じゃないだろう。すでに先ほどまでの舐め腐った態度は取っていない。あちらさんは本気になったようだ」



 クリスタルリザードは先ほどまでの舐め腐った態度を霧散させて、今度は警戒心MAXな上、纏う空気にはかなりの怒気を滲ませていた。



 その後も幾許か交戦するものの初手ほどの有効打を食らわせることはできなかった。むしろ、本気で戦い始めたクリスタルリザードにコウガたちが手傷を負わされていく。



「いきます! 【炎獄球ヘルフレイムスフィア】!」



 そんなクリスタルリザードにシュリが魔法を使用した。魔法の名は【炎獄球ヘルフレイムスフィア】。超高温の炎の球の中に対象を閉じ込める魔法だ。この魔法を使われたのが普通の(・・・)魔物なら今の魔法で終わりだろう。しかし——



 シュリの魔法——【炎獄球ヘルフレイムスフィア】はクリスタルリザードの高い魔法耐性の前には、ほとんど無力であった。クリスタルリザードは魔法の中に閉じ込められた状態で魔力を収束していく。そして、口から何かを放った。クリスタルリザードを中心として拡散するように四方八方へと放たれた何かは【炎獄球ヘルフレイムスフィア】を内部から爆発するようにして消滅させた。しかし、その何かは威力を然程落とすことなく、コウガたちをも襲う。



 フィリアは結界を張って、それを防ごうとするが、数瞬持ち堪えただけで破壊されてしまった。コウガたちはその攻撃を真面に食らって吹き飛び、壁に叩きつけられた。



 クリスタルリザードが放った何か。それは無魔法に分類される【衝撃波ショックウエーブ】という魔法だ。かなりの魔力を込めて放ったようで、シュリの【炎獄球ヘルフレイムスフィア】を物ともせずに突破し、フィリアの結界を数瞬で破壊するほどの威力があった。



 クリスタルリザードはコウガたちにトドメを刺そうと、口の周囲に魔力を再び収束させ始めた。茶色い何かが蠢いていることから察するにサンドブレスを放つつもりのようだ。



 コウガたちは“アレは食らったらマズイッ!”と思い、身を起こし退避しようとするのだが、いかんせんダメージが大きすぎた。とてもではないが、すぐに起きれる状態ではない。



 そんな中で、クリスタルリザードの口からサンドブレスが放たれた。コウガたちの眼前に迫りつつあるそれは、食らったらおそらく……



「あとは妾に任せるのじゃ」



 レアハがコウガたちの前に突然現れ、彼らを襲わんと眼前まで迫っていたサンドブレスを風魔法を纏わせた腕を一振りして消し去った。そして、これでもか! というほどに魔力を込めた——とは言ってもレアハからすればそこまで大した量ではない——巨大な【ウィンドカッター】をクリスタルリザードに放った。



 放たれた【ウィンドカッター】はレアハを除く誰の目にも追えない速度でクリスタルリザードへと向かい、まるでバターでも切るかのように縦に真っ二つにした。



 それを見て、コウガたちは呆然とすると同時に驚愕した。自分たちがあんなにも苦戦し、すぐに負けることになった魔物を相手にアッサリと勝ってしまうその力量に。



「どうじゃ? 妾は凄いじゃろ?」



『……』



「まあ、この程度ならお主らも進化をして少し研鑽を積めば出来るようになるであろうがな。……まぁー、アレじゃ。だからそんなに気を落とすでないぞ?」



 コウガたちは気を大きく落としていた。いずれは“リヒト様に信頼されるほどの強さを!”とは常々考えていたことだったからだ。



 しかし今回、一つ上のランク帯ではあるが、六人で挑み、そして負けた。この事実は強くなったと少し浮かれていたコウガたちの気を引き締め直した。



 彼らは思う。“このままではダメだ”、と。



 そして誓う。“必ずやリヒト様のお役に立つべく強くなろう”、と



 そんな誓いを各々が心のうちで立てている時、彼らの頭にとある声が響いてきた。



 《迷宮ダンジョンボス——“クリスタルリザード”討伐を確認。それに伴い【水晶の洞窟】のクリアを認定。攻略者に称号“迷宮ダンジョン攻略者”を贈与します。尚、迷宮ダンジョンボスにトドメを刺した個体名:レアハ・ルーヴヴォルクにはスキル“【迷宮創造ダンジョンクリエイト】”を贈与します》



 “世界の声”がコウガたちの頭に流れる。そして、七人全員に迷宮ダンジョン攻略者と、レアハだけにスキル【迷宮創造ダンジョンクリエイト】が与えられたようだ。



 何はともあれ、とりあえずは【水晶の洞窟】攻略を達成したのであった。



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