002 スケルトン御三家
進化をして、スケルトンからハイスケルトンへと至った我は、1になったレベルを上げていくために再び迷宮の奥へと足を進めていた。
スケルトンからハイスケルトンへと進化し、体が——正確には骨だが——強くなった影響か、少しだけ走る……いや早歩きが出来るようになった。我としては移動速度の上昇は嬉しいところだ。
何故なら迷宮を休みなく進んでいるが、未だにいるのは第一階層。早く次の階層へと行きたいのだ。というのも、そろそろこの階層のスケルトンだけではレベルが上がりにくい状況になってきているのだ。
進化してから今までで十体ほどのスケルトンを倒しているのだが、それで上がったレベルはわずかに1だけ。ハッキリ言ってこれでは効率が悪すぎる。故に、もっと強い魔物がいると思われる次の階層に行きたいのだ。
我はスケルトンの頭を棍棒で破壊し、骨を量産させながら階段を探す。すると、やがて左手側前方に階段らしきものを発見した。近づいていくと、やはりそれは階段だったため、次の階層目指して降りることにする。
というか、ようやくか。そもそも階段の位置は【大図書館】には分からぬのだろうか? 今更だが聞いてみることにしよう。
“【大図書館】よ。この迷宮の階段の位置は分かるのか?》
《解。把握しています》
知ってた……だと? 不覚だ。早く聞いておけば良かった……。少しだけ、いやかなり後悔してしまうな。
《ですが、全階層の階段の位置を知っているわけではありません》
“うん? どういうことだ?”
《解。私はこの世界に存在している本に記されたの情報のみを把握しているのです》
“つまり?”
《誰かが本に書いたことのない情報については把握しておりません》
ああ。そういうことか。ならば納得だ。今までどうして【大図書館】という名前なのか、と密かに疑問に思っていたのだ。
“この迷宮は第何階層まで把握しているのだ?”
《解。第四十三階層まで把握しています》
おう。随分と攻略が進んでおったのだな……。というか、今までは遭遇しなかったが、いつか冒険者なる者たちに遭遇することがあるのではなかろうか? それはマズイかも知れん。冒険者の強さは分からないが、我自身はまだまだ弱いのだ。
こうしてはいられんな。さっさと次の階層に向かうとしよう。
我は逸る気持ちのままに残りの階段を降り、次の第二階層へと向かった。
♦︎♦︎♦︎
——【亡者の峡谷】第二階層。
第二階層にも基本的にはスケルトンしか出てこないようだ。全部の場所を見たわけではないが、おそらく間違いはない。
ただ、レベルは高いようで、レベルはいくつか上がっていた。おそらく、第一階層はレベルにして1のスケルトンしか出てこないのだろう。だが、第二階層ではレベル2以上のスケルトンが出現していたのだと思われる。
しかし、まだ足りない。余力はまだ十分にあるのだ。もっと強い魔物と戦ってみたいものだ。
我は第二階層を【大図書館】の案内で進んでいく。右に左に真ん中に。迷路のような通路を抜けていくと、やがて第三階層へと続く階段を発見した。
やはり、案内があるのとないのとでは大分攻略速度が違う。全く。第一階層をウロウロと歩き回っていたのが馬鹿らしいではないか……。
我は第二階層から第三階層へと続く階段を降りていった。
♦︎♦︎♦︎
時間はいくらか経過し、そして到達したのは第十階層。ここに来るまでに通った第三階層から第九階層までは相変わらずスケルトンしか出てこなかった。何故だ、解せぬ。
そろそろ強い魔物でも出てこないだろうか? まぁ、だからといって強すぎる魔物が出てくるのも問題だが……。適度に強くて多少苦戦しながらも勝てる。そんな魔物が出現してほしいものだ。まぁ、そんな都合の良い話などあるわけがないか……。
我がそんなことを考えながら、スケルトンを殴殺しつつ、第十階層を歩いていると、前方に大きな両開きの石扉が見えてきた。その石扉には複雑な紋様が描かれている。
“あれはなんだ?”
《解。ボスモンスターがいる部屋——通称“ボス部屋”です》
ほう。ボスか。それは強そうだ。これは期待ができそうだ。
我は期待にその胸を膨らませながら……いや膨らむ胸はないが、両開きの石扉に手をかけ押してみた。石扉は見た目の重量ほど重くはなく、いとも簡単に開けることができた。
そして石扉の開いた隙間から中を覗いてみると、中には三体のアンデッドがいた。三体のいずれもスケルトンの進化種であるようだ。
まずは我から見て左側にいる杖を持ちマントを着たスケルトン。杖はただの木の棒のようだが、上部は丸くなっていた。着ているマントはボロボロで、所々から中の白い骨が見えている。
次は我から見て右側にいるボロボロの鎧を着て剣を持ったスケルトン。着ている鎧はボロボロでむしろ着ていない方が良いのではないか? と思うほどの代物だ。手に持つ剣もボロボロで所々が欠けている。
そして最後に何故か偉そうに真ん中にいる我と同じハイスケルトン。何故此奴は偉そうに真ん中にいるのだろうか? その中ではおそらく一番弱いだろうに……。まぁ、我にはどうでもいいことか。
というか、ハイスケルトン以外の二体はひょっとして……いや、ひょっとしなくてもスケルトンメイジとスケルトンナイトだろうな。まぁ、一応聞いてみるとしよう。
“アレ——ハイスケルトン以外の奴らはスケルトンメイジとスケルトンナイトか?”
《解。その通りです》
なるほど。やはりそうか。もしスケルトンメイジやスケルトンナイトを選んでいたらあのようになっていたのか。……ふむ。悪くはないな。
我がそんなことを考えていたところ、円形の部屋の中央部にいたスケルトン御三家(←勝手に命名)が動き出した。どうやら我の存在に気づいたようだ。
我も覚悟を決めねばなるまい。アレは今までで一番の強敵たちだ。
我は右手に持つ棍棒を握り直し、部屋の中へと入り、ボスモンスターに対峙した。
そして戦いの火蓋が切られた。