001 初戦闘、そして初進化
棍棒を拾った地点から歩いて数分。やがて我の前方に、同じスケルトンが現れた。とは言っても、あちらはただのスケルトン。知性を宿す我の敵ではないはず……。現にそのスケルトンは武器すら持っていない。それを見ると、知性というのはやはり偉大だと改めて感じる。
我は右手に棍棒を持ったまま近づき、棍棒を振り上げる。そして、そのままスケルトンの頭に振り下ろした。
——バキッ!
我の振り下ろした棍棒はいとも容易くスケルトンの頭を砕いた。そして、そのスケルトンはそのまま動かなくなった。というかバラバラになった。どうやらスケルトンという種族は、倒されると、ただの骨になるようである。
それにしてもスケルトンは弱いな。まさか一撃とは……。いや、それだけ武器の威力が絶大だということか。とりあえずステータスを確認してみるとしよう。
“ステータス”
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〈名前〉なし
〈種族〉スケルトン
〈階級〉E
〈称号〉なし
〈レベル〉2/10(↑1)
〈体力〉34/34(↑2)
〈魔力〉22/22(↑1)
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】
〈スキル〉
▷【暗視】
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レベルが1上がって、体力は2、魔力は1上がっているな。流石にスキルは増えないか……。
よし。スケルトンを倒しまくろうではないか。
同族殺しだが、そんなものは関係ない。我が生き残るためだ。だから、これは仕方のないことなのだ。それに罪悪感なんぞは微塵もわかんしな。
ちょうど前方には御誂え向きにスケルトンが十体もいる。これは非常についている。これは“倒せ”という天命ではなかろうか?
“これは倒せという天命だ。そうであろう?【大図書館】よ”
《解。違います》
むう。つまらん奴だ。まぁ良い。我は敵を倒し、レベルを上げるまでよ! 我は顔に笑みを浮かべた。骨の顔故に分からぬだろうが……。
スケルトン十体はやはりというか、当たり前というか、武器は持っていないようだ。まあ、我としては殺りやすくなるだけだがな。
我はスケルトンに向かって駆け出……いや、駆け出せなかったので歩いて向かった。骨の体は実に不便である……。
我はスケルトンの集団に近寄ると、問答無用で右手に持つ棍棒を振り下ろしていった。
——バキッ! バキバキッ! バキバキバキッ! バキバキバキバキッ!
ふう。やはり、まとめて倒す方が良いな! 我はスケルトン十体を倒した後、再びステータスを確認した。経験値が大量に入ったと思うので、かなり能力値も上がっているのではなかろうか?
“ステータス”
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〈名前〉なし
〈種族〉スケルトン
〈階級〉E
〈称号〉なし
〈レベル〉6/10(↑4)
〈体力〉42/42(↑8)
〈魔力〉26/26(↑4)
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】
〈スキル〉
▷【暗視】
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やはりか。スキルは増えなかったが、レベルは4も上がっている。あと、4レベル上げれば進化が可能になるな。そういえば、進化すると何に進化するのだろうか? 【大図書館】に聞いてみるとしよう。
“我が進化すると次は何になるのだ?”
《解。マスターの進化先はハイスケルトン、スケルトンメイジ、スケルトンナイトの三つです》
……三つもあるのか。これはどれを選ぶかで未来が決まるのだろう。慎重に選ばねばなるまい。だが、それはもう少し先の話だ。進化先を選ぶのは進化する時でいいだろう。
今、成すべきことはとりあえずレベル上げだ。
だが、やはりというか、レベルが高くなるにつれて、上がりにくくなっている。おそらく10レベルに達するためにはスケルトン十体では足りないだろう。
しかし、そんな都合よく大量のスケルトンなんぞいる訳がな……い……いた! 大量にいた! おそらく二十体はくだらないだろう数がいる! これはあれだ! あいつらを倒して進化せよとの天からの思し召しだな!
我は走って駆け寄る気持ちで歩いて向かう。スケルトンは我が近づいてきたことを察知したのか、こちらを一斉に向き、我に向かって歩いてきた。二十体が一度にこちらに向かって歩いてくるのは中々に迫力がある。
だが、そんなことは一切関係ない! 同族だろうが、数が多かろうが、なんだろうが、我にとっては美味しい経験値でしかないのだ!
やがてスケルトン二十体と戦闘を開始した。まぁ戦闘とは言っても一方的な虐殺でしかないがな!
我は一体また一体と次々に倒していく。
そして、五分も経つ頃には殲滅が完了した。周囲にはスケルトンだった骨が散らばっているのみだ。
我が戦闘の結果に満足していると、やがて不思議な感覚を覚えた。しかし、この感覚はおそらく進化が可能になったということだ。本能? で何となく分かる。とりあえずステータスを確認してみるとしよう。
“ステータス”
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〈名前〉なし
〈種族〉スケルトン
〈階級〉E
〈称号〉なし
〈レベル〉10/10(↑4)
〈体力〉50/50(↑8)
〈魔力〉30/30(↑4)
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】
〈スキル〉
▷【暗視】
※進化可能
▷進化先1:ハイスケルトン
▷進化先2:スケルトンメイジ
▷進化先3:スケルトンナイト
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やはりな。進化が可能になっている。では進化先を選ぶとしようか。だが、その前に、それぞれの種族について把握しておかねばなるまい。
“進化先について教えてくれるか?”
《是。まず、進化先1のハイスケルトンはスケルトンのすべての能力を一段階昇華させた種族です。他の進化先よりは弱いですが、将来性が一番高い種族と言えます。
進化先2のスケルトンメイジはスケルトンにマントを着せ、杖を持たせた姿をしています。火・水・風・地の魔法のうち、どれか一属性をランダムで使えるようになります。
進化先3のスケルトンナイトはスケルトンに鎧と剣を持たせた姿をしています。ですが、鎧はボロボロですので、無いよりはマシ程度の防御力しかありません》
なるほど。そうであるなら選ぶべき進化先は将来性があるハイスケルトンであるな。
我は頭の中でハイスケルトンを進化先として選択した。
《種族名:スケルトンからの進化申請を受諾。選択進化先は種族名:ハイスケルトン。それでは進化を開始します》
突然、我のスキル【大図書館】とは違うそんな声が聞こえてきたかと思うと、我の体が急に淡く輝き出し、そして意識が遠のいていった。
♦︎♦︎♦︎
う、ここは……。我は周りを確認してみる。
どうやら場所は変わりないようだ。そうか、進化すると意識を失うのか。これは進化する時には気をつけなければなるまい。それより我はどのくらいの時間気を失っていたのだろうか。【大図書館】に聞いてみるとしよう。
“我はどのくらい気を失っていたのだ?”
《解。三十秒ほどです》
三十秒か。思っていたよりずっと短かったようだな。まぁ、幸いではある。進化する度に長い間気絶していたら危険だからな。それよりも気になることがひとつある。
“先ほどの声はなんだ?”
《“世界の声”です》
“世界の声”、ね。よく分からぬがまぁ良い。何はともあれまずはステータスを確認しなければなるまい。
“ステータス”
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〈名前〉なし
〈種族〉ハイスケルトン
〈階級〉D
〈称号〉なし
〈レベル〉1/15
〈体力〉73/73
〈魔力〉62/62
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】
〈スキル〉
▷【暗視】
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ほう。やはり進化すると大幅に能力が上がるのだな。これは俄然やる気が出るというものだ。だが、相変わらずスキルは増えない……。どうすればスキルは増えるのだろうか。
“スキルはどうすれば増えるのだ?”
《解。スキルは基本的には進化を重ねるか、何かしらの技能を集中的に行うことなどで増えます。また、ごく稀に自然に増える場合もあります》
うむうむ。なれば進化を重ねるしかあるまいな。やはりこれから先、何者にも脅かされずに生きていくためにはどれだけ強力なスキルが使えるかに左右されるであろうからな。
我はそう決断し、迷宮のさらに奥へと進んだ。