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018 拠点探し

 


 《……ふっ》



 おい。何がおかしい?



 《ただの思い出し笑いですよ? ……「お前に会えたことは幸運だ」キリッ》



 くッ。このクソスキルが! っていうか言葉を切り取るんでないわッ!



 《臭いセリフ吐きますよね?》



 ……お前がニヤニヤ笑っているのが幻視できるんだが、これは間違いか?



 《いえ、ニヤニヤ笑ってますよ? マスターの頭の中で》



 ぐぬぬ、スキルの分際で!



 囮にされた少女——フィリアを眷属にして早一週間。我は今、自らのスキルに弄られるという屈辱を味わっていた。あれ以来、たまに思い出したかのように。ちょくちょく弄ってくるのだ。ホントこのスキルいい性格をしてやがる……。



 《お褒めに与り恐悦至極に存じます♪》



 やかましいわッ! それに微塵も褒めておらんわッ!



 ……コホンッ。さて、アレから一週間経ったわけであるが、今のところはまだ仲間は増えていない。というのも、強い魔物や気に入った魔物がいないというのもあるが、何より我自身が今増やす気がないというのもある。



 では、我は今現在何をしているのか? と聞かれれば、それは拠点探しだというのが答えだ。



 考えてみたのだが、仲間を増やしても拠点がなければ意味がない。それに仲間をぞろぞろと引き連れて歩くのも移動スピードが落ちるだけで効率が悪い。というわけで、今現在我は拠点を探しているのだ。まぁ、未だに「ここだ!」というような場所は見つかっていないが……。



「リヒト様。疲れてはいませんか? 疲れていたらマッサージしますよ?」



 背に乗ったフィリアが話しかけてきた。



 ちなみに今の我は【変身(狼)】を使って狼の姿になっている。そして、背にフィリアを乗せて移動しているのだ。フィリアも【変身(狼)】を持っているので、狼の姿に変身できるのだが、まだ四本足に慣れないらしい。そのため、我の背に乗せて移動することとなった。



「大丈夫だ、問題ない」



「そうですか……」



「何故、少し残念そうなのだ?」



「そ、そんなことありません、よ?」



 《……マスター。乙女心が全く分かっていません。この女の敵!》



「なんで我が罵倒される?!」



 《まぁ、マスターが女の敵であることは置いておきましょう。それでマスターはどんな場所がいいのですか? やはり、濃霧漂う森の中ですか?》



 お前は我にどんなイメージを持っておるのだ……。誰がそんなとこに好き好んで住むか!



 《いえ、そういうわけではないですよ? ただ、今までの吸血鬼ヴァンパイアが住まう場所はそのような場所が多かったのです》



 そうなのか。何故態々そんな住みにくそうな場所を。……あぁ、暗いからか。直射日光を浴びたくないとか、そういうことか。



 まぁ、それはいい。我は昼間でも一切問題なく動けるからな。我が求めるのは……そうだな。人間種があまり来ないような場所。というのがまずひとつ。もうひとつは鉱物が採れる場所だな。【創造神クリエイター】が活かせるのでな。



 《なるほど。でしたら、心当たりがあります》



 そうか! なら案内頼む!



 《承知しました》



 それから我たちは【ルベータ王国】を越え、山人族ドワーフたちが暮らす国——【ガンマイル評議国】近郊へとやってきた。



 山人族ドワーフとは、国民の多くが鍛治を中心とした生産業に従事する種族だ。見た目は、男はずんぐりむっくりな体型、女は十代前半の少女のような容姿と体型が特徴だ。男女関係なく酒に強く、膂力に秀でている。



 山人族ドワーフは先ほどの通り、鍛治に従事する種族柄、彼らが住む場所の近くには鉱物が採れる場所が多い。



 また、周辺の環境は山や森が多いためか、魔物が多く、その影響で山人族ドワーフ以外の人間種はいない。仮にいたとしても精々、冒険者くらいなものだろう。



 そんな山人族ドワーフたちの国は三方を山に、残る一方を森に囲まれている。我たちはその内、残る一方に当たる、とある森の前に来ていた。



 なんでも、人間種の間でこの森は【帰らずの森】と呼ばれており、まず立ち入る者はいないのだそうだ。ちなみに名前の由来だが、森の中には強大な力を持った魔物が複数いるらしく、入ったら最後帰ってくる者がほとんどいないため、【帰らずの森】と呼ばれるようになったらしい。



 だが、その情報は我にとっては僥倖だ。強大な力を持った魔物なら是非とも仲間に引き入れたいものである。



 我たちは躊躇することなく、森の中へと歩を進めた。



 ♦︎♦︎♦︎



 ここは【帰らずの森】最深部。



 背の高い木々が鬱蒼と茂り、太陽の光はその木々に遮られて地に届くことはない。その光景はさながら“密林”といった様相だ。また、その場所には小さな街なら壊滅させてしまうAランクの魔物が跋扈している。また、少数ながらSランクの魔物も存在している。



 しかし、それらの魔物はこの場所では支配者足り得ない。何故なら、この場所、いや、この森——【帰らずの森】には頂点とも言うべき魔族イビルがいるからだ。



 ——【帰らずの森】最深部の中心。



 その場所には石舞台がひとつポツンと鎮座している。そして、その上には白銀の美しい毛並みを持つ狼が身を休めていた。琥珀色の目から発せられる鋭い眼差しは見られただけで硬直してしまうだろうほどの迫力感と威圧感を湛えている。



 ——“魔狼フェンリル”。



 それが最深部の中心に居を構えている魔族イビルであり、【帰らずの森】の主であり、頂点である者の種族だ。



 かの魔物——魔狼フェンリルが扱う風魔法は全てを粉砕し、その腕を振るえば爪で全てが斬り裂かれる。強靭肉体は千里を走り、生半可な攻撃を受け付けない。そんな世界最強クラスの一体がそこにはいた。



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