011 これからの戦い方
スケルトンドレイクとの死闘を制した我は満身創痍であった。肉体を得た今、身体能力こそ大幅に上がったが、その弊害というか体力が減ると、肉体に疲労が溜まるようになったのだ。今回は体力がかなり削られてしまったので疲労感は大きい。
肉体がなかった時はいくら体力が減ろうが問題なかったのだがな……。しかしまあ、これは致し方あるまい。肉体がないというのは弱いのと同義であるからな。
しかし、スケルトンドレイクとの戦いは我に一つだけ吉報をもたらした。
それは——
《マスター。進化が可能になっております。進化すれば体力は回復しますので、進化してしまうことを推奨します》
なんと! 進化が可能になっていたのだ!
我は今の今まで体に感じる疲労感から、己の内面にまで意識を向ける余裕がなかった。そのため、進化が可能になっていたことに気がつかなかったようだ。
何はともあれ、体力が回復するのであるならば即刻進化あるのみだ!
ちなみに現在のステータスはこうなっている。
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〈名前〉なし
〈種族〉下位吸血鬼
〈階級〉A
〈称号〉なし
〈レベル〉60/60
〈体力〉29/845
〈魔力〉103/775
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】【無限収納】
〈スキル〉
▷【暗視】【下位アンデッド召喚】【中位アンデッド召喚】【毒爪】【再生】【吸血】【身体強化】【服生成】
〈魔法適性〉
▷火・氷・闇
※進化可能
▷進化先:吸血鬼
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このステータスを見ると、本当に危なかったと分かる。あと一発もらっていたら間違いなくこの世にいなかった……。
まぁとりあえず、だ。進化をしてしまおう。
我はボス部屋の壁にもたれ座るような体勢をとり、進化することを頭の中で承諾した。
すると”世界の声”が聞こえてきた。
《種族名:下位吸血鬼からの進化申請を受諾。進化先は種族名:吸血鬼。それでは進化を開始します》
そして我は意識を失った。
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意識を取り戻した我はまず、ステータスを確認することにした。
“ステータス”
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〈名前〉なし
〈種族〉吸血鬼
〈階級〉S
〈称号〉なし
〈レベル〉1/85
〈体力〉892/892
〈魔力〉871/871
〈究極スキル〉
▷なし
〈ユニークスキル〉
▷【大図書館】【無限収納】
〈スキル〉
▷【暗視】【下位アンデッド召喚】【中位アンデッド召喚】【上位アンデッド召喚】(NEW)【猛毒爪】(NEW)【高速再生】(NEW)【眷属化】(NEW)【吸血】【身体強化】【服生成】【血液操作】(NEW)【飛翔】(NEW)【変身(狼)】(NEW)【威圧】(NEW)
〈魔法適性〉
▷火・風・地・氷・闇・無
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これはスゴイな……。見るからに強そうな、そして使えそうなスキルのオンパレードだ。
とりあえず各スキルについて知っておかねばなるまい。
“新しく増えたスキルと強化されたスキルの詳細を教えてくれ”
《解。今回新しく増えたスキル及び強化されたスキルは全部で九つ。詳細は以下の通りです。
⚫︎【上位アンデッド召喚】…Aランクのアンデッドを召喚することができる。
⚫︎【猛毒爪】…【毒爪】の強化版。スキルを発動すると、爪が伸び猛毒を分泌する。
⚫︎【高速再生】…【再生】の強化版。斬り傷程度なら瞬時に再生する。
⚫︎【眷属化】…血を与えることで対象を基本的にはワンランク下の同種に変えることができる。ただし、眷属にするには同意が必要。また、同時に眷属として持てるのは3人まで。
⚫︎【血液操作】…自らの血液を意のままに操ることができる。
⚫︎【飛翔】…背に羽を生やし飛ぶことが可能になる。
⚫︎【変身(狼)】…体を狼の姿に変えることができる。身体能力は狼のそれと同じ。
⚫︎【威圧】…相手に恐怖を与える。効果はランク及びレベルに依存する。
以上です》
なるほど。これは戦略の幅が広がるな。それに【飛翔】と【変身(狼)】は移動の際に便利だ。まぁ、【飛翔】は迷宮から出ないとあまり使えんだろうが……。
ともかく、スキルを試してみなければ。それに魔法も適性が増えているため、そちらの魔法剣も練習しておかねばなるまい。もちろん、放出系魔法は使わんがな。
しかし、無魔法は別だ。無魔法は【大図書館】によれば、非常に使い勝手がいいようだからな。なんでも、無魔法の魔法は補助系が多いのだそうだ。その中でも特に防御系統の魔法は練習しておいて損はない。むしろ、練習して然るべきだ。
防御の重要性については此度のスケルトンドレイク戦で嫌というほど思い知らされた。防御系統の魔法を使いこなせれば、戦いを有利に進めることが出来るだろう。
だが、まずはスキルの練習だ。スキルは使いこなしてこそ意味がある。持っているのに使いこなせないなんぞ言語道断であるからな。
我はスケルトンドレイクの死体? と、スケルトンドレイクが壊したボス部屋の石や岩を【無限収納】に収納する。ちなみに石と岩を回収したのは何かに使えるかもしれないからだ。そうして、すべてのものを収納した後、ボス部屋の階段を降りた。
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ふむ。ヤバイな、これは……。ちょっと強すぎないか?
我は第五十一階層でスキルを練習していた。そして、とあるスキルを使ったところ、その使い勝手の良さに舌を巻く結果となったのだ。
そのスキルの名前は【血液操作】。
一見、自分の血液を操るだけの地味なスキルだが、いざ使ってみたら素晴らしいスキルだと判明した。
このスキルは自分の血液を使用するという性質上、まずは自分の血液を体外に出さなければならない。まぁ、我は吸血鬼なので【高速再生】で瞬時に再生できるから問題はないが……。
そうして体外に血液を出した後に【血液操作】を発動させると、出した血液を思いのままに操作できる。
だが、このスキルの真髄は単に血液を操作することではなく、おそらく血液を固定化できるところにある。血液を固定化することで擬似的な剣を作ることができるのだ。
通常の剣は多くの回数打ち合えば間違いなく欠けてしまうだろう。しかし、血液を固定化して作った剣——以下“血剣”と呼ぶ——は欠けても瞬時に再生できるので、斬れ味を常に最高の状態に保つことが可能だ。無論、名剣と呼ばれる類のものには斬れ味は数段劣るが、量産品の剣よりは数倍使える。
それに元は自分の一部であるからか、魔法の伝導率が非常に良い。そのため、これからは魔法剣の消費魔力は大分抑えることが可能になる。
それらの長所からこれは使える! というわけで我はこれからも魔法剣を主体に戦っていこうと心に決めた。