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第三話

 十日も決まった規則に縛られない生活を送った学生たちは徐々に、怠けて、涼やかなる屋内でボーッとしがちで宿題などあっても放置の状態。


 それでも、大都だけは―。


 「うぉぉ、うぅ、ああ。」


 「呻くな小林、お前が言うだけで暑い。」


 補習は依然として続くのだった。


 「じゃあ、元気の出ること言えぇ。」


 「今日で補習最終日。」


 「マジ!?」


 「嘘だ。元気出ただろ?」


 「うーわっ、もう俺やる気ゼロだかんね!」


 「俺もだよ。」


 どちらにしても、二人の勉強への情熱が5℃あたりで膠着してること…この時点で既に補習の意味が失われているように思えなくもない。


 午後12時50分―。


 「あざぁした。」


 「おー、明日も忘れるなよ。」


 大都は、引き出しに教科書を捻じ込んでから一階まで一段飛ばしで下りてから。所々、塗装が捲れたコンクリートの廊下を駆け抜けて、下駄箱にいてれない靴を履いてから駆け出した先には。


 「今日こそ、プールだ!」


 あの事件を発端に、大都も何気に意識したのか前もって海パン装備でプールへ出陣した。


の、だが。


 「ごぶぼぉぉぉっ!!」


もの凄い勢いで気泡が湧いてくる…発生源は。


 「あ、ごめん。」


 大都の飛び込み先には、あの草薙が優雅に泳いでいた。要するに、不意を突いて水中に跳び蹴りしてしまったということだが。現実『ごめん』で簡単に、済まされるような事態は意外と少ないものだ。


 「おらぁ、私に何か怨みでもあんのか!」


 水面を手のひらで、息を切らしながら叩き。自分の身体に起きた不祥事への謝罪を求める、草薙 杏子。


 「まだ、貧ソーなの触られたこと根に持ってんのか?」


 「ひッ、貧そう…人の胸弄っておきながら、平然とその台詞言うなんて頭大丈夫?」


 「大丈夫じゃねーから、ここに居るんだ。」


 彼にしては、理に適った言い訳だが。言い訳は所詮言い訳で他の何物でもないのだ!


 「久々に会ってみれば、またこれですか。」


 「お前、何カリカリしてんだ?胸に栄養も言ってないのに、何所に栄養(カルシウム)奪われてんだよ。」


 再度、論争の行方は決着つかない内に完結。


 「さっきから、胸、胸って、どんだけ執着心あんのよアンタ!」


 「いや、心配して言ってるんだけど。」


 「ぁあもう、心配せんでいい!」


 「なぁ、この後、暇?」


 「暇だけど?」


 「昼飯食いに行かね、俺の奢りで?」


 「別にいいけど。一応、聞くけど何で?(やっぱり、ぼんくらでも悪い事したって自覚してんのかしらね)」


 「栄養価高いもの食べないと成長しねーからさ。」


 草薙は拳を握ったコレまで以上に固く。

 

 「お前はその偏食直せ、変態野朗!!」


 しかし、大振りの攻撃姿勢をした彼女は飛び込み台からバランスを崩しかけた。これには、大都も反射的に杏子の身体を支えに動いた。


 「ちょ…。」


 「危ねぇ、ギリギリセーフ。」


 必然的に、正面から抱き合う格好となる。偶然にしても、互いの身体が密着するシチュエーションは正常な心の杏子には、頭が膨大な情報を処理すること必至。


 「(全然、セーフじゃないよ…アウトよ。)」


 「それじゃ、適当に泳いで行くからさ。待ってろ。」


 「お、おう。」


 照れ隠しに、微妙なポーズで了解してみる杏子の心の内は、ありとあらゆる感情が(せめ)ぎあっている…らしい。



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