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霖雨蒼生流の門下生  作者: zinto
第一章
7/43

日常…

「……997……998……999……1000!」


「はぁ~~キツ……」


日課の鍛錬を終え、道場の床に寝転がる。


ひんやりとした感触がほてった身体に心地良い。



「おはよう、隼人。今日も朝から精が出るな」


振り向くと、いつものような落ち着いた口調で


幼馴染の雑賀(さいが) 和輝(かずき)が道場の入り口に立っていた。


「おはよう、和輝。鍛錬しないとすぐに鈍るからね……」


寝転がっていた体勢から逆立ちへ、


そのまま腕力だけで飛び上がり、くるりと回転しながら軽々と着地する。


「お見事」


その言葉と同時に床に置いてあったタオルが飛んできた。



「今日はめずらしく早いね。なんかあったっけ?」


時計を見るとまだ7時前だ。


和輝がいつも迎えに来る時間にしては30分以上も早い。


「昨日から母が家を空けててね、できれば隼人達と朝食を頂けないかな……と思ってね」


「あ~そうなんだ。大丈夫だと思うよ。家いつも多めに作ってるし」


「隼人は外見に似合わずよく食べるもんな」


「アスナと母さんのご飯美味しいからつい食べ過ぎちゃうんだよ……」


「それは異論を挟む余地はないね」


和輝も家のご飯が好きなんだなと改めて感じてうれしくなる。




「お兄ちゃん。朝ご飯出来たよ~」


タイミング良くアスナが道場に声をかけに来てくれた。


今日も満面の笑顔だ。きっと朝ごはんの出来に満足しているのだろう。


「おはよう。アスナちゃん」


「あれ!? カズ君来てたの?」


思わぬ客人にアスナは驚いてる。


「ああ、隼人には今話したんだけど昨日から母が家を空けててね、


朝食を頂けないかと思って……」


「そうなの? それなら早く言ってくれてればお客さん用のメニューも作っといたのに……」


残念そうにアスナがつぶやく。


「いつも通りのご飯が一番美味しいよ。


そんなの気にして朝からどんなご馳走作る気だよ」


「そうだな。そんなに気を使われると気軽にご飯を頂きにこれなくなる」


二人はお互いに肩をすくめあってみせる。


「ありがとう。二人とも優しいね。今日もいっぱい作ったからたくさん食べてね!」


アスナはとてもうれしそうに笑顔でそう告げると準備のために先に道場を出て行った。


「隼人の家はいいな……


アスナちゃんにしてもさくらさんにしても料理を楽しそうに作ってくれて。


そして、何より出てくるものがすべて絶品ときてる」


「食事には爺ちゃんをはじめ、父さんもうるさいからね……


でも母さん料理が趣味だし、アスナはその影響モロにうけてるよね」


「家とは大違いだな……


あの母は食事は栄養を補給できればいいくらいにしか思ってないから」


「親父さんはその辺りなんにもいわないの?」


「あの人はそもそもあまり家にいないし、


家の食事なんて興味ないんじゃないかな?」


それまでの落ち着いた口調なのは変わらなかったが明らかに冷たいものが混じっているのを


隼人は感じる。


いつからだろうか和輝と出会った頃はそんなこと無かった気がするのだが、


いつの間にか自分の家族の話になると決まってこうだ。



和輝と出会ったのは小学1年の頃だった。



俺とアスナが揃って小学校に入学した時、いつも二人で行動してたし、


同い年で兄妹なことや、


そして何よりアスナの外見でかなり異質な目でみられたからなかなかクラスに馴染めなかった。



そこに


「二人を見てるとなぜだかほっておけない……」


と和輝に声をかけてもらってからの仲だ。


和輝はその頃から頭の回転が速くて、


学業はもちろんのこと、


クラスや学校の皆がどうやったらアスナの外見に物怖じせずに


他の皆と同じように接してもらえるか……


といったことを考えてくれたり、学業とは別の方面の切れ味も鋭かった。


その和輝が講じた策のおかげで


アスナは物静かだけど誰とでもすぐに友達になれるようになった。


あの時、和輝に声をかけてもらってなかったら……


と思うと和輝には本当に感謝しかない。



そんな和輝の家庭は本人があまり話したがらないので


あまり詳しくは知らないんだけど、父親と母親の3人家族だ。


父親は警察のエリート中のエリート街道を駆け上がり、


今では警察庁長官まで登り詰めている人でかなり厳しい人だと聞いている。


忙しいらしく、家にもあまりいないみたいだ……



「どうした? 行かないのか? せっかくのご飯が冷めてしまうぞ……


なんなら隼人の分も僕が美味しくいただくが?」


いつの間にか道場から出かかっている和輝がボーっとしている俺を急かす。


その口調は割と本気だ。


「勘弁してよ。俺だってもうお腹ペコペコだよ……すぐ行くよ。


ちょっと頭を水で流したいから先に行っておいて」


「わかった、じゃあ先に行く。隼人の朝食の安全は保障しないけどな」


冗談だよね? という言葉を投げかけるより先に和輝は行ってしまった。



……冗談だよな?



今となっては和輝を信じるしかないが……まぁ最悪アスナがそれを許すとは思えない。


さっさと汗を流して向かおう。


道場の外に設置されている蛇口から勢いよく水を出し頭を突っ込む。


鍛錬で火照った頭部に冷たい水がかかり、毛穴が一気に引き締まるような感覚が心地いい。



引き締まる感覚から自然と


”今日もいい一日にしよう”と言うシャキっとした考えが出てきたのだが


空腹を訴えてくる自らのお腹の音にそんな考えはかき消されてしまった。



離れにある道場から居間までの長い廊下を小走りでぬける。


磨き上げられた廊下は縁側にあるため朝日を反射してキラキラと輝いている。



隼人の母であるさくらは家事全般に手を抜かない人だが、流石に一人ではこの広さを掃除しきれない。


この状態を維持できるのは清十郎に出稽古をつけてほしいとやってくる


他流派の当主やその門下生の人達が


講習代を取らない清十郎への感謝の印として掃除をしてくれるおかげである。




霖雨蒼生流は部外者の門下生はとらないため、


基本的に技の指導などそう言ったことは一切しない。


出稽古を希望する人達は清十郎の武への考え方、また武を持つ者としての考え方など、


精神の部分の教授が大変ためになると毎週末熱心に足を運んでくれるのである。



ちなみに隼人や剛久も幼いころからこの考えを教え込まれ耳にたこが出来ている。




居間に近づくにつれて、朝食のいい香りが漂ってきた。


今日のメニューは焼き魚のようだ。


「おはよう~」


居間に顔を出すと皆が一斉に挨拶を返してくれた。


各々すでに食べ始めていて


「隼人の家のご飯はいつ食べても絶品だ。


やはり隼人の朝食の安全は保障できそうにない……」


いつも冷静な和輝のテンションが高い。


「あげないからね……」


「ほら隼人、早く食べなさい。せっかくのご飯冷めちゃうわよ


今日のは自信作なんだから」


正直母さんとアスナの作った料理で不味いものが出てきたためしはない。


けどわざわざ自信作なんて言うんだから期待が膨らむ。


「今日は……


朝からあさりの炊き込みご飯って豪勢だね。


それにブリの塩焼き、三つ葉と玉子のすまし汁、サラダ、爺ちゃん特製の漬物と


昨日のひじきの煮物か。


おいしそう。


いただきま~す」



源家の人間は基本的に朝は和食だ。


元々外国生まれのアスナももちろん例外ではない。


空腹が限界に達していたのもあるのだけど母さんがわざわざ自信作だと言うだけあって


どれも美味しく、数に限りがあったブリの塩焼き以外は朝からおかわりしてしまった。



「とても……美味しかったです……


しまった……お腹が苦しい…今から学園に行くのをすっかり忘れてました」


普段そんなに食べない和輝もご飯をお代わりしてたし、どうやら大満足だったようだ。



「本当においしかったよ!


中でもこの三つ葉と卵のすまし汁すごくおいしかったな」


俺がそうつぶやくと、


一瞬アスナがピクッと反応したように見えた。


「これダシがすごく美味しいよね。なんて言うか旨味がすごくて雑味がないというか、


材料とか下処理とかすごく手が込んでるんじゃないかな?


いつも料理に使ってるダシも美味しくないわけじゃないけど、


これに比べるとかなり落ちるよね」


そんな感想を言い終わるころにはアスナの顔がなぜか真っ赤になっている。


「やっぱ隼人は良い舌持ってるわね~」


母さんは満足そうにうんうんとうなっていた。


「これね、隼人がすまし汁好きだからってアスナが商店街の出汁屋さんに行って、


大将とああでもない、こうでもないって言いながら取り寄せまでして揃えた材料を


きちんと下処理して、丁寧にとったダシなのよ。


こんな高コストで手間のかかるご飯めったに作れないわね……」


料理が趣味な母さんがここまで言うんだから相当な手間があるのだろう……


「すごくおいしかった!手間はかかるみたいだけどまたいつか食べたいな」


本当に心からそう思ったのでまっすぐ目を見つめて感謝を伝える。


「うん!」


そんな俺に頬を紅く染めながら太陽の光のようにまぶしい笑顔で頷いてくれた。




食事が終わり、いつも家を出る時間までまだ余裕があったため、


皆で食後のコーヒーを飲んでいると


「そういえば和輝君。そろそろ大会じゃなかったか?」


何かを思い出したように親父が切り出した。


「ええ。そうですね。来月に全日本の大会があります」


「あーやっぱりそうか! 楽しみにしているからな。


頑張ってくれよ!」


「はい!ありがとうございます」


親父に楽しみと言われて和輝は嬉しそうだ。


「”楽しみにしとる”とは剛久よ、


結果なんて判っとるじゃろうが。


今の日本大会でこやつに勝てる奴なんかそうそうおらんじゃろうが」


「いやぁ……アハハ」


爺ちゃんにそういわれて今度は困ったように和輝が照れている。


「親父ね……勝負はやってみないとわからないんだから……


いや!? 和輝君の実力を疑っているわけじゃないぞ!


そりゃ和輝君が今年も優勝だろうけど、それをいっちゃあなぁ……」


「大丈夫です。剛久さんのお気持ちすごく伝わってきます」


和輝は心から楽しそうに笑っている。



大会と言うのは主に社会人が出場する空手の全日本大会だ。


そこで和輝は前年度16歳で初出場し、初優勝を飾った。


和輝が参加している大会は伝統派という寸止め形式で行われるもので、


顔面への攻撃なんかも技術の中に含まれている。


和輝の技はどれも早く正確で、相手の動きを見切りカウンターで


的確に一本勝ちを取りに行くスタイルの為、


その鮮やかな技と、和輝の容姿も相まってファンが全国にいる。



しかし、そのスタイルが確立できているのは和輝の努力もあるが、


絶大な眼の力からくる所が大きい。


和輝は普段から眼鏡をかけているのだが、


目が悪いのではなく、良すぎる眼を抑えているという特殊なものである。


攻撃を始める前の視線や全身の筋肉の動き、


体重移動などを見切り、


そこから繰り出される攻撃を予知能力と思えるレベルで予測し、


対処を始めることができる。



この眼にいち早く気が付いたのは清十郎だ。



初めて隼人の家に遊びに来た時に、


庭で三人が楽しそうに鬼ごっこで遊ぶ姿を遠目から見ていたのだが、


和輝の見事な体捌きに違和感を覚えた。


アスナはもちろんのこと、まだ幼いとはいえ身体能力が高いはずの隼人が


和輝を捕まえられないのである。


無駄な動きも多いが、最小限に近い動きで隼人の腕をかわしすり抜ける。


その様子が面白いのだろう三人はケラケラと笑っているが清十郎は目が離せなかった。


遊びが一段落したところを見計らって声をかけた……と言うのがことの始まりだ。



その後、爺ちゃんに紹介された空手の道場で才能があったのだろう……メキメキと頭角を現し、


眼のおかげもあいまって、正直日本ではもう敵はいないだろう。



「ほら! 三人ともそろそろでないと学園間に合わないよ?」


母さんの言葉に時計を見ると余裕のあった時間はあっという間に過ぎていて、


いつも家を出る時間が迫っている。


「あれ? もうこんな時間?


ゴメン、急いで準備するから二人とも先に玄関行ってて!」


二人に声をかけて大慌てで、歯磨きや着替えを済ませる。


余裕があったはずなのに落ち着きすぎた……





「それじゃあ行ってきます~」


「お母さん行ってきます」


「ご飯ごちそうさまでした。いってきます」


それぞれの挨拶すると見送りに来てくれた母さんが


「はい! 三人とも気を付けて行ってらっしゃい」


と満面の笑顔で送り出してくれた。





外は気持ちのいいくらい快晴で


通学路の脇に規則正しく並んだ街路樹の葉から木漏れ日がキラキラと降り注ぎ、


葉を揺らした風が緑のさわやかな香りと共に吹き抜ける。


そんな中を3人が雑談しながら並んで歩いていた。


幼馴染である3人は基本的にいつも一緒だ。


しかし、学園に通いだして2年が経過しているにもかかわらず、


3人がそろって歩くとその周囲が騒めく。


目立つのである……



和輝はまさしく”知的系イケメン”という言葉がぴったり当てはまる。


すらっと高い身長に小さい顔、整った顔立ちに眼鏡。


服の下には、線が細そうに見えるがボクサーのように絞りあげられた筋肉が隠されている。


更に立ち居振る舞いもその落ち着いた性格からどこか余裕を漂わせるため、


とても17歳の青年とは思わせない……まさに超人だ。




隼人に関しては


俗にいう”男の娘”と言われても仕方ないのではなかろうか……そんな感じだ。


隼人ももちろん筋肉などは和輝などと同等にあるのだが、


その強さの発端は一族に受け継がれる力からくる所が大きいため


外見が筋骨隆々とはなっていない。


清十郎の若いころや、剛久も同じように年齢より若く見られることが多かった。


この外見もまた一族の遺伝なのだろう。


しかし隼人は一族始まって以来と言われるほどにその力に愛されて生まれてきたため、


中性的、あえて言えば女性寄りの外見になってしまっている。


さくらもかなり整った顔立ちのために、まさしく”美少年”という言葉しか出てこない……


本人はそのことをかなり気にしているらしく、女性と間違われるたびに心が砕け


過去に一度、間違われたくないからと勝手に丸坊主にした所、


さくらに号泣され、3日間晩御飯抜きという極刑をくらったのでそれ以来やってはいない……


さくらをはじめとする周囲の人たちには隼人のこの容姿は好評なようだ。



最後にこの2人よりもさらに目を引くのがアスナだ。


清十郎に礼儀の一環として叩き込まれたため、頭から背中に棒でも入っているのではないかと


思われるほどピンッと伸びた背筋に


ファンタジーの世界から飛び出してきたような、


どこか現実離れした容姿やスタイルもあいまって見る人の目を奪って離さない。



そんな三人が毎朝並んで登校してくるのだ、騒ぐなというほうが難しい。



「あ~、今日も朝から目が幸せだわ……」

「私も源君や雑賀君と一緒に登校できたらなぁ……」

「やめてよ!あんたがあの空間に入ったら台無しよ」


など


「おのれ……源はまぁ兄だからな……雑賀め……俺だって幼馴染なら……」

「やめとけよ、言ってって虚しすぎるぞ。俺たちが雑賀に勝てる要素が無さすぎる……」

「く~……でもあいつでも一緒に登校できるなら俺にだってチャンスあるだろうが!」

「ああ……そういや今日はいないな」


なんて声があちらこちらから聞こえる。


話してる内容までは聞き取れないが、


そのざわめきに対して、隼人とアスナは和輝の人気からだろう、


流石和輝はモテるなぁ~と言う鈍感ぶりに対して、


和輝はある程度意識して今のポジションなので


意識なしでこの人気、更には鈍感という二人にいつも”ヤレヤレ”といった感じだ。



学園に近くなるにつれて周囲に見知った顔が増え、


軽い挨拶を交わし合いながら歩いていると、近代的な巨大な建造物が視界に入ってくる。



隼人達の住む桜ケ峰町は小高い丘に一本の大木の桜が見下ろす穏やかな町だ。


隼人が幼い頃から再開発がはじまり、今も新しい建物や新しい人々が増えている。


その一番の売りが 中学、高校の一貫教育、大学、大学院まで完備の


私立桜ケ峰(さくらがみね)学園である。


その自由な校風は生徒たちの自主性を尊重し、


各々がこれといった目標を定め、それを実現するために邁進すること。


という独特なものである。


そのため広く浅くというよりは、狭く深くといったプロフェッショナルと言われる


人材が多く排出され、


現在、各分野(政界、財界、スポーツ界、芸能界などなど)に


数々の優秀な人材を送り出しており注目されている学園である。


ただ特に専門分野ごとにクラス分けをされているのではなく、


基本的な普通科の時間割の中で、各々が多種多様な専門分野の講義を選択して受けることができる


時間が多く組み込まれている……といった感じなので、


クラスの中では様々な分野を目指す生徒たちが一つの教室に収まっていた。


これもまた理事長の狙いで、生徒をあえて分けないことで、


様々な刺激が必ずや生徒達によい影響を与えるという考えからこのような形式をとっている。



人気のある学園のため生徒数は多い。


大学と大学院は離れた場所にあるのだが、


中学と高校は同じ建屋に入っているため、かなり横長で巨大な建物である。



正面玄関ホールを抜けると隼人のカバンから電子音が鳴った。


カバンから二つ折りの紙のよう物を取り出し広げると、


A4サイズほどの薄いパネルが現れた。


隼人は画面の隅に表示された”通知”という文字をタップする。


「あ、和輝。今日の選択、先生が急な用事で出席できないから、各々自習してくださいって」


「そっか……となると昼前の講義の時間がぽっかり空くな……隼人、なにする?」


「いいなー二人とも、私もお昼前からのんびりしたいな~」


選択している講義が違うためアスナはぶーぶーと不満をあらわす。



数年前にとある小国で発掘されていた画期的なレアメタルが流通して以来、


電子機器は爆発的な進化をとげ、現在では紙のように薄く折りたたむことができる携帯端末が


標準になっている。


そのレアメアルの利用方法はまだ発展途中らしく、その有効性を更に引き出すことができれば


もう一段階、画期的な変化をもたらせると最近では騒がれている。


学園では生徒1人1人にこれが支給されており、


学園側からの全体、または各個人の連絡事項、各選択科目への申請


学園への出席確認、レポートなどの提出、その用途は多岐にわたり、


講義中もこの端末を活用し、生徒たちにわかりやすい講義になるように工夫されていた。


もちろん家族や生徒間での連絡にも用いられているため、


今では生活を送るうえでこの携帯端末がないことなど考えられないだろう。



そんなアスナの冗談半分の抗議を隼人と和輝は受け流しながら3人は教室に向かう。


廊下や階段には端末にも使用されている極薄のディスプレイが多数配置されており、


端末に送るまでではない連絡事項や、


生徒たちの大会での活躍、マスコミに取り上げられたことなど様々な情報を掲示していた。



3人の足が一つ部屋の前で止まる。


2年3組ここが隼人達の教室だ。


自動ドアが開き教室に入るとクラスメートのみんなが


「おはよう~」


と挨拶をしてくれる。


各々それに答えながら3人は自分の席目指してバラバラに分かれていった。



隼人が席に着くと後ろの席の友人から昨日のテレビの話題を持ち掛けられ、


事件のせいで見逃したことを大いに悔やむのだった。



人がまばらだった教室にも活気があふれだした頃、


学園に予鈴がなり響き、


担任の先生が教室に入ってくる……


いつもの変わらない1日の始まりのはずが今日は様子が違った。


気が付いたクラスメート達もザワザワと色めき立つ。



「え~皆さん。


突然ですが、転校生を紹介します」

隼人達のクラスに転校生!?


何やら波乱の予感ですね……

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