赤キ盗賊団リーダー
──あれから数年後。ここの生活にもすっかり馴染んだ。
あ、嵐は…自分の記憶探しの旅に出ちゃったんだ。たまに手紙が届くけど。
大雨だった。なんとなく、ふと窓を見たら…
「…女の子?」
外に、赤い格好の女の子が倒れてたんだ。
一緒にいた月夜美と外に出て、その女の子を保護した。
熱が出てて、その上大怪我だったし…とにかく、重傷だった。
名前を聞いてみたら…「ルビー・フレイムバレット」。そう名乗った。
「…!そうだカレンちゃん……」
「カレンちゃん?…その子がどうかしたの?」
話を聞いてみると…
ルビーの話す「カレンちゃん」…「文月火蓮」という子はまだ10歳らしい。
…私より三歳下か。
…ある事件に巻き込まれ、不本意ながら仲間である自分を傷つけてしまった…そう話した。
「…折角笑えるようになれたのに…私のせいで、また……」
「…」
彼女の目には、涙が光っていた。
…本当に心配なんだな。
「…お願い…カレンちゃんを暫く、預かってほしいの…」
「…え?」
「しまったぁあ!!」
…おいこのシリアスブレイカー。なんて時に大声出してるんだ。
「もうこんな時間だ!!ゴメン、ちょっと抜ける!」
…元気な奴だ。
「…えっと…ルビー、どうして火蓮ちゃんを預かってほしいんだ?
しかもよりによって、今さっき出会ったばかりの見知らぬ私に?」
「……似てるの」
「似てる?」
「……初めて会った時のカレンちゃんと、貴方…よく似てるの」
…?
「…火が消えた、黒い闇に包まれた…悲しい目」
…。
「…私の話、聞いてくれる?」
「…?」
ルビーの話は…ダイアモンド・ファイアの組織ができた話。
…同時に、彼女自身の話だった。
「…私、友達の病気を治したくて…本当は治す方法知ってたけど…その方法は、とても危険で…あの子が耐えられるかどうか…勇気がなかった。
だから、安全に治す方法を探す為に…別の世界に行って、方法を探した。
そのうち…色んな人と出会って、仲間ができて…ダイアモンド・ファイアができた。
でもずっと…自分の目的を、皆に言えなかった。
…皆を利用してるみたいで…何より、怖かった。皆が離れていくんじゃないかって。
だって…皆といると、自分の目的を忘れてしまいそうなほど、楽しかった。
そんな関係が、壊れるのが嫌だった。
……あの日、カレンちゃんと出会って、仲間に迎えた。
それがあの子に対して、助けになるんじゃないかって。
…でもそれが逆に、傷つけて苦しめてしまった…
…私は、皆の前から…あの子の前から逃げた。
…会う、勇気がない。私は結局、弱虫のままなんだ…」
「…ルビー…」
──…ダダダダッ、ダーン!!!
「なんとか終わったーぁ!!」
…月夜美ェー…お前マジでシリアスブレイカーだな…。
「ハイハイ、暗い暗い!
で、ルビー。そのカレンちゃんどの辺にいる?」
地図をバッサーと机に広げる。
「えっ…と…あ、たぶんここ!」
「…森?」
私がそう言うと、ルビーは顔を横に振った。
「ここ、地図じゃ見えないけど…湖が見えるの。そこ、私がカレンちゃんだけに教えたの」
「ふんふん。よし、分かった行ってくるー!!」
「「えっ」」
止める間もなく、月夜美は能力を使ってさっさと行ってしまった。
…しかも、よーく見るとボイスレコーダー持って。
「…アイツ、ボイスレコーダー持ってたな」
「…」
ガラッと音がしたかと思うと、外からの冷たい空気が流れてきた。
ルビーが窓を開けたからだ…と思う。
雨の音はしないから、もう止んだようだ。
「ちょっ、ルビー」
「…カレンちゃん。お姉さんが二人いるの」
「?」
「…預かってもらうなら、二人にも話を聞いてもらわないとね」
「な、…火蓮ちゃんに会わなくていいのか!?」
「…私には、あの子に会う勇気がないから
ありがとう、レンゲ」
「ちょっ!?」
ルビーはそのまま窓から飛び降りた。
…ここ13階なんすけど!?
急いで窓に近づいて下をのぞいてみると…ルビーらしき子と、もう一人誰かの姿が見えた。
…言っとくけど、私地獄耳だから無駄に耳いいんだからな!←
微かに名前らしき言葉が…「グラス」。あっちの子の名か。
「…ルビー……ハァ…」
文月火蓮…。10歳か…確か私もそんぐらいの時に此処に来たな…。
私はPCを取り出すと、ある映像を開いた。
合宿所内の映像だ。
「…今は廊下か」
私はヘッドセットを取り出し、声を出した。
「月夜美ー」