引キ籠リ少女
…それで私は、マイにその世界へ連れて行ってもらったんだ。
…え?病院はどうしたか?…そこは触れないでくれ。
「…で、その少女っていうのは?」
「…あの、建物の中」
『こっちデース』
アイはいつの間にか私の膝の上にちゃっかりと座っていた。
示した方向を見ると…つまり、この合宿所。
「…でっけー建物…」
「…合宿所。あそこに、いるの」
『かなりの人見知りちゃんデス。何仕出かすかわからないのデス』
どんな引き籠り少女だよ。
「…さ、行こう」
その合宿所の中入った途端…なんか、悲鳴に近いものが聞こえてきたんだ。
「なななななな…いったい何が起きてるんだよ!?」
『アワワ…マイちゃん…』
「急ごう…」
あ、ちなみに私の車椅子はアイの魔力がどーのこーので移動してる。
…で、その引き籠りちゃんの部屋まで来たら…誰か倒れてたんだ。
「うーんイタタ…」
「…何だこの眼帯水色髪」
『T-42デス。名目上、ここの管理人やってマス』
お察しの通り、眼帯水色髪は月夜美だ。
ん?T-42って何か?…知らん。自称人工生命体だし、製造番号とかなんじゃね?
「うーん、イタタタ…あ、始めまして。僕、十六夜月夜美」
「あ、どうも…」
「…また、追い出された、の…」
「うんうん。いやー、同じ人工生命体でも生み出された場所が違うと、同じ能力でも威力が違うねー」
「いや知らんよ。お前あれか?電波or中二病?」
「失礼だなー。僕本来ならえーっと52歳だよ」
「今『えーっと』って言わなかったか?…って、52歳!?」
「うん52歳。あ、でもあの事件から一週間後の時間に飛んでからこの世界にいるから…12歳ぐらいかな」
「…」
そこで、私は月夜美から引き籠りちゃんの嵐ちゃんがどんな子か聞いたんだ。
「…記憶がない?」
「うん。…一ヵ月に何回か、元の世界の住んでた研究所の掃除に行くんだ。
そりゃ、50年以上も放置されてるから研究所の中は埃だらけ。機械類は使えるのかも分からないし。少しでも昔の頃に戻したくてね…。
でも、此処に来たばかりの頃に、庭の方を見てみたら…見慣れないような大きな機械があったんだ…」
──…何だろ、これ…あ、ボタンがある。
「…で、そのボタン押してみたんだけど……」
「いやいやいや、普通押しちゃ駄目だろ」
『よくあるパターンでは罠とか作動して、ギャグでない限り死にますネ』
「ギャグだったら…上から、タライとか…」
「うーん、そうかなー。あ、続き続き…。
…そのボタンを押してみたら、どうやら救命ポットだったみたいで…」
──ん?…ゴファッ!?
「((“ゴファッ”!?))」
「ちょうど開いた扉に顔面ぶつけてまぁ…痛かったよ」
「「それは痛い/デスネ』」
「まあ同時にぶつけた小指と比べたら大したことはないけどさ」
「…お前のブーツどうなってんだよ。どうやったらブーツで小指ぶつけられんだよ」
「それは僕にも分からない」
──イタタタ…ん?…女の子?
「で、その女の子が…嵐。
本名も一応、手首につけてるリミッターらしきものにあったけど…」
月夜美に渡されたメモには、『*-**** B**e *ig**』と書かれていた。
「…文字が掠れてて、よく読めないんだよね…。僕なりにその子に関係していそうな場所や情報…手当たり次第に調べてみたよ。でも…」
片手に乗るぐらいのパソコンみたいなのを出して、あるページを私達に見せてくれた。
そこには…
「…パスワード。何なのか全く分からないんだ」
「…なるほどな」
「…それに……」
「…ん?」
そのパソコンみたいなのから月夜美に目を向けてみると、複雑な顔をしていた。
「……ちゃんと覚えていれば、よかった…」
「…?」
「…ううん、何でもない」
どうやらその部屋には鍵がかかっているらしく、入るには月夜美が能力を使わないといけないらしい。
「じゃ、いくよー」
「あ、ああ…」