少女ト人形
付いて行った場所は病院の屋上。そこなら誰もいないと思ったらしい。確かに、誰もいなかったな。
で、マイが何故か知らないが人形出してきた。
「…なんだそれ?」
「…私の通や『マイ通訳係、作者の分身ちゃん人形“アイミィ”デス。
通称“作者ちゃん人形”または“分身ちゃん人形”デスが、アイでもいいデスヨ』…そういうこと」
「は、はぁ…」
…その、マイって奴。自分が何故ここに来たのかを話したんだ。…まあ、正しくはアイなんだがな。
『「ま、こっからは俺でいくぜ?いちいち猫みてーにビクビクしてんは疲れんだ」デス』
「猫…え?」
「…アイ」
『マイちゃんの心の声を直訳&翻訳デース。ホントは一人称俺なのデスが、色々あって私になっちゃったのデス』
「…」
『ハイハイ本題に入りマショウ』
いやお前の翻訳のせいだろうが。とツッコミたかったがそれ言ったらこの先持たなそうだからやめた。
『「いいかよく聞け。俺がここに来たのは、アンタに用があったからだ」デス』
「用?…私に?」
『「ああそうだ。…アンタ、この世界は嫌いか?」デス』
…嫌いじゃなかったら、私はどうして自殺を図ったんだか。
『「…もし、この世界から去ることができたら…アンタはどうする」デス』
その質問に、一瞬ビクッとした。
去ることができたら?出来るなら去りたいさ。
『「条件付きだが、叶えてやってもいいぜ」デス』
「ホントか!?」
驚いた。まさかそんな言葉が出てくるなんてな。
『「俺はあんま嘘つきたかねーんだよ。嫌いだし。つーか条件がどんなのかまだ言ってねーだろが」デス』
「あ、条件……なぁ、どんなのなんだ?」
『「…」…そ、それはその……デスネ…』
急にアイがモゴモゴとし始める。どうやらかなり言いにくいらしい。
人形とはいえ、感情とか複雑につくられてるな…。
「…アイ。私、直接話す」
『うえええぇええっ!?いいのデスか!?…ああでもデスねっ…』
…スッゲー慌て始めるなアイ。
「…これから、君に来てほしい、世界。そこに…女の子…」
「女の子?」
「…ハッキリ言って、引き籠り。何か、色々あったらしい…」
「…はぁ。…もしかして、その引き籠りをどうにかしろと」
私がそう言うと、マイもアイも頷いた。
…マジか。
「…なぁ、ソイツ。…名前、何ていうんだ?」
「…本名は、分からない、けど…
──『嵐』。そう、呼んでる…」