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離婚の理由  作者: 大楠晴子
第3章 智哉
14/31

下弦の月が昇る夜

初志貫徹(`◇´)ゞ

迷いましたが、第3章として投稿します。


智哉の恋、

楽しんでいただけますように( ´∀`)

 朝から降っていた雨は夜半には止み、黄金色に染まった銀杏の葉が、アスファルトに張り付き、街灯の光を受けている。


 星も月の光もない、風もない。木立はかさりとも音を立てない静かな夜。湿り気を含んだ空気はしっとりと重い。



 酔いつぶれた後輩医師をアパートに送り届けた帰り道。来た道を戻っているはずだったが、いつの間にか知らない道を走っている。


「ここはどこだ……」


 赤く色づく美しい花水木の並木道、建ち並ぶ一戸建ての住宅はすでに眠りについたように静かだ。

 車内は暖房が効いて暖かい、連日の睡眠不足と昼間の疲れのせいか、まぶたが落ちてくる。


 小さな店舗の駐車場らしき広場に車を停め、ナビの設定をしようかと手を伸ばす。

 車のエンジン音が響く静寂、小さな門灯の灯り。

 ほんの少しだけ……。

 そう思ってエンジンを切り、シートを倒す。目を閉じた。



 コンコン……、コンコン……。

 窓を叩く、小さな音。


 門灯の灯りが目に染みて、目を細めた。

 ドアを叩く人影。

 あわててドアを開けると、


「……風邪ひくよ」


 その言葉と共に差し出されたのは毛布。半ば強引に押し付けられ、すぐに立ち去った光を背にしたその人の顔は、全くわからなかった。

 目覚めたばかりの頭にも、体にも、俊敏さはなく、なんのためらいも疑いもなく、柔らかな毛布に体を包んだ。

 その温かさに、思わずため息きがもれ、肩の力が抜ける。そうして初めて、寒かったことを知る。


 どれくらい眠っていたのだろうか。まだ辺りは暗く、時計は深夜の3時を少し回ったところだ。


「毛布を貸してくれたのは一体誰なんだろう?」


 車を降りると、アイアンの門扉に消えた門灯、そこには『close』の小さな看板がかけられている。その先は、美しく刈り込まれたコニファー、バランスよく配置されたプランターが並ぶ小道。白い壁の小さな住宅は、飴色のドアがどっしりと構え、南側には木製のテラス、その前には整えられた庭があった。

 こだわりが伺える雰囲気に、看板は見当たらないがカフェか何かの店舗だろうと目星を付け、毛布を返すために出直すことにする。


 ナビの設定を済ませ、

 車を走らせる。

 東の空には下弦の月が昇っていた。



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