第七十話
Side:愛紗
連日兵の調練に流石に疲れが溜まってきた。
これから軍議などで会議室に向かっていると前方に刹那様と焔を見つけた。
傍に近づくと刹那様の顔が赤いように見えた。
私が大丈夫か尋ねようとした時、刹那様の身体が傾いた。
私は前に倒れそうになった刹那様を慌てて支えた。
刹那様の息は若干荒く、苦しそうだった。
「あーあ、だから言ったのに。無理しすぎなんだよ。悪い愛紗、刹那様を部屋まで連れて行って寝かしておいてくれ。俺は医者を呼んでくるから」
焔はそう言うと走り去って行った。
私は刹那様を部屋まで運び寝かした。
少しすると刹那様の意識が戻った。
「面倒掛けたな、愛紗」
「いえ。そんなことより具合はどうですか?」
「ただの風邪だ。心配する必要はないさ」
風邪とはいえこじらせれば死ぬことだってある無理は禁物だ。
部屋を見渡すと相変わらず書類の山がいくつも出来ていた。
恐らくまとも寝てもいないのだろう。
私は自分の手を刹那様の額に当ててみた。やはり熱いな。
「……愛紗の手、冷たくて気持ちいいな」
突然そのようなことを言われ、私は顔が赤くなった。
私が慌てていると一人の女性が部屋に入ってきた。
「まったく、無茶をするなとあれほど言ったのに」
女性は刹那様の顔を見ると、ため息を吐きながら言った。
「それじゃー、直ぐに服を脱いでください」
なっ!ふ、服を脱げだと!?
ひょっとしてこの女性は刹那様とそういう関係なのか!?
「……こいつは安道永、医者だ」
慌てている私に焔が呆れた表情で教えてくれた。
そ、そうか、医者か。それはそうだよな。
私は焔に促され、一緒に部屋を出た。
Side:安道永
診察したところ疲労から来る風邪だった。
身体に針をうち血の流れを良くしておいた。これでいくらかは楽になたはずだろう。
「あまり無茶ばかりしていますと早死にしますよ」
「人はいつか死ぬものだろう」
「それはそうですけど自分から命を削ることもないでしょう」
曹進様は天井を見詰めていた。
「……俺はほっておいても死ぬ。そう遠くない気がする」
「……発作の間隔が短くなってきていますか?」
「最近は一月に二、三回来る」
確かに間隔が短くなってきている。最初は半月に一度だった。それからどんどん道がくなっている。
曹進様は心臓に病を抱えている。
時々、心臓に激痛が走るのだ。
そういった症状の患者を何人か見てきたが、大した治療もできずに死なせてしまった。
残念だが私の知識ではどうすることも出来なかった。
さまざまな薬も与えも効果が無かった。
医者として自分の無力が情けない。口惜しい。
このことを知っているのは本人である曹進様と主治医の私だけだ。
曹進様は名の無かった私の腕を見込んで、引き上げてくれた恩人だ。
何としてでも助けたい。




