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第六十三話

Side:刹那


呂布に案内され、俺は呂布の母親である丁原の元に向かっている。


丁原と呂布に血のつながりはない。


呂布が幼少の時、丁原に拾われ、育てられたのだ。


あの呂布を育てた御方だ。かなりの人物だという報告が来ている。


丁原が待っている部屋にたどりつき、呂布に促され、中に入った。


丁原は椅子に腰を掛け、お茶を飲んでいた。


見た目はただの年老いた女性だ。


しかしその内側からは言いようがない力を感じた。


やはり生半可な相手ではないか。


「お初にお目にかかります。曹進と申します」


「初めまして、曹進さん。大したお構いも出来なくて申し訳ありませんが、どうぞおかけください」


席に付くと、丁原はお茶を入れてくれた。


匂いを嗅いだだけでもかなりの高級なものだと分かる。


着ているものも生地からして高級。


部屋を見渡せば、どれも高級なものばかりだった。


……御機嫌取りの贈り物か。


丁原は自分と呂布の出会いから今までの生い立ちを話し始めた。


話の流れを掴んでいるのは丁原だった。


正直、俺はこの女性を侮っていた。


月詠つきよみ(公孫真)から彼女についての詳細な報告は受けていた。


しかし彼女は俺なんかとは乗り越えてきた修羅場が違う。


……落着け。


俺は自分が誰よりも優れているとは思ったことはない。


自分より上の奴など、いくらでもいる。


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、曹進さん。しかしあなたにとって正念場ですからね。緊張するなと言う方が無理かもしれませんが、もう少し肩の力を抜いたほうが良いですよ」


やれやれ、この俺が完全に子供扱いか。


こんな状況は久しぶりだな。


「さて、それではそろそろ曹進さんの用件に移りましょうか。

恋を手に入れたいのでしょ?その為にも私を懐柔しなくてはならならない」


こちらの考えていることなどお見通しだった。


当然だな。ここでの彼女の立場はそれだけだ。


「あなたも知っていると思いまずが、この部屋にある数々の高級な品々。全て私の機嫌を取る為、送られてきたものです。最近では王允殿が多いですね。

あなたは私になにをくれるのかしら?」


「私から差し上げる品物はありません」


「……ほう。何もないと。ここにあるものを超えるものは用意できないと言う訳ですか?」


「出来ないのではありません。用意する気がないだけです」


「……なぜです?」


「あなたがそのようなものを本当に欲しがっているとは思えませんので」


丁原が俺を見詰めてくる。


俺の内を覗き込んで来るような鋭い目。


落着け、捕りみだすな。


ここまで来てしまえば今更変更できない。


計画通りに動くしかない。


丁原に理由を聞かれ、俺は話した。


彼女は表では品物を喜んでいたが、実はそれはふりだけだった。


どれだけ高級かなど、問題ではなかった。


ただ置いておくのは勿体ないので使っているだけなのだ。


王允をはじめ、奴らはそこを分かっていない。


そんなことで動く奴をあの呂布が慕う訳が無いのだ。


「私はあなたに品物を献上するきはありません。しかしそれ以上のものを保証しましょう」


「なんですか?」


「自由です。正直なところ、私も呂布の武勇はぜがひでも欲しい。

しかしその為に、あなたを使う気はありません。

呂布本人の意思で戦って貰いたい」


「なるほど。あなたの考えは分かりました。しかし自由とは具体的にはどうするつもりですか?こんな老人、一人では生きていけませんよ」


「あなたには私が援助している孤児院に住んでもらいます。そこの責任者は私のお世話になった方ですので信用出来ます。

子供達は皆、心に傷を持っています。あの子達もあなたと接することで色々なことを学べるはずです」


「つまり私の為と言うより、子供達の為だと」


「ええ、そうですね。悪戯が好きな子もいますし、静かな老後とはいきませんでしょうな」


「ふふ。これまた予想外な提案ですね。正直驚きました。

今まで多くの方が色々な話を持ってきましたが、このようなことは初めてでした」


丁原は目を細め、楽しそうに笑った。


「子供達の為ですか。この婆もまだまだ死ぬわけにいかないようですね。

いいでしょう。私はあなたの提案をお受けしましょう。

恋、貴方はどうしますか?」


「恋はしばらくお母さんと一緒にいたい」


「曹進さん。恋はこう申しておりますが宜しいでしょうか?」


「勿論です」


呂布が敵にまわらないだけでも良しとするべきだ。





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