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第五十七話

Side:刹那


虎牢関に取りつこうとしていた袁紹軍が呂布、張遼の部隊に蹴散らされていく。


やはり凄まじい強さだな。


是が非でも欲しくなる。


俺が戦の戦況を眺めていると焔が難しい顔をしていた。


「どうした?焔」


「いやー。今さらですけど呂布にちょっかい出したのってまずくなかったですか?」


「まあ、仲間に加えようとしている奴に切りかかるのは宜しくないかもしれないな。だが昨日まで殺し合っていた奴が仲間になるなんて珍しくないだろ?」


「そっちじゃないですよ。そんなこと一々気にしている奴なんて素人だけでしょう。よほど深い恨みがあれば別ですがね」


「そうだな。じゃあなんなんだ?」


「上手くいったので無傷でしたが、一歩間違えていたら死んでいましたよね。それも戦況から考えればやらなくてもいいことで」


「……まぁ、そうだな。俺の我が儘みたいなものだ」


「華琳が怒るんじゃないですか?」


「…………」


確かにその可能性は極めて高い。こんな無謀なことあいつが許すわけがないからな。


「それに戦いたがっていた連中も面白くないでしょうね。春蘭とか星なんかは抜け駆けして呂布に挑んだことなんか知ったらどうなることやら」


「…………まずいな」


虎牢関戦は相手が引くのが分かっていたので、攻撃には参加していない。


春蘭をはじめ、戦好きの連中には不満もあったが華琳と俺で言い聞かせて納得させた。


態々無駄な被害を出す必要はないからな。


あいつ等もそこら辺は理解しているのでそれほど不満もないようだった。


しかし俺一人が楽しい(?)思いをしたとなるとあいつ等がどう反応するかは考えるだけで頭が痛い。


「……お前らが黙っていれば気がつかれないはずだ」


「「無理でしょ」」


俺の苦し紛れの解決方に二人が間髪いれずに否定する。


「潔く怒られてください」


「自業自得」


俺の可愛い従者達は危険がない所では案外冷たかったりする。


実際自業自得なんだけどさ。


ひょっとしたら気が付かれていませんように。と祈りながら自陣に戻ると物凄い笑顔で微笑む華琳が出迎えてくれた。


可愛いくて愛しの妹の笑みなのに、そこには恐怖しか感じられなかった。




Side:華琳


「お帰りなさい、兄さん。何処で何をしてきたのか詳しく聞かせてもらえますか?」


「え、えっと……言わなくちゃ駄目か?」


「勿論」


『私、怒ってますよ』という雰囲気を隠さない私に兄さんは冷や汗をかき、うろたえる。


うろたえる姿は小動物のようでついつい苛めたくなってしまう。


「どうしたのですか?早く説明してください」


「い、いや…あの。……ちょっと呂布を見に……」


「見てきただけですか?」


「み、見ただけじゃないけど……なんていうか…その…」


「呂布とやりあった。ですか?」


私の一言に兄さんがビクッと反応する。


「や、やりあったわけじゃない」


「そうですね。あっという間に殺されそうになっていましたしね」


なんで知っているんだ!?って顔で兄さんが驚く。


呂布が動くとなればその勇姿を見ておきたいに決まっている。


季衣と流琉を中心とした親衛隊と呂布を見に少し前に出た。


まったく。驚くのを通り過ごして呆れたわ。


呂布が凄まじい攻撃で兵を倒したと思ったら、行き成り襲いかかるんですもの。


今回は大人しくしておけって言っていた本人が一番無茶やらかすんだから。


良い機会だからたっぷりいじってあげますね。


助けを求め後ろを振り向くも焔は肩をすくめ、瑠璃は横を向いてしまう。


正座をさせられ、どんどん小さくなっていく様は病みつきになりそうだ。


私が満足すると次は春蘭達にも攻められる。


自業自得なのでこってりとしぼられてください。





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