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第四話

Side:刹那


「春蘭!刹那様に傷一つでもつてみろ。唯では済まさんぞ!!」


「はっ、この私が護衛するのだから傷どころか指一本触らせもせんわ!!」


煉華と春蘭が恒例行事を行った後、俺達は出発した。


偵察部隊は俺、春蘭に加え騎馬百騎だ。


今回、俺と煉華が目を掛けている牛金という下級将校の少女も伴っている。


牛金は煉華が内に秘める才能を見抜き俺に紹介してきた。四天王並みの将軍には成れないだろうが一角ひとかどの将にはなるだろう。


実際、最初は何も知らない唯の一兵卒だった。しかし俺や煉華の教えを綿が水を吸うが如く吸収し自分のものにしている。


煉華はいずれ自身の副官にと考えているようだ。俺も賛成である。


今回は偵察の仕方や重要なことをそばで見せてやろうと思っている。


……大丈夫だろうが一応、春蘭に念を押しておくか。


「春蘭、今回は偵察が第一だ。状況を確認できるまで‘敵っぽい’なんて理由で突っ込むなよ。義勇軍や傭兵共だとあとが面倒だからな」


「分かっていますとも刹那様!そこまで私も迂闊ではありません」


「……お前、今回何で付いて来ているのか覚えているか?」


「勿論です!私は刹那様の護衛です。刹那様には指一本揺れさせませんのでご安心ください」


……ご安心できません。



「曹進様!見えました!」


「あぁ、視認した」


「なんだか様子が可笑しいですね。行軍している感じじゃありませんよ」


牛金が疑問を浮かべる。


「何かと戦っているようですね」


春蘭の言う通りだろう。……なんか人が飛んでいる。


「何だ、あれは!?」


「誰かが戦っているみたいですね。……って!?子供が一人で戦っています!」


「なんだと!?」


牛金の報告を聞くが早いか、春蘭は馬に鞭を振り、一気に加速させていく。


「……え、えっと 曹進様?」


「なぁ~に?」


「よろしいのですか?夏侯惇さまのこと」


「よろしくはないが軍令違反で罰則するほどでもない」


……ふぅー。まずは落ちついて状況確認げんじつとうひでもするか。


偵察に出た→春蘭は俺の護衛→例の集団を発見→子供が一人で戦闘中→春蘭突撃


付いたばかりで状況が明確でない中、護衛対象放置で突撃する護衛。


……何しに来たんだよお前。



まぁいいか。ある意味お約束とも言える。


どうやら敵は予想通り唯の賊徒のようだ。連携はおろか訓練された様子もない。おまけに個人の武もお話にならない。

なんかほっておいてもあの二人で倒せそうだな。


俺が面倒くさいからもう帰ろうかと思っていると、別の斥候が報告しに来た。

すぐそばに似たような集団がいるらしい。進行方向からしてこちらに向かって来ているとのことだ。


せっかくだから蹴散らしておくとするか。


こいつ等の仲間だとすれば似たような力量だろう。あまりにも弱い敵とやっても意味が無い。むしろ気が緩む原因になる。今回は春蘭を抑えられるかどうかの試験にするか。


「牛金」


「はっ!」


「二十騎率いて春蘭の援護に行け。但し全滅はさせるな。十数人程度は逃がし、そのまま二十騎に追跡させろ。おそらく敵の本陣あるいは本隊に逃げ込むはずだ」


「はっ!承知しました!」


「春蘭が暴走して敵をせん滅しようとしたらお前が止めろ」


「はっ!承知しま……って!ええええぇ!!??無理無理、無理ですって!!」


「反論は却下。やる前から無理と決めつける!」


「そんな無茶な……」


牛金が泣きそう顔で訴えてくる。勿論出来なかった時のことも考えてある。


「春蘭が止められなかった時のための対処法を教えてやる。『今度俺の言いつけを守れなかったらお仕置きだ』と俺が言っていたと言ってやれ。おとなしくなる」


「?……分かりました」


「よし、行け」


「はっ!   レッツ・パーリィ!!!」


謎の言葉と共に駆け出していく牛金。


牛金は謎の言葉をよく使う不思議な奴であった。




前方に報告にあった集団を発見。予想通りあいつ等の仲間だろう。


連中は俺達に気がついたらしく慌てはじめた。決まりだな。


「相手は唯の雑魚だ。正面から突撃して蹴散らす!」


正面からの突撃後、二手に分かれ、更に四手に分かれ追撃を掛けた。


戦いなんて言葉が当てはまらないほど、あっさりとした勝利だった。


攻撃中はわざと一方向だけ隙をつくり逃げる敵を誘導した。おそらく同じ場所に逃げ込むのだろうから、まとまっていてくれたほうが追跡は楽だ。古典的な方法だが、混乱していたり、窮地に追い込まれた敵には有効だ。本当はこれを牛金に見せておきたかったのだがな。

春蘭やはりお仕置きか?


十人ほど追跡に出し華琳達のもとに戻った。





Side:牛金


まったく、曹進様も無茶を言われる。


夏侯惇様と謎の少女が敵を押し巻くっているところに駄目押しの一撃を加えた。


敵は退却していった。


私が追跡の指示を出そうとした時、


「逃がすか!全騎追撃を掛けるぞ!全員、叩き斬ってやるわ!」


やっぱりそうなるわよね。


「お、お待ちください。夏侯惇様!」


「ばっ……牛金、なぜ止める!」


嫌――!凄い顔で睨めつけないで下さい。が、がんばれ私!見事成功させて、曹進様と曹仁様に褒めてもらうんだ!!


「我々の任務は偵察です。ここは奴らを逃がし、追跡して本拠地もしくは本隊の場所を探るべきです」


「……おお、それは良い考えだな」


「ほっ、よし!お前達は追跡任務にあたれ」


「「「はっ!」」」


兵達が追跡に出発した。


「はぁー良かった。任務成功で良いよね」


「ん、任務?なんのことだ?」


「実はさっきのは曹進様からの命令だったんですよ。もし夏侯惇様を止められなかったら最終手段を使うところでした」


「最終手段とはなんだ?」


「曹進様より対処法を教わっていたんです。なんでも『今度俺の言いつけを守れなかったらお仕置きだ』って曹進様が言っていたっていえば、夏侯惇様はおとなしくなるだろうって」


夏侯惇様が小刻みに震え、涙目になっている。


なっ!お仕置きってどんなことされるのよ!?








<おまけ>

って、ちょっとーー!!

なんで私は牛金だけで真名が表記されないのよ!!


え?そんなことよりなんでお前があの名台詞を知っているかですって?


ふふっ、皆とっくに気がついているんじゃないかい?


何を隠そう隠さないけど!私はてんせ






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