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第四十五話

Side:沙希


畠の間の道を縫って、男性が一人歩いて来るのが見えた。


刹那様が男性と話している間に、焔が男性に付いて教えてくれた。


男性は王江。刹那様のお母様の兄にあたるらしい。そして刹那様の武術の師だという。


王江さんは、特に大柄でもなく、岩のような身体をしている、というわけでもなかった。しかし、動かし難い、威厳のようなものが感じられた。


「王江です」


「は、は、初めまして関平です」


「若い娘さんにはこのような何もない山中は退屈でしょう」


「いえ。私は田舎で育ったので大丈夫です。それにここはなんだか、安らぐというか、落着くっていうか……とにかく不思議な感じです」


「そうですか」


私のような小娘に対等に接してくれるなんて、やっぱり刹那様の師匠なんだな。




その日の夕食は伯母様の料理を御馳走になった。


心尽くしの料理は、質素だが暖かさに満ちていた。


食事の後片付けは焔と瑠璃の仕事らしい。忙しく立ち働きはじめた。


私も手伝おうとしたのだけど、今日はお客なのでゆっくりしていて良い、と言われたので大人しくお茶を飲んでいた。




「刹那。一緒に、寝る」


「ああ、構わないぞ」


瑠璃が刹那様と一緒に寝たいと言い、刹那様も笑顔で了承された。


一緒にって同じ布団だよね。


……まぁ子供なんだし問題ないよね。


「焔も一緒に寝るか?」


「なっ!俺は瑠璃と違って餓鬼じゃないんだから一人で寝れますよ!」


「私だって一人で寝れる。でも刹那とは一緒に寝たい」


焔が恥ずかしいのか、顔を赤くして怒鳴り、瑠璃が整然と受け流し、刹那様がそれを笑顔で見ている。


なんだか良いな。私は本当に三人の仲が良いと思った。そう、家族のような。



「じゃぁ、沙希。一緒に寝よ」


瑠璃のその一言で私の笑顔が凍る。


「いやいや、それは流石にまずいって!?」


「何がまずいの?」


瑠璃が頭を本当に分からないようで、頭を傾けながら問う。


くそー、なんで仕草がいちいち可愛いんだ!


「いや、だからね、えーーと……」


「瑠璃と一緒に寝るの嫌?」


がはっ!落ち込んでしょんぼりした声でそんなことを言われ、私は心に凄まじい攻撃を受けた。


なんだかすごく可哀想なことをしている気になってきた。


刹那様に助けを求め、刹那様の方を見ると不思議そうな顔をしていた。


この野郎!やっぱりそうか!!貴方の中で私は女性に分類されていないのか!?


「……分かったわ。一緒に寝ましょ」


瑠璃の落ち込む顔に負け、遂に言ってしまった。


私が了承すると顔に笑みが出来た。


最初は言葉数が少なく、無表情な子だと思った。しかしよく見ると少しだが変化が顔に出ている。


付き合いが長くなってくるとよりはっきり分かるようになるらしい。



……布団は別々にしてもらえたので良かったのだが、寝る順番がおかしい。


私は瑠璃を挟んで刹那様と私が並ぶ川の字を予想していた。しかし実際は刹那様を挟んでの山に字だった。


勿論私は抗議しようとしたが二人とも『何か問題が?』みたいな顔をしたので諦めた。


当然のごとく何も起きなかったのだが。


お姉ちゃん達にばれたらどうなるんだろう私……。



翌日は刹那様と王江殿の稽古だった。


私は目の前で繰り広げられる様子に驚いた。


私は自分が強いなんて思ったことはない。個人の武も指揮能力も周りより少し上なだけだ。


刹那様は数多の技と動きを組み合わせて戦う。一つひとつの力はそれほどまでじゃないらしい。しかし私からすれば十分強い。


それが王江殿との稽古ではまるで大人と子供だ。


王江殿は強い。強すぎるほどに強い。


稽古とはとても思えないほどの気のぶつかり合い。はたから見ているだけの私でさえこれほどの威圧感を感じるのだ、対峙しているものにはどれ程のものなのだろうか。

おそらく私ならすぐに気を失うだろう。


稽古は昼食まで続いた。


昼食を食べた後、刹那様は焔と瑠璃を連れて城に戻ることになった。


この二人がこれから刹那様の専属の護衛になるらしい。


二人の技は少しだけ見せて貰ったが、私では一瞬でやられるなというのははっきり分かった。お姉ちゃんでも危ないんじゃないかな。




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