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第三十九話

Side:刹那


さて、早苗もようやく落ち着いたようだし次の話に移るか。


「早苗、あの反応からして北郷もおまえの前世の世界の住人か?」


「はい。恐らくそうだと思います。ただ転生した私と違って、彼の場合は飛ばされたような展開だと思います」


「飛ばされた?」


「はい。私の前世の世界の作り話でよくある話なんですけど、事故とかに巻き込まれたりして、気が付いたら知らない世界にいた、とか」


なるほど。早苗の前世の世界の住人は面白いことを考えるな。


南華老仙の胡蝶の夢に似ている……かな?


早苗の話によると俺達の世界は三国志という物語に酷似しているらしい。


ただこの三国志は複雑らしい。


まず正史と演義という二つに分類さる。さらに同じ正史と演義でも作品により人物像が違っていたり、戦も勝敗は同じでも活躍した人物や経緯が割と違うらしい。

まあまったく同じものを書いてもつまらないので、それぞれ変化が出来るのも当然であろう。


早苗は三国志は父の影響でそれなりに知っているようだ。ただもう何年も前のことなどで曖昧なことも多いらしい。


現状でも早苗の知っているものとではかなりの違いがあるらしい。


まず、真名がない。曹操をはじめ名将、軍師などは男。


諸葛亮など、人物の登場の時期が違う。


話の進み方の順番が違う。


関羽は劉備と義兄弟の契りを交わし、生涯劉備に仕えていた。


曹操に兄がいない。


など他にも色々あった。


どうやら早苗の知っているものとは別のものに成りつつあるようだ。


早苗の三国志の情報は判断材料の一つにはなるがあまり振りまわされない方がよさそうだ。


まずは俺に話し、俺が重要だと思ったものだけ他のものにも話すことで決まった。


「それにしても華琳様も刹那様も普通ですね」


「何がよ?」


「だって自分達の世界が物語に似ているとか言われているのに」


「なんだ、そんなことね」


「そんなこと気にする訳ないだろう。お前の話を疑ってはいない。だが俺達はこの世界で必死に生きているんだ。俺たちにとってこれが現実だ」


「その通りよ。私達が歩んできた道が作り話なんて言わせないわ。自分達の未来は自分たちで切り開いていくだけよ」


周りを見渡すと他の面々も深く頷いた。


「……そういえば劉備はこの間、平原の相に任命されたらしいぞ」


「なぜ劉備が?」


俺の発言に愛紗をはじめ、煉華、桂花、早苗、凪が首をひねる。


間諜の報告によると俺達が黄巾党を壊滅させたのと同じころに、平原を襲った黄巾党を壊滅させたらしい。


例によって前任者はとっとと逃げていて、補佐官が劉備達の活躍を朝廷に報告した。住民が劉備達の活躍を騒いでいたので大げさに報告されたようだ。


人事の移動は大変で、朝廷は時間を掛けていられない。そこで前任の補佐官の推薦、住民からの支持も高い劉備に恩賞として任命したようだ。


「張飛がいるとはいえ、劉備達にそこまで派手な戦ができたのでしょうか?」


「…………」


「どうかしたか?」


無言で自分を見ている春蘭に愛紗が困惑する。


「いや、随分と他人行儀だと思ってな」


「私はすでに刹那様に忠誠を誓い、曹操軍の家臣となった。あの者達とは何の関係もない。本人を目の前にすれば礼儀としてそれなりの対応はするがな。」


「そうだな、失言だった。許してくれ」


「分かってくれればいいさ」


頭を下げ謝罪する春蘭に愛紗も笑みを浮かべつつ頷く。


確かに劉備軍は俺たちに愛紗と中核となる兵を引き抜かれた。

傭兵としてとはいえ黄巾党との活躍や天の御遣いなどにより、あれからも兵は増えていたようだ。


だが、住民を魅了するほどの戦いが出来たのはもう一つ理由がある。


報告によると化け物が加勢したらしい。


化け物では分からないので詳しく聞こうとしたが、実際に情報を手に入れたものが軽い錯乱状態で意識がさだかでないらしい。


情報をまとめるものが聞き出そうとしても、きちんと途中までは話せるのだが、肝心の化け物の話しになると錯乱する。


変態、筋肉、妖怪、変態、おさげ、露出狂、変態、おさげ、髭、変態


取りあえず拾える単語を並べても訳が分からん。やたら変態が多いな。


どうやら化け物二人(二匹?)と男が加勢したらしい。


化け物が大暴れし、それに引きずられるように劉備軍の兵も実力以上の力を発揮して戦ったらしい。


戦の後、化け物一人が留まり、他の二人は姿を消したらしい。


どれのこれも曖昧な情報だな。


詳しい情報を手に入れるべきか諜報員に聞かれたがその必要はない。


確かに気になるが今はそのような珍事件に貴重な人員はさけないからな。


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