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第三十五話

Side:刹那


黄巾党を壊滅させた功績により民衆の間で、曹操の名声は広がった。


陳留を中心に曹操の領地に人々が集まっていた。


志願兵も増え今回新兵の募集を行った結果、今までの倍近い者が志願してきた。


曹操軍の精強ぶりは厳しい訓練の賜物だという事は、民の間でも知れ渡っている。


それを知りつつなおも志願してくるあたり、やる気だけは全員あるのだろう。


しかしやる気があれば良いというものでもない。


新兵の数が一気に増えたので、新兵の調練をするものも自然と増えてくる。


新兵はまず軍で最も大事な集団で動くことを体に叩き込む。


個人の武が無くても死ぬのは自分だけだ。しかし集団の動きを鈍らせることは周りにいる味方を巻き込む。


次に何が適正かをおおまかに判断する。歩兵か騎馬。得物は何が得意かなどだ。


もっともここで決めるのは仮で、他の方が向いていると判断され変更されることも多い。




俺の前には凪、真桜、沙和の三人が整列している。


今回新しくこの三人を新兵の調練を担当させる。


こいつ等の他には専任として、歩兵担当、騎馬担当共に上級将校が二名、補佐として一人に付き二人から四人の下級将校が付いている。


ちなみに早苗達の今の階級は、凪が上級将校。真桜、沙和が下級将校。となっている。


歩兵は凪の補佐に真桜と沙和をつけ、もうひと組作る。


今まで二組で模擬戦をやっていたが三組にし、三つ巴の乱戦などもやることができる。


「お前達に一つだけ言っておく。新兵共に好かれようなんて思うな。新兵の調練をするものは新兵共を苛めぬけ。そして嫌われろ。


ここでお前達が手を緩めれば、正規の軍に配属された後どうせ苦労する。


いや、苦労なんて生優しいもんじゃない。待っているのは死、だけだ。


新兵共が幾多の実戦を戦い抜いた時、始めて感謝される。


それが新兵の調練を行う者だ」


「「「はっ」」」



三人に説明した後は専任の将校に任せ俺は自分の仕事に戻った。


人が増えて軍が拡大するのに比例して俺の仕事も増大していく。


もっとも文官達も増えてきているので、そっち方面の仕事が無くなったので全体の量からしてみればそれほどでもない。




Side:凪


歩兵に大事なのは集団としての動きだ。


いかなる時でもしっかり隊列を組み、まとまって動ければ個人の武で劣っていたとしても勝てる。


幾度となく実戦を経験すれば否応なく分かることだ。


新兵達を三十名で一つの小さい集団を作った。朝からひたすら小さく固まって突っ込む調練ばかりさせた。


同じことばかりひたすらやらされ、不満をもつものも多くいるだろうが今のところ抗議する者はでてきていない。


昼時になり兵に昼食を取らせ後、また朝の続きの命を出した時一人の男が叫んだ。


「ふざけるな!朝から馬鹿みたいに同じことばかりやらせやがって。俺達は戦うために来たんだ。いい加減実戦で役にたつことをやらせろ!武器の扱い方や馬の乗り方とかあるだろうが!」


男の意見に賛同しそうな素振りをみせるものが他にもいる。


気持ちは分かる。私も義勇軍の調練はまず棒などの素振りから始めたものだ。


私は男を前に出させた。男は腕っ節に自信があるようで不敵な笑みを浮かべている。


「棒で殴りかかってきていいぞ。私が言いだしたことだ。私が例え死のうと貴様にはなんの責任もない。ここにいる全ての者が証人だ」


「はっ、良いのかよ?一応手加減はしてやるが下手したら死んじまうぜ?」


男の言葉で兵達の間に少し笑いが起きた。


「くだらん心配はするな。貴様如きかすでは私に触れることすらできん」


男は怒りで顔を真っ赤にし、棒を突き出してきた。


棒が体に触れる寸前に体をそらしてかわし、男の脇腹を殴る。


呼吸が一瞬止まり棒を放し、脇腹を押えてうずくまる。


「どうした?私は軽く殴っただけだぞ。そうか、貴様には少し強すぎたようだな

、すまなかった」


男は怒りにまかせ棒を振り上げて私に襲いかかる。


刹那様に体術を習い鍛錬をつみ、春蘭様や紅様などの豪傑にもんでもらっている私とでは実力が違う。


四度目でついに男は諦めた。


「貴様等の中で曹操軍の英傑の名の中に楽進という名を聞いたことがある者はいるか?いないだろう。そうだ、私など精強な曹操軍の将では弱い。

その私に手も足も出ないお前達は話にならん。

貴様等に個人の武など期待していない。まずは集団での動きを徹底的に体に叩き込め!」


兵達の顔つきが変わった。ある程度さまになれば他の隊と模擬戦でもやらせればこの訓練の大事さが分かるだろう。




Side:刹那


今日は書類仕事があまり無くひと段落ついた。


さて凪達の様子でも見に行くことにあるかな。



まず最初に凪の一軍に出逢った。


凪は流石にうまくやっているな。実戦もそれなりに積んでいるし、俺や春蘭と正規兵の調練もこなしてきたわけだしな。


凪はほっておいても大丈夫だろう。



次は真桜の一軍だ。


真桜は癖のある喋り方でてきぱきと新兵に指示だしている。


あいつは言いたいことをはっきり言う方だ。調練を怠れば待っているのは死だけだという現実を叩きつけているだろう。


真桜も大丈夫そうだな。



最後は沙和だ。


こいつだけは正直不安だ。


普段の調練でも一応形になってはいるがどこか、兵達に緊張感がなくだらけているように感じられる。


紅からも何度も注意され、しっかりやろうとはしているのだがうまくいかない。


今回の新兵の調練で少しでも成長して欲しい。


……不安があたったか。


一応やってはいるがとても調練とは言えないほどお粗末なものだ。


春蘭や煉華が見たら張り倒されるぞ。


まだ半日も立っていないが、これではいくらやっても変わらないだろう。


あいつも真桜ぐらいには素質があると思う。


なにか刺激なようなもので一皮むければ立派な上級将校になるはずだ。


どうしたものかなぁ……


「あれ、どうしたんですか?刹那様」


早苗が騎馬隊の調練を終え戻ってきた。


俺はなかばぐちのように早苗に沙和のことを話した。


おや、早苗が何か考え始めた。なんでもいいから何かいい案をくれ。


「ふふ、あれしかあるまい。刹那様、沙和ちゃんのことは私にお任せを。私に妙案ございます!」


自信満々な笑みを浮かべるこいつの顔を見るとなぜか不安だ。


取りあえずやらせてみることにした。


沙和は騎馬隊を帰還させると沙和のところに行って話し始めた。


半刻程話し、沙和が兵達の前に仁王立ちで立った。


ほっておかれていた兵が多少ざわめいている


「ぺちゃくちゃしゃべるな、このウジ虫どもーー!」


……はい?今何て言った!?


「沙和が貴様達の担当教官の于禁文則小隊長なの!貴様らウジ虫は、沙和が許可した以外に、無駄口を叩くことは許されないの!」


「「「「…………」」」」  「…………」


「分かったら返事をしろー!クソったれ!」


「「「「は……はっ!」」」」


「ちっがうのー!クサイ口からクソひねる前後は、必ずさーと言うのだー!」


「「「「さーいえっさー!」」」」


……とても年頃の女の子が大声で口にする言葉ではないものが連発されている。


一体何が起きているんだ。


早苗の方をみると、親指を立て、したり顔をしている。


なんか知らんが沙和も兵達も先程までが嘘のような調練をしている。


こ、これはこれでありなのかもしれない。


そ、そうだこれで良いはずだ。


さ、さて、溜まりに溜まっている仕事を片付けないとな!


俺はそのばから逃げるように離れた。





<おまけ>没ネタ

早苗の場合


「野郎共、お前達の特技は何だー!?」


「「「「殺せ!殺せ!殺せ!!」」」」


「この調練の先にあるのものは何だー!?」


「「「「殺せ!殺せ!殺せ!!」」」」


「俺達は曹操軍を愛しているか!?曹操様、刹那様の為に死ねぬかー!?」


「「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!!!!」」」」


「「「「「強靭!無敵!最強!!」」」」」


「「「「「粉砕!玉砕!大喝采!!」」」」」


「「「「「フハハハハハ」」」」」


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