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第三十一話

Side:刹那


俺達が遠征から帰還した日に、官軍の援護に向かっていた春蘭達も戻ってきた。


春蘭の長い報告を聞き、華琳はため息をひとつ。


気持ちはよく分かるぞ、華琳。


「……呆れた。それで、孫策に借りを作ったまま帰って来たというの?」


俺も問いただすように見つめる。


春蘭は俺達の反応にたじろぐ。


「え、ええっと……連中の領に逃げ込んだ盗賊の退治は手伝ったのですから、差し引きで帳尻は……」


「「合ってないわよ(ぞ)」」


「他国の領に入る前に黄巾党を片付けておけば、差し引く必要すら無いじゃない」


まったくだ。


「それが……私達が仕掛けた瞬間、物凄い勢いで逃げられまして。今思えば、あれも連中の策略だったのではないかと」


……策略だと?


「……策略?真桜、それは本当なの?」


俺が聞く前に桂花が真桜に問う。


「私に聞けよ!」


いや、俺も真桜に聞こうと思ったぞ。


「すんまへん、うちは官軍の撤退の支援をしとったんで……」


「なら季衣」


「聞けってば!」


春蘭、残念だが俺でもやはり季衣に聞くぞ。


季衣の話からするとどうやら敵の策略のようだ。


春蘭と季衣が相手とはいえ、黄巾党にもそれなりの作戦を展開できる指揮官がでてきたみたいだな。


春蘭は命の危険性がある罠にはかからないが、この程度の罠には容易にかかる。


奴らとの戦いも気をひき締めなおさないとな。特に春蘭と季衣は。



孫策については俺のところにも間者から報告が来ている。


江東の虎、孫堅の娘でかなりのつわものらしい。


今のところは袁術の名門としての力に対抗できないので大人しく食客に甘んじている。だが必ず機会を見つけ、独立するだろう。


現在、俺達の勢力は中の上というところだろう。


今のところ名門の袁紹、袁術が飛び抜けているからな。


袁術と孫策が潰し合ってくれればありがたいのだが、あのお馬鹿には荷が重いか。


孫策が南で力を伸ばすと、袁紹との挟み撃ちになるかもしれない。


そうなればはっきり言って絶望的だろう。



俺が奴の立場なら必ず曹操を先に潰す。


袁紹も袁術も名門の力に甘えているところがある。


袁紹、袁術なら足の引っ張り合いを期待できるので、まだましだ。もっともそれでも相当厳しい戦いになるだろうが。




春蘭達の報告が終り、春蘭達に愛紗を紹介した。


俺達が真名を預け合っているので、春蘭達も預け合った。


「刹那様、愛紗の実力はどのくらいですか?」


「実力って個人の武のことか?それなら今やり合えば確実にお前が勝つだろうな」


愛紗が聞きづてならないといった表情をする。しかし本当のことだ。


「春蘭は煉華を始め俺や紅などの実力者と幾度となくやりあっているし、あの人の元で学んでもいるしな。最近では季衣や凪といった格下とやることで学ぶことも多いだろう。


対する愛紗は昔、俺が付き合ってやったがほとんどは個人の鍛錬のみだ。張飛という豪傑はいたが、あいつはお前以上に直感で戦う奴みたいだ。圧倒的に経験が不足している。


だが、こいつの才能は本物だ。瞬く間にお前に追い付くぞ。


うかうかしていると気が付いたら抜かれているかもしれないな」


俺の話で春蘭の目つきが変わった。


愛紗の参入によって他の連中も触発され、実力を伸ばしてくれるだろう。


こいつらなら互いに競い合い、高め合ってくれるような関係になってくれるはずだ。






Side:凪


陳留に帰還してから十日ほどたった。


私は今少数の兵を率いて情報収集を行っている。


刹那様が認めるだけあって、愛紗さんは本当にすごい。


今は私と同じ上級将校として、兵の調練をしている。


最初は慣れていないようでぎこちなかったが、今では凄まじい調練をしている。


日々、力の差を感じてはいるが、くじけるつもりはない。私は私になりに刹那様の期待にこたえて見せる。


愛紗さんはいくつかの実戦を重なればすぐに将軍になるだろう。


今のところ将軍は春蘭様、秋蘭様、煉華様、紅様の四人だけである。その四人の上に軍部の最高責任者として大将軍の刹那様がいる。


刹那様が言うには個人の武は勿論、局地的な指揮能力も春蘭様や煉華様の方が上らしいが、全体をみつめる力は二人より上なので自分がやっているとの事だ。


たが、秋蘭様が言うにはもう一つ理由があるらしい。


あの御二方に重要な書類仕事などとてもじゃないが任せられないとのことだ。


最高責任者ともなると並みの文官より、書類仕事があるらしい。


そういえば秋蘭様が手伝っているのをよく見かける。





前方の森の中に人の気配がする。


私は手で停止の命令をだした。


私が今率いている兵は、偵察などを主な任務として、普通の兵とは少し違った訓練を積んでいる。だから声ではなく、手の合図だけでかなり細かい指示が出せる。


ちなみに彼らは隠密部隊ではない。いうなれば、その予備部隊のようなものだ。ここで経験を積み、実力者として認められた者だけが、隠密機動の部隊の調練に参加できる。


相手の人数は十人。皆、体のどこかに黄色い布を巻いている。


恐らく黄巾党だろう。


敵はまだこちらの存在には気が付いていない。


尾行することも考えたが、捕えて情報を吐かせた方が確実か。


私は兵を敵の前方と後方に配置させた。


勿論、声など一言も発しない。手だけで指示する。


私が数人の兵と共に敵の側面に襲いかかる。一呼吸間をおいて前と後ろの兵も襲いかかった。


突然の襲撃に敵は完全に虚を突かれ、瞬時に打ち倒され捕えられた。


敵を縛る作業と同時に三人一組で数組を周囲の偵察に向かわせる。


兵が敵の一人の懐から細い巻物を見つけた。


兵から巻物を受け取り、開いて中を確認する。


なにやら地図らしきものと、汚い字で何か書いてある。


どうやらこいつ等は黄巾党の連絡兵のようだ。


連中の連絡手段が進歩してきている。


今までは口頭のみで、中には連絡事項を間違って覚えているものさえいた。


お粗末なものだった。


だが進歩したとはいえ、暗号もなにもない。


これでは今回のように捕えられたら終わりだ。


正確な分だけたちが悪いだろう。もっとも罠に利用するならありかもしれない。


だが連中にそこまでする知略はないだろう。


私は報告のため、急ぎ陳留に帰還した。


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