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第三十話

Side:刹那


「陳留よ、私は帰ってきた!!」


陳留の城門の傍で声高々に叫ぶ早苗であった。


……帰ってくるたびに言っているが必要なのか?


何時の頃からか忘れたが、一部の兵達の間で流行っているらしい。


まあ、命がけの戦から生還できたのだ。


一種の喜びの表現なのだろう。とやかくいうのは無粋だな。


早苗が一瞬止まったと思うと、いきなり俺の方を見て固まった。


なんだ?


ああ、ひょっとしてあのことについてか?まだあいつから聞いていない。


「別に無理しなくて良いぞ。気長に待っているから」


俺がそう言うとほっとした表情で軽く頷いた。しかしすぐに頭を抱えてうなり始めた。


気にならないという訳でもないが、せかすつもりなどないんだがな。



集まった兵のうち残ったのはやはり千弱ほどだった。


こいつらの多くは精兵に育つだろう。


こいつ等は我軍の精兵の力を見て己の弱さを知っている。


下手に腕に自信を持っているものより、自分達が弱いことを理解できている兵の方が、実は調練をよく受け入れて強くなっていくものだ。



いつまでも頭を抱えてうなっている早苗と困った顔で見ている凪に命令を出す。


「早苗、凪、二人でこいつらを兵舎まで連れて行け。今日は一日休ませて、明日から調練を開始する」


「「はっ!」」


二人が兵達を連れて行った。


俺は煉華、桂花、愛紗を連れて華琳に遠征の報告に向かった。





Side:華琳


兄さん達が陳留に帰ってきた。


久しぶりの再会なので楽しみだ。勿論煉華達の事も忘れてはいない。


早馬で渠帥率いる部隊を殲滅したと連絡は来ている。被害もほとんどなかったようだ。


面子を考えると当然といえば当然である。



「よお、華琳。今戻ったぞ」


兄さんが機嫌よさそうにやって来た。


私も笑顔で迎えようとしたがあるものを見つけて止まった。


ふふふっ……この馬鹿兄が、一体どうしてくれようか。


最近この兄は少し目を離すと高確率で知らない女を見つけてくる。



桂花に始まり、季衣、凪、沙和、真桜。立て続けである。


まあどの子も優秀ではあるので問題ないが。


兄さんの趣味の一つが人材育成だ。


どのように成長するか考えるだけでわくわくし、人が育っていくのを見るのが楽しくてしょうがない。


多少気持ちは分かる。


確かに私もそこに有望な原石があれば、思わず磨いてみたくなる。


兄さんの場合、自分で極上の原石を鉱山から掘り出すことから大好きなのだ。



で、今回も例によって知らない女が一人増えていると。


「刹那、御苦労さま。煉華も桂花もね」


「「はっ」」


「……それでそちらの女性は誰なのかしら?……刹那」


若干声色を変えて問う。


「ああ、こいつが今回俺の一番の戦利品だ。お前もきっと気に入る」


随分と自信満々みたいね。


遭遇した義勇軍から将一人と兵を引き抜いたとは聞いていたけど、彼女がそうらしい。


「自己紹介は本人からさせよう」


兄さんに言われ女性が前に出てくる。


「我名は関羽 字は雲長。この度刹那様の配下に加えていただきました。曹操様に一つはっきりと申しておきたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」


「いいわ、いってみなさい」


「では。私が忠誠を誓ったのは刹那様です。我主は刹那様のみ。

聞けば曹操様は女性と閨で楽しむ趣味があるとのことですが、私は断固拒否させていただきます。

この身も心も全ては刹那様のです」


私の眼を真直ぐに見つめてくるその眼は力強い。


たいした忠誠心ね。


「刹那は私の兄ではあるけれども、立場的には私の配下よ。それを分かって言っているのでしょうね?」


「勿論です。刹那様の主は我主です。なんなりとご命令ください。

しかし、仮に曹操様と刹那様が敵対するようなことがあれば、私は迷わず刹那様に付いていきます」


私と兄さんが敵対するなんてある訳が無い。しかしものごとに絶対は存在しない。


兄さんの方を見ると笑みを浮かべていた。


私が関羽をどうするのか楽しみにしているようだ。


まったく、ここまで宣言されたのでは受け入れるしかないでしょう。


ここで拒めば器が小さいと思われる。


私に対してあそこまで言える度胸、忠誠心。兄さんが認めるほどだから実力もあるのだろう。


正直私の者にしたいくらいだ。兄さんが羨ましい。


「いいわ。あなたの言ったことすべて認めてあげる。ただし、刹那が私の元にいる間はしっかり働いてもらうわよ」


「認めていただきありがとうございます。我真名は愛紗、刹那様と曹操様のために、尽力をつくします」


「兄さんや煉華達も認めているようだし、私のことも真名の華琳で呼ぶことを許すわ。あなたの働きに期待しているわよ」




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