第二話
Side:桂花
こいつが曹進。ある惨劇により、一部で『死神』と呼ばれ恐れられるようになった男。
だいたいなんで曹進自身がこんなところまで回収しに来るのよ!命令した時みたいに部下の誰かに行かせなさいよ!!
落ち着きなさい、私。いくらなんでもさっきのことぐらいじゃ殺されたりはしないでしょう。
最後にして最大の難関であるこの男を倒せば曹操様に会えるのよ。
来なさい!曹進!!必ずあなたを論破してやるんだから!!
Side:刹那
青ざめていたと思ったら次は挑戦するかのような決意を込めた眼で睨んできた。
なんだか変わった娘だな。
「君が荀彧か?」
「はい、曹進様。先程は失礼しました。」
「知らなかったのだから別に構わない。それより帳簿をもらえるかな」
「こちらになります。」
さてちゃんとできているかな?必要な量と調達の手段は指示しているのだから、これぐらい完璧にやってもらわないと期待外れなのだが。
……指定した量の半分しか用意できていない。いや、多少足りていないのなら‘できなかった’でいいだろうが半分となると‘しなかった’が正しいか。
なるほどね。だからそんな目で俺をみているのか。直接俺の目に入る今回の件で俺に実力を示し、一気に上に登ろうって訳か。
面白い。そうやって自分に絶対の自信を持っている奴は嫌いじゃない。但し実力がともなっていなければただの愚か者だ。
ここで説明させても華琳にも同じことを説明しなくてはらないので、二度手間になって面倒くさいので最初から華琳に合わせるか。
「この件については直接華琳に説明しろ。華琳のところに案内してやるからついてこい」
Side:華琳
今のところ問題なく準備は順調に進んでいる。後は糧食だけだが兄さんがやってくれているので何も問題ないであろう。
そうこういっている間に兄さんがやってきた。おそらく準備が完了したとの報告であろう。……って!何なのよ後ろにいる小娘はっ!?
「華琳、糧食の帳簿だ。俺の確認はしてある。確認してくれ」
兄さんが帳簿を渡してくる。兄さんがやってくれたのだから不味いところなどないはずだ。しかし一応確認はしなくてはならない。
……やけに少ないわね。この量で出撃したら糧食不足で行き倒れにならないかしら?
「刹那、やけに糧食の量が少ないと思うのだけど大丈夫なの?」
私達の立場上、真名を預けたもの以外がいるときは『兄さん』とは呼ばず『刹那』と呼んでいる。これを決めるときは何の問題もなくすんなりと決まった。そう何の問題も無かったわ。余計な詮索は命を縮めるわよ。
「それりゃー少ないだろうよ。なんたって俺の考えた量の半分しかないからな」
「半分?どういうことなの?」
「さあな。それを説明させるために監査官のこいつを連れてきた」
兄さんの指示じゃないらしい。この監査官の小娘の独断だ。しかも半分ってことは意図的にそれしか用意しなかったってことよね。この餓鬼よくも兄さんに歯向かってくれたわね。
……殺す!!
「荀彧、華琳に説明しろ」
「糧食不足による行き倒れの心配はございません」
へぇ。兄さんが算出した量を否定するとは良い度胸ね。聞いてあげるわ。くだらないことだったら……殺す。
「……どういう事?」
「理由は三つあります。お聞きいただけますか?」
「説明しなさい。納得いく理由なら、許してやってもいい」
できなれければ待つのは死。
「ご納得いただけなければ、それは私の不能が致すところ。この場で我が首、刎ねていただいても結構にございます。」
「……二言はないぞ?」
どうやらそれなりの覚悟はしてきているみたいね。兄さんも何も言わないので理由とやらを聞いてみるとするか。
「まずは一つ目。曹操様は慎重なお方ゆえ、必ずご自分の目で糧食の最終確認をなさいます。そこで問題があれば、こうして責任者を呼ぶはず。行き倒れにはなりません」
なっ!兄さんだけではなく私まで馬鹿にするなんてもう許せない!!
「ば…っ!馬鹿にしているの!?春蘭!」
「はっ!」
春蘭にこの愚か者の首を刎ねさせようとした時、兄さんが前に出てきて止めた。
「落ちつけよ華琳。まだ二つ理由がある。判断はそれを聞いてからでないと約束を反故することになるんじゃないか?」
「刹那様のおっしゃる通りかと」
兄さんと秋蘭が進言してきたので少し落ち着くことにする。
「……そうだったわね。で、次は?」
~原作通りなので中略~
「あなたの才、私が天下を取るために存分に使わせてもらうことにする。いいわね?」
「はっ!」
兄さんは結果に満足しているのか微笑んでいる。
「ならまずは、討伐行を成功させてみなさい。糧食は半分で良いと言ったのだから…もし不足したならその失態、身をもって償ってもらうわよ?」
「御意!」
流石にもう殺したりしないが、兄さんの意見を否定した揚句の失敗。ただじゃおかないわ……。
「ところで桂花。あなた刹那のことどう思う?」
「曹進様ですか!?とくにこれといっては」
どうやら特別な感情は抱いていないらしい。だが油断はできないあの兄のことだから本人は無自覚のまま落とすことがあるかもしれない。注意しとかない。
Side:桂花
曹操様がいきなり曹進のことを聞いてくるので驚かされた。曹操様に近づくためにあの男を利用してやろうと思ったのだが、なぜか勝った気がしない。あの男の筋下記通りに踊らされた感じすらする。
私が曹進のことをみていると視線に気がついたのか目があった。
っ!!なんて穏やかな顔で笑うのよ!
本当に噂の『死神』なの!?
頑張れよって声をかけて肩を叩いていった。
な、なんなのこの感じ!?か、顔が熱い!!血が上がってきているの!?鼓動も速くなっているし!!どうなっちゃとのよ、私の体は!!??
余談(?)
華琳が俺達と真名を預けたもの以外がいる時には『刹那』と呼ぶのは華琳が説明したと思うが一応説明しておこう。
華琳が家督を相続する時にいっそのこと兄弟の縁も切ってしまおうかとも考えた。やるなら徹底的にやるだ。しかしそれを華琳に相談したところそれは絶対に嫌だと泣かれてしまった。まさか泣かれるとは思っていなかったので困った。いろいろあり結局今の決まりができたのであった。
俺が華琳の下ではあるが他の将達の上といった、曖昧な立場にいるのは今後説明しようと思う。