第十九話
Side:刹那
劉備達が北郷を落ち着かせている。
今の出来事を少し整理いてみるか。
彼は早苗の発する謎の言葉に過剰なまでの反応を示した。
つまり彼は意味をしっかり認識している。
彼は最初酷く驚いていたことから、彼以外の者が知っているとは思ってもいなかったのだろう。
おそらく天の世界の言葉なのだろう。
だがそうなると、なぜ早苗がその言葉を知っている?あの子は普段から日常的に使っている。使い慣れている。
あの子の生い立ちは彼女の口から直接聞いているし、煉華は親御さんとも会ったことがあるので素性はしっかりしている。
……まぁいいか。
北郷のほうも落ち着いたみたいだし話を進めるか。
「落ち着いたかな?北郷君」
「はい、すみませんでした。改めて聞きたいのだけど、どうして君は」
「そこまでだ。悪いがこちらには時間があまりないのでね。先に要件を済ませてしまいたいんだ」
「なっ!そんな一方的に!俺には重大な話なんだ!!」
こっちは関羽との久しぶりの再会を楽しむ時間もない。そっちも我慢してほしいね。
「煉華、早苗、凪」
「「「はっ」」」
「部隊に戻り、進軍の準備をしておいてくれ」
「「「御意」」」
三人が部隊に戻っていく。
北郷は納得していないみたいだが、無駄な時間を遣っている場合ではない。悪いが無視させてもうよ。
「北郷君に聞きたいんだが、君は天の御遣いとして、彼女達の御輿ってことで良いのかな?」
「……ああ、そうだ」
自分の思い通りにならないのが気に入らないのか、へそを曲げているみたいだ。一応俺、君より年上、身分も上なんだけどね。だが、子供のダダに付き合っている暇はないので無視する。君に構う時間があるなら、迷わず関羽と話しているよ。
多少強引なのが不本意ではあるが、こうでもしないと話しが進まないので仕方が無い。
「そうか。ならこの軍の真の統率者は劉備君ってことで良いのかな?」
俺の問いに北郷は頷く。
「ならば劉備君に問いたい。君が目指すものはなんだい?」
「……私は、この大陸を、誰しもが笑顔で過ごせる平和な国にしたい」
「それが君の理想か」
「はい。……そのためには誰にも負けない。負けたくないって。そう思っています」
「そうか……分かった。
なら劉備君。平和を乱す元凶である黄巾党を殲滅する為に、今は俺に力を貸してくれないか?
今の君には残念ながら、独力で黄巾の乱を鎮める力はない。だが今は一刻も早く暴徒を鎮圧することが大事。違うかい?」
「……その通りだと思います」
「それが分かっているのなら、俺に協力してくれないかな?」
劉備は不安そうな眼を浮かべ、北郷の方を見る。
「……申し出を受けよう桃香。くやしいけどその人の言う通りだ。
一つ質問があるだけどいいですか?」
「構わないよ」
「あんたと組むことは俺達にとっては大きな利点がある。……だけど、あんたが俺達と組む利点はなんだ?」
「君は何だと思う?」
「……正直、今はまだ分からない。だから聞いている」
「ならもっとよく考えることだ。少し考えて分からないからって、直ぐに答えを教えてもらっていては人は成長しないよ。
話しは以上。共同作戦については軍師同士で話し合ってもらう。なるべく早く出発したいから急いで準備してくれ」
「あ、おい…」
北郷がまだ俺に言いたいことがあるようだが、付き合ってやる時間はない。
……結局関羽とは一言もしゃべれなかったな。
あれだよ関羽。気が付かない、無視していた、ましてや忘れたとかじゃないんだよ。
ただ本当に時間がないんだ。
本当はもう少し余裕があったはずなんだが、早苗の暴走事件、北郷を落ち着かせるのに、時間くったからな。
早苗、後でお仕置きか?
<本作品の北郷一刀について>
原作の個人的な北郷のイメージ
蜀√:周りから甘やかさせて、あまり成長していない。唯のエロ
魏√:現場での叩き上げで成長。軍人型
呉√:スパルタ教育で成長。軍師型
魏、呉√の北郷は大好きなのですが、他√と比べると蜀での北郷が…。
本作品では愛紗が主人公に好意を寄せていて、北郷はただの飾りとしか思っていない。
今のところ真剣に注意してくれる人がいない。周りからちやほやされている状態。
そんな状態だから原作よりさらに悪くなっている。
良くも悪くも、一般の学生から抜け出せていません。
主人公の刹那が幼少時から苦労の連続で、実年齢よりしっかりしているので、
刹那=立派、北郷=子供
みたいな図式になっています。




