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第十六話

私達は客将として世話になっていた、公孫賛の元から独立するために分かれた。


軍師である朱里の進言で、黄巾党の中でも小さな部隊を倒していき、名を上げることになった。名を上げて義勇兵を募り規模を拡大なせていかなければ。



「良い天気だなぁ~~」


「ご主人様のんびりしすぎ!」


「桃香様の仰る通りです。……今から戦いなのですから、もっとしゃんとしてください」


「う……ごめんなさい」


「にゃははは!お兄ちゃん怒られてやんのー」


「うーむ。どうにも実感がわかなくてなぁ……」


北郷殿はぽりぽりと頭を掻きながら言い訳にもならないことを言っている。

まったく、いつまで経ってもだらしない。もう少し上に立つ者の自覚を持ってほしい。


「でも、変に鯱張っているよりも、今みたいにのんびりとしている方が良いと思います」


「兵達は上に立つ人の気分や態度をちゃんと見ていますから。だからご主人様の何事にも動じない態度というものは、頼もしく見えると思います」


桃香様をはじめ皆北郷殿に甘すぎる。あれは唯だらけているだけだ。安心するより、影響されて一緒にだらけてしまうだけでないのか?


「……贔屓の引き倒しではないのか?」


「ちょ、関羽。何気に酷いこというなぁ」


「主にはもっとしっかりして欲しいという、可愛い部下からの諫言です」


まったくこの人は。少しはあの御方のように立派になって欲しいものだ。


「まぁまぁ、愛紗ちゃん。ご主人様も頑張ってくれるよ」


「愛紗はまた例の男の人のことを思い出しているのだ」


「例の男?」


「ご主人さま、愛紗ちゃんの初恋の男の人だよ」


「ち、違います!あの御方は私の命の恩人で、目標としている人です!」


そ、そうだ。別に私はあの御方に恋しているわけでない。純粋な尊敬だ。まったく、桃香様も鈴々もいくら言っても誤解が解けない。




あの御方との出会いは数年前。当時、私は一人で武者修行の旅に出ていた。






近くの街から十里ほど離れた村にしばしば盗賊が出ると聞いた。私は賊の討伐のためにその村に行くことにした。


近くまで行くとすぐに異変に気がついた。


村人の死体。村はずれの畑から、村の家々が並んだところまで、死体は八つ転がっていた。どれも、五、六ヶ所の突き傷や切り傷を受けた、酷いものだった。


私は慎重に村に入った。逃げ惑って突き殺された人々の死体は、ちょっと数えただけでも二十を超えていた。


村の広場に近づく笑い声がした。


まだいる!


「なんだ、お前は?」


三人の男が私を見つけて近づいてくる。


私は答えることなく近づき、男達の首を刎ねた。


荷車に、奪ったものを積み込もうとしている者がいた。若い娘ばかりが、裸にされ、縄で繋がれている。賊徒は三、四十人というところか。


私は近くの敵を切り捨てていった。敵の槍を弾き返し、斬り倒す。


八人ほど倒したところで、敵が少女の首に剣を突き付けた。


「動くな!妙なまねしたらこのガキを殺すからなら!」


「っ……卑怯な!」


「いいからとっとと武器を捨てろ」


私は仕方がなく武器を捨てた。


「これでいいだろう。早くその子を話せ」


「いいや、駄目だな。このガキにはまだ役立ってもらわないとな」


丸腰の女一人が怖いのか。しかし私の言葉を連中は聞く気がしないらしい。


「お前なかなか良い女じゃねぇか。服脱いで俺達の相手をすればこのガキだけじゃなくて、村の連中助けてやるよ。歯向かったら皆殺しだ」


あいつ等が約束を守るとは思えないが、今は言う通りにするしかない。必ず機会はあるはずだ。それまで耐えなくては。


私が服を脱ごうと手を動かすと男の声が聞こえた。


「なんだ?ああ盗賊か。……なるほど、そういうことね」


男は落ち着いていた。盗賊や死体など見慣れているようだ。


「なんだ、お前は!?」


「食糧が無くなりそうだったので、この村から分けて貰おうかと思って来た」


「てめーも武器を捨てて大人しくしやがれ!」


「……なぜだ?」


馬鹿な!?人質を取られているのだぞ。相手の言う通りにしろ!


「あ、ひょっとしてあれか?言うこと聞かないと人質を殺すぞ!ってやつ」


「みりゃ分かるだろうが!!さっさと言う通りにしろ!」


「断る。人質なんて意味ないと思わないか?人質を取るって追い詰められている証拠だ。それに人質って生きているから意味があるんで、殺したらもう自分を守る手段がなくなるんだぜ。むしろ相手を怒らせて状況は悪化する」


男の態度が気に入らず、盗賊どもが襲いかかる。


男がなんでもないように、前へ出た。殺してくれとでもいうようだった。次の瞬間、男に死ぬ気などまるでないのだ、と私にはわかった。


男の体がまた前へ出る。何気ない仕草で、突き出された剣をかわし、賊とすれ違った。そう思った時、二人の賊の膝が折るようにして倒れた。男が振り向く。その時ひとりがまた倒れ、横に動いた時、二人が倒れた。


男の拳が、腹や胸を打っている、ということが、私にはかろうじて見て取れた。


なにも無かったように、男は少女を人質に取っている賊に近づく。


なにもしないうちに五人が倒れ、盗賊達は動揺した。

賊は恐怖のためか、少女をどかし斬りかかる。

男の拳が賊の顔にめりこんでいた。


残った賊は茫然と立ち尽くし、逃げ出した。




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