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第十四話

Side:刹那


本隊が到着したことにより、敵を殲滅することができた。

正直、結構危なかったな。


全身血まみれなので、早く体を洗いたいが先に華琳達に報告しなければならない。


俺が華琳達のところに行くと、何やら騒いでいる。

華琳や春蘭達も面識があったらしい。季衣と秋蘭も知り合いだったらしいがそれぞれ知り合いだったらしい。


「どうしたんですか曹進さま!?」


俺の恰好に季衣が慌てる。まぁ全身血まみれだからしょうがないか。


「大丈夫だよ、季衣。殆ど返り血だ。俺自身はかすり傷程度だ」


「御苦労さま、刹那。報告は秋蘭にしてもらうから早く体拭いちゃいなさい」


流石に血まみれなのは嫌だったので華琳のお言葉に甘えることにした。湯をもって来てもらい体を拭く。


俺が体を拭いている間も報告は進んでいる。

そばにいるので話は聞こえている。


義勇軍の働きに華琳から感謝の言葉出る。

華琳は例え義勇軍であろうとも礼を言える。義勇軍というだけで見下し、邪魔者扱いする奴もいれば、相手にしない奴もいる。


楽進、李典、于禁の三人は華琳からの礼に驚きつつ喜んでいる。


季衣が楽進達を華琳の部下にしてくれないかと頼む。秋蘭も彼女達の実力と才能を見極め勧める。


華琳が俺を見つめる。


はいはい、そうですよ。仕組むましたよ。


防壁の設置、住民の避難などの行動を見て彼女達三人が有能なのは分かったからな。


下級将校までなら兵卒から見つけるのは難しくない。だが、上級将校となると一気に限られてくる。彼女たちなら上級将校になれる器だ。


人材登用。それは俺が一番力を入れている仕事だ。有能な人材はそうそう見つからない。すでに頭角を現している者は何処かに仕官している。していない者はただ見けられていないものもいるが、大抵は何かしらの理由で仕官しない連中だ。そういった奴らを口説くのは骨が折れる。


有能な人材を三人も同時に見つけたんだ。是が非でも欲しいに決まっているじゃないか。


李典と于禁には我軍の正規兵の実力を見せて、義勇軍との差を教える。

狙い通り二人は正規軍の精強さをみて、賊徒共に勝てる力を感じた。


楽進は三人の中で一番軍人としての資質はあった。ただその才能は開花していない。人殺しの恐怖に怯えていた。そばに置くことによって何かしら感じてくれたのなら良いが。


義勇軍の兵も予想より戦えた。集団としての訓練を積めば十分戦力になるだろう。


楽進、李典、于禁と義勇軍が華琳の配下に加わった。


華琳や俺を含めた主だった者は三人と真名を預け合った。



楽進:凪  李典:真桜  于禁:沙和 



Side:凪


私が一人で先程の戦いを思い出していると曹進様がやってきた。


「初めて人を殺した気分はどうだ?」


やはり見抜かれていた。


私はどう説明すればいいのか迷った。


「…それが……何も感じないんです」


そう何も感じないのだ。戦っている時のことはほとんど覚えていない。状況が落ち着き、冷静になって振り返ろうとしても何も感じない。本来なら人を殺したことへの重みに苦しまなければならないはずなのに。どうやら私は可笑しいらしい。


「何も感じないのは感情が麻痺しているからだ。戦った後は皆そうなる。そのうち必ず、人を殺した重みが襲ってくる。


その重みに押し潰されそうになったら三つのことを思い出すと良い。


まず、お前は務めを果たした。


次に、お前は仲間や友、民の命を守ったんだ」



勿論それは自分に言い聞かせてきたことだ。


「……三つ目は?」


「俺は誇りに思う」


不思議と彼の声は心にしみ込んでくるようだ。



曹進。彼は不思議な男だ。

初めて会った時は、顔立ちははっとするほど整っているが、それ以外は平凡な将だった。

‘覚悟’の話の時は、私の心の底を見透かすような感じで少し怖かった。

戦っている時の姿は、雄々しく思わず見惚れた。

そして今私と話している彼は、安らぎを与えてくれる。彼の表情、仕草、声。そばにいてくれるだけで、心が穏やかになる。

まるで子供が親に頼る…ふふっ、それでは流石に失礼か。妹が兄に頼る、そんな感じだ。


この人が誇りに思ってくれるのが誇らしく感じる。なぜだろう、よく知りもしないのに。


私はこの人に付いていこうと決めた。この人に付いていけば、私はもっと強い自分になれる気がする。もっと私のことを誇ってくれるようになりたい。


この気持ちが尊敬なのか、恋愛なのか分からない。


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