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第十三話

Side:刹那


敵、敵、敵、敵。見渡す限り敵で覆い尽くされている。


よくもまぁ、こんなに集めたものだ。……いや、こんなもんじゃないな。こいつらが本気で集めれば五、六万は軽く集まるだろう。廃れた時代だからな。


とにかく今は本隊の到着まで、生き残るために戦うしかないか。



城壁の上から弓を射る。弓兵を集中して狙う。まともに使える奴は恐らく多くない。弓はいきなり命中させられるものではないので、使い手がいなければ無効化できる。

弓のない者は、岩など投げられるものをかき集め投げさせる。破城槌を持つものを狙う。破城槌に近づくと殺されると、敵に恐怖心を与える。正規兵にはとても使えない方法だが、賊徒共には多少効き目がある。


俺の弓の腕前は秋蘭からは名手と太鼓判を押してもらえるぐらいにはなった。散々苦労したがね。例のごとく、かなり使えるが最強は目指せない。俺らしいな。


弓を射続けるが矢が無くなった。他の連中も投げる物が無くなってきた。そろそろ城門はもちそうにないな。もともとぼろく、応急処置で増強したものですぐ破られるだろう。


まぁ、二刻程はもったので良しとするか。


城壁から突入した敵を抑えるために配置させている、楽進と義勇軍をみる。

やはり未知の数に怯えている。あのままでは満足に戦えないだろう。やはり劇薬が必要かな。


俺は楽進達と合流しに行った。




Side:楽進


敵の攻撃が始まり二刻近くたった。あの城壁をここまでもたせるとは。


だが、流石に限界のようだ。城壁に対する攻撃が強くなってきた。

だが私はいまだに恐怖心をぬぐいきれていない。

なんて情けないんだ。

未知の敵の数、殺すという行為への恐怖。

怖い。逃げ出したくなる自分を踏み踏み止まらせることで精一杯だ。

他の皆も恐怖していることが分かる。


城門にひびが入り、瞬く間に大きくなる。


来る、来る、敵が来る。


怯えるな!戦え!自分に言い聞かせる。


ついに城門が破られ敵が侵入してきた。


迎撃!迎え撃つぞ!!


……足が動かない。声も出ていない。


……駄目だ。怖い。体がいうことを効かない。


肩に手が置かれた。


曹進殿だった。


気配を消していた訳でもないのに、肩に触れられるまで気が付かなかった。


「ここで観ていろ、楽進。この義勇軍に、いま力をつける。劇薬をくれてやる。そうすれば、互角以上の戦いが出来るはずだ」


お前にもな、と言われている気がした。


彼は鞘から刀を抜いた。


刀からは何かとてつもない力を感じる。豪傑なら言葉に出来るだろうが私程度には無理だ。覇気とでもいうのか。とにかく私は圧倒された。刀の力とそれを何なく耐える彼に。


曹進殿は刀に囁き掛けた。


「さて、煉獄。お前を使うには約不足もいいところだが、許してくよ。なにせ相手の数が多すぎるからな」


敵は迫ってきている。まさにぶつかろうとした時、咆哮を上げ敵の中に突っ込み、刀を振るいはじめた。

首が宙に舞い上がった。十、二十、いや、束の間でも三十は舞い上がったのか。

返り血で曹進殿の上半身は赤く染まっていた。さらに、刀を振るう。首が舞い上がった。


敵は、明らかに怯え始めた。


人の首を躊躇なく刎ねる。尋常ではない。

思わず、私は見とれた。一蹴、戦場であることも忘れた。

曹進殿の全身は、赤い。陽の光を浴びて輝き、美しいとさえ私は思った。


敵が退き始める。


「押せっ!曹進様に続くのだ!!」


私は自然と叫んでいた。


義勇軍はみんな、血に酔ったようになり、敵との斬り合いも恐れていなかった。


崩れた敵を、追撃しては下がり、迎撃。崩れたら追撃をくり返した。


義勇軍の皆は興奮しているにもかかわらず、曹進殿の指揮には良く従った。




どれ程の時を戦っていたのか分からない。


しだいに勢いだけでは誤魔化しきれなくなってきた。


その時、街の外に大きな砂煙。大部隊の行軍を見つけたと報告がきた。


旗印からついに本隊が到着したと分かった。



私達は生き残ったのだ。


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