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第十二話

side:刹那


斥候が敵が進軍を開始したと報告してきた。


明るくなったので新たな情報も手に入った。


敵の数はおよそ一万

武装は貧弱

攻城兵器は丸太で作った破城槌が数個

張角らしき存在は確認できない。おそらくいないだろう

我々に援軍として義勇軍八百が加わった


この情報を早馬で華琳に知らせに行かせる。敵の数が圧倒的なので長くはもたない。なるべく急いでほしい、とも。


こちらは守備隊千、先発隊千五百、義勇軍八百。


いくら籠城戦でも流石に厳しすぎるな。華琳達が一刻も早く来てくれることを願うしかない。


まずは義勇軍に覚悟を決めさせておかないとな。




Side:楽進


曹進様が配置に着く前に我々を集めた。


「取りあえず全員覚悟を決めることだな」


何をいまさら、死ぬ覚悟など皆とっくに出来ている。

確かにこのような大軍を相手するのは初めてだ。だが数百ぐらいの相手なら何度も経験している。新兵扱いされるのは心外だ。


「死ぬ覚悟など皆とっくに出来ています!」


「馬鹿が、そんなのじゃない。死ぬ覚悟なんてのは戦うと決めた時に当時にするものだ」


「ではなんの覚悟を?」


「殺す覚悟だ」


!!


「お前達は義勇軍としてそれなりに戦ってきているだろう。人も殺しているはずだ。だが、明確な意志を持って殺して来てはいないはずだ。倒す、追い払う。その程度だろう」


……確かに追い払うことを考えていたかもしれない。


「今まではうまくいったが、これからはそうはいかない。相手はこっちを殺す気で来ている。死にたくなければ殺せ。一瞬のためらいが、死を招くことだと思え。俺の言葉が残酷に聞こえるだろうが、それが事実だ。受け入れられない者はされ。足手まといだ」


曹進殿の意見は過激だが事実でもある。私達は賊徒を追い払えば良いと思っていた節がある。賊徒を殺した者も何人もいるし、殺された者もいる。


気がつくと曹進殿が目の前に来ていた。私の目を見つめるその目は、心の底を見透かしているようだ。


「楽進、君は人を殺したことが無いな。いや、殺せない。殺すのが怖いんだ」


私は心臓を鷲掴みされたように感じた。


「俺が‘殺す覚悟’といった時の君の眼にははっきり恐怖を感じられた。

君はかなり強いだろう。そこらへんの奴ではまず勝てない。そして無手で戦う。はっきりとした実力の差、無手。この二つの要因により、君は相手を殺すことなく無効化できた。しかしこれからはそうはいかない。いいか、躊躇なく殺せ。君が死ねば君の仲間が死ぬことになるかもしれない。それだけはよく覚えておけ」


曹進殿の言葉で私は必死に自分自身を騙していたことに気がついた。

そうだ、私は殺すのが怖いんだ。拳で骨を砕くあの感覚すら怖い。人を殺してしまったらどうなるのか怖い。皆を誤魔化してきた。相手の腕や足の骨を折り無効化するのは、情けなどではない。殺せないからだ。



私は唯の臆病ものなんだ。


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