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蒼い鳥   作者: ネムのろ
第二章 こいつらなら大丈夫
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その7  戦いの前  

蒼い鳥 その7  戦いの前  


花梨との勝負が決まってから二日。今日が決闘の日。バトルの炎を胸に目に宿していたのは花梨だけで、当の勇夜は少し落ち込んでいた。と言うより彼は不安だった。



「とうとう今日ね!バトルアリーナでやるらしいから本格的で、手加減しなくても周りがそう容易く壊れる事はない!!」



『戦略はどうするの?体術、もしくはナチュラルに自然の力を使う?それとも両方?あの子達がなかなか出来る事はこの前の戦闘で見させてもらったし、そこからデータを割り出して...』



「なーに言ってんのモモ!!ゲンコツでボコルのみよ!!ザ☆パワーで押しまくるのみ!!」



『...はぁ。少しは考えようよ?花梨がそう言って突っ込んで私がフォローする...私の方に負担アリアリじゃん!!』



「...ん~...そういってもなぁ。頭でウダウダ考えるより行動で示すタイプだもんな~私。」


















この会話を聞いてしまって戸惑っているのが隣の席の勇夜とサフィ。









『...この二人はもっと静かに話すとか思わない馬鹿タイプだね。と言うより、敵陣に無闇に突っ込んで一人でバカするタイプだ...まだいたんだなぁ。この世の中に。』


少し感心するサフィを横に、勇夜は焦っていた。


「サ、サフィ!失礼だよ、そんな事言って...」


だがサフィは銀色の目をウットリとウルワセながら満足そうに呟いた



























『俺の好みなんだよね』





















「へ?」





『好きなんだ。こう言う人達が。馬鹿で正直で、心も真っ直ぐで力強く、一度認識した友は決して裏切らない...懐かしいなぁ。あの頃を思い出す...』


「そう...なんだ...じゃ、あの子らも...そうなのかな?」


『何がだい?』


「真っ直ぐで人情深い、仲間を裏切らない人...」


勇夜の目は、寂しそうに不安げに、モモと花梨を見つめていた。








『勇夜くん...まだあの時の事...』







「僕、強くなってる?サフィ...」







花梨とモモを見つめながら勇夜は、か細く、震える声でサフィに聞いた。







「あの時より、強くなってきてるのかなぁ...?自分じゃ解んないや...」







『そうだね。だからこの勝負は自分の力を知るには必要不可欠。確かめたらいいよ。全力でぶつかってみよう。きっと相手も答えてくれるよ。』





「うん。僕やってみるよ。」



少年の目に力強さが宿ったのが見え、サフィはホッと一安心した。これなら戦いの時迷う事もないだろう。きっと全力でぶつかり合える筈。



(彼にとって必要となる戦い...この一戦で二人とも大きく成長してくれれば文句無しだ...)



銀色の鳥は空を悲しそうに見つめながら物思いに耽っていた。そんな様子を勇夜が心配げに見つめていた事にも気ずくこともなかった。



(まただ...たまにサフィは凄く悲しげに空を見る事がある...何でか聞いてみたいけど...今はまだ聞いちゃいけない気がする...一体彼の身に何が起こったんだろう...?僕と会う前は一人だったって言っていたけど...本当は誰かとずっと一緒に居たと思うんだよね。花梨たちの馬鹿っぷり見てて“懐かしい”って言うほどだし。)





そしてサフィは視線を空から授業をしている(いや、楽しんでるのか、アレは?)教師へと写し、何やら考え出した。勇夜は気を引き締めて授業へとのめり込む事を決めた。


(この先にきっと起こるだろう戦争に、勝つための力と心。この子達なら大丈夫。きっと勝ってくれる。そのためにはぶつかり合って成長するしかないんだ...)





『おかしいな...君達の安堵を願い、行動してきたのに...これじゃまるで荒々しい戦いへ導いてるようだ...』









「え?」











『君は...恨むだろうか...こんな事しか出来ない俺を―...最後になったら、憎むだろうか...真実を知った時...』


「サフィ...それは君が悲しげに見つめる空と関係があるの?」



『気ずいて...たんだ。』



「ん~、まぁ、なんとなく...ね。一緒に居てもう五年になるしね。」



『...そうだなぁ...うん、そうかな。俺は―...世界を救うために...君達の安堵を奪ってしまっているかもしれない...』



「サフィ...」



『御免。君の普通の時間を奪って、荒々しい生活へ引っ張ってしまって...』



「くす...ううん。気にしてないよ。」



『え?!』



「言ったよね?僕、一人だったって。闇の中にいたんだよ僕。孤独と言う名の闇。君が助けてくれたんだ。導いてくれたんだ。この世界には別の生き方があるのを見せてくれた。人は皆違うって事を知った。夢を追いかけるための力は自分の中から生まれるって事を教えてくれた...僕は君に感謝してるんだよ?だから、最後になっても、僕は君に感謝してると思う。どんな真実が待ち受けているとしてもね。だから、ありがとう...」



『こちらこそ、ありがとう...こんな俺に付き合ってくれて...』


そんな二人の会話も、クラスの皆に聞かれてしまっていると言う事も、当の二人は知らなかったのだった。





















「「「ぐすっ!ええ話やなぁ...」」」←皆の声がハモッた















「えっ?なにが?」


『あ、今は授業中だったよね...話聞いてなかったよ...どうする勇夜くん?』


「と、言われてもな...後で聞くしかないと思うけど...」


そんな中、おちゃらけている火ノ子(略してヒノ先生)はいつにも増して鋭くサフィを見つめていた。







「あいつ、まさか...」





この呟きは、何故かそこにタマタマいた【禁忌破りの問題児】こと、草野千枝しか聞かなかった。



「ヒノ上司、あいつと知り合いで?」


「んん~?千枝ちゃんか。う~ん、どうだろうね~。興味はあるけど、まだ確信はないかナ?ところで何?用があって来たんでしょ?君らは二年だからこの教室じゃないし...」



「報告書です。あと、あなたにこの手紙を渡すように言われてきました。」



「え~?なんでワザワザ君らをよこしたのかなぁ?【無駄な命知らず】君までさ...手紙って、誰からなのぅ?」



「あの人達からです」



「ダレそれ?」




「12志士の中の先生の一人、【白銀の刃】こと(こうよう かりん)光洋カリン先生と、これまた12志士の先生の中の一人...」














「妙に長い黒髪を後ろで縛ってるあの緑色の目をした【漆黒の閃光】こと(くろぶし ゆうき)黒武士ユウキ先生だよ。ヒノ先生」








「...あいつらネ...え~とぅ、中身は~ふむふむ、うんうん...」






すべて読み終わった時、側にいた千枝は素早くジャンプをし、清流斗潮(略してトッシー)も敏感にヒノの側から離れた。その瞬間、ヒノの髪が一気に赤く染まり、手の中の紙は燃えクズとなり、彼女の周りが炎に包まれ、そして、大きな爆発音とともに炎をメラメラと体に巻きつかせながら教室(だった所)に君臨したのは、かも有名な【赤木のフェニックス】だった。












「ふざけるなぁ!千枝とトッCー(シー)が一年生やり直し?!何でじゃボケー!!」






















炎が鳥の翼のようになり、そのまま彼女は飛び去っていった...そして後々聞こえてくる悲鳴やら破壊音やらを一生懸命ムシしながら自習をしていた可哀相な一年生達が後に誉められるのは、そう遠くない話。






その8へ 


次はマジバトル?!

こうご期待!!!

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