その5 イシャエル学園の新入生
「やっとこの学園に入れたよサフィ!」
『そうだね。勇夜くん。』
親に無理を言って試験になんとか受かりやっとイシャエル学園に入学。今年で12歳の彼、勇夜は前と比べると明るめの少年に育っていた。だがまだ人と触れ合うのが下手で友達も満足に出来てない。
(一人にさせるのは、まだ早いか。かと言ってこの姿で居られるのもそう長くは無い...)
一匹静かに考えているのは銀色の羽根を持つサフィ。
「ねぇサフィ?どうして蒼く光ってないの?」
『ああ、無駄な力を使わないようにしてるんだ。いちいち光ってたら注目されちゃうしね。』
「でもさ、僕と話すときは決まって光ってたよね?」
『今じゃその必要がないから光らなくても話せる。あの頃はまだ不安定だったからね。多めに力を使ってでもしなければ話す事さえ出来なかった。』
「ふーん。でもさぁ」
勇夜は学園を歩きながら簡単に見回す。
「ホント学園って割には広すぎるよね~」
『...確かにね。有り得ない力の混雑とか、封印とか沢山ありすぎる所だね。ココの学園長は絶対人間じゃないよ。人間にココまでこんな不安定な真弦コントロールなんて出来はしない。』
「それ何?まげんこんとろーるって?」
『真実の力をコントロールする力の事だよ。この世界に存在する普通の力とこの世界から漏れ出した未知なる不思議な力を制御、そして圧迫しながら使ってるんだ。便利な事や迷惑な事が沢山おきてると思うよ。』
仰る通りです。
「へ~!サフィはやっぱり物知りだなぁ~!」
階段を上がりながら自分の教室へ入ろうとした時、近くで壁が崩れる音がした
「サフィ!この感じは確か...」
『Go there collapsed(崩れ行く存在)が発動してるんだ!誰か被害にあってる。行く?』
「うん。まだ時間はある。助けに行こう!!」
少年はそう言い、駆け出した。
一方、Go there collapsedが発動された所では問題が起きていた。この意味不明な力は発動後、何とかしなければそのまま回りを飲み込んで悪い時には壁や置物や人間でさえ存在を崩してしまうと言う恐ろしいハプニング。そこに、存在が少し乱されて動けないでいる子が中心部にいるため、Go there collapsedを消そうにも出来ないでいた。
このままじゃ学園全体が危ない。
「モモ、どう?出られそうかな?」
『花梨、やっぱり無理。ココから出ようとすると今度は自分の姿が崩れるみたい。やっぱりじっとしてるしか...』
「するわけないでしょう」
そういい終えるか終えないかの間に、花梨は素早くGo there collapsedの渦巻く中心で軽くバクテンをし、少し地面から離れた所で相棒のモモに指示を出した
「モモ、風をお願い!」
『自分で何とかする...か。らしいよね。』
こくりと頷き、早業で周りの風を集め、伸びたままの花梨の腕に風を送った。と同時にもの凄いエネルギーが花梨の体を駆け巡る。
「乱風乱魚!!」
水と風が綺麗に混ざり合い、彼女の体を中心にどんどんと膨れ上がっていき、それがGo there collapsed(崩れ行く存在)に触れた瞬間、暴発的に拒絶反応を引き起こし、すさまじいエネルギーを発していた。
「まずい!Go there collapsed(崩れ行く存在)が暴走を始める!!」
「そこの餓鬼!!何やってんだ!!」
「おいおい、まずいんじゃねーの?!このままだと【どこまでも狩りカリン事件】を突破しちまうんじゃねぇ?!危険度Sになんじゃねー?!学園吹き飛ぶんじゃねぇー?!?」
教師やら生徒やらが騒ぐ中、一匹の鳥の鳴き声が聞こえた気がした...
「「「え?」」」
パタタ...と羽ばたく音とともに一人の少年が道の真ん中に居る野次馬達をおしのげるためにそいつらを飛び越えてしまった。
「こりゃ凄い。Go there collapsed(崩れ行く存在)なんて始めて見るよ僕。しかも暴走寸前!こりゃあ早いとこ、かたずけなきゃ!」
『こいつは自然系の力じゃ駄目なやつだ。破壊系で行かなきゃ逆に力を吸収しちゃうんだ。赤っぽい黒みたいなやつに限って面倒なんだよ!』
「わかった!!破壊系だね!!」
そう言うなり、少年は自身の体に秘める力を解放していく。
「やや?あの少年が今回止める役すんの~?ヤブっち?」
そう言いながら現れたるは長い赤茶の髪をポニーテールにした掴み所のないあっとうな力を持つと恐れられている
「12志士の中の先生の一人【赤木のフェニックス】赤木火ノ子先生!」
「は~い、そう勝手に言ってるのは君達だけ~でしょ♪で?今回は誰がコレ止めるの?やっぱり~、あの子~一人?【無駄な命知らず】君や【禁忌破りの問題児】ちゃんだと思ってたんだけど~、はずれちゃったカナ♪」
「そうみたいですね。あれ?でも見た事ない奴ですよね。」
そう言っている間に少年の攻撃が始まる。彼の周りにミニバズーカが10くらい現れた。
「くらえ!ライトバズーカ×10!!」
そこから放たれた光の塊たちはGo there collapsed(崩れ行く存在)に向かって暴発する!!
しばらくして、Go there collapsed(崩れ行く存在)は消えていた。
「ふぅ。ありがと。サフィの助言のおかげだよ。」
『君の強さの成果だよ。よかったね。』
「ほう...新入生か...♡」
「あ、先生ですか?!すみません。廊下をこんなにしちゃって...」
「ああ~、気にしないでいいヨ~どうせいつもの事♪それより...」
「ちょっとまったあ!!!」
赤木先生と勇夜の会話をはしょって出てきたのは無論Go there collapsed(崩れ行く存在)の中心に居た彼女、新入生の花梨だった。
「どうして手を出したのさ?!あんなモン、あたし一人でも対処できたんだあ!!」
『お、落ち着いてよ花梨!!』
モモはパートナーを止めるのに必死だ。
「え、あ、いや、被害が他に出そうだったから、その...そうなる前にって...えっと、だから...」
『油断は禁物だよ。お嬢さん。何が起きても可笑しくない所に居るんだ。それなりに対処できないからって、八つ当たりは止めてほしいね。出来なかったのは勇夜くんのせいじゃない。君の力不足だ。』
「サ、サフィ!ぼ、僕は平気だよ。もう、いいよ。いこう?」
そういって少年、勇夜はそこから離れていった。
「なによ。あいつら。」
『...今のは花梨が悪いんだからね!助けてもらったのにさ...』
「はいは~い!皆は自分の席ついてね~!こんなんでも授業始まるからサ~!」
赤木はそそくさと皆を仕切り始めた。
「今年の新人たちには期待できそうだネ♪」
そういいながらスキップをしていた赤木。勿論、知ってる者は見なかった事にしたり、諦めていたが、今年の新入生たちは大人のスキップを見てどう対処していいか混乱してたという...
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