蒼い鳥 その4 一人じゃ...
蒼い鳥 その4
蒼い鳥 その4 一人じゃ...
「...生きれねぇんだよ!!」
甲高い声が辺りに響いた。
「それでも私は一人にならなきゃいけない。それが定め」
誰を頼る事もなく一人彷徨うその姿は神秘的だと最初思った。でも、後からそれは間違いだと知った。
彼女と出会ったのはイシャエル学園に通い始めて1年が過ぎた時。この学園は2人か3人でペアを組み、イシャル族、イザシュエル族、イシュエル族の事や、力、
つまりは自然の力の使い方、それぞれの己の戦い方などを教わる場所。普通の授業も手がけているため、そこの卒業生たちはどれも優秀で皆に大評判。今では殆どの親子さん達がこの学園に目を付けていると聞く。俺も父さんと母さんに進められてココへ来た口だ。
初めの頃は本当に変わっている場所だと思った。例えば異次元転移でも出来なければ入ってはいけないと言われる教室があったり(つまりは開かずの間)、夜中の12時ぴったりに、ある力を使うと何処か未知なる所へ転送してしまって帰ってきても誰もその事に関して絶対に口を割らない恐ろしい(?)庭(と言うより高原と言った方が言いような馬鹿広い庭)
が存在していたり、場所が不安定でショッチュウ違う所に繋がってしまうある意味便利で不便利な音楽室があったり、時折、異世界のモンスターを間違えて召喚してしまうかなりドジな先生がいたり...。
まあ、とにかくそんな超が付くような個性的な学園な訳で...そこに慣れたら嫌でも強くもなるよ。おもに精神的に。(ここの卒業生たちはどうしてどれも優秀なのか理由が解った俺)あと肉体も強くなれるよね~命の駆け引きみたいな所だし。
とまあ、謎多きこの場所、そこに隣のクラスの一人がその危ない数ある場所を転々と潜り抜けていると言う噂を聞いた。その時、《こんな場所だもんなあ...そんな奴が一人二人いても可笑しくないよなあ》といい加減な事を思ってしまった。この時は本当にまだ何も知らなかった。
あの日。そいつとの出会いが俺の道を決めたようなもんだった。
雨が降っていて、殆どの奴等が校舎の中で自習やら何やらやっていた時のこと、ふと、何の拍子でもなく窓を見たとき、一人誰かが校庭へ出て行くのが見えた。何やってんだアイツ。傘も差さないで。何て考えながら見ていたら、そいつ、禁忌の底なし沼への道を難なく潜り抜けちまったんだ。
「飛んでくる無数の四方の矢を全部避けやがった...」
知らずそう一人呟いてしまった。だってさ、本当に凄かったんだ。まるで踊るがごとく美しく避けるもんだから。あの動きは並み大抵の者じゃ無し得ない。まだ1年しかココで勉強していない俺でも解った事なんだからきっと、ホントにそいつタダ者じゃなかったんだ。
一言で言うなら興味。(と言う名の一目惚れ。)
うん、なんか友達に「お前ってホント単純で簡単な奴」って言われてる理由が解った気がする。
とまあ、後先考えずに飛び出してそいつの後を追っていったんだけど...道に見るは未知なトラップの後(こんな時になんてギャグを...)...そこで気がついたんだ。ここはきっと俺が居てはイケナイ場所。次元が違う場所だと。このままじゃ命の危機だ。引き返せ。本能がそう言う。
キキーン!!
なにか透き通る音がした。その後からもの凄い爆発音。煙をまといながら現れたのは俺が追いかけたアイツ。珍しい緑の髪に銀色の鋭い眼光をもつ、学園きっての無口で
「お前が【草野千枝。禁忌破りの問題児】か?」
あいては目を丸くして驚いていた。
「あんた誰。」
「俺は【清流斗潮。無駄な命知らず】だ。」
我ながらアホな自己紹介だった!【無駄な命知らず】ってなんだよ!!馬鹿か俺!!何張り合おうとしてんだ!!!
「そう、じゃあ注意も必要ない。死にたければそこに居ればいい。」
「あれ、真に受けちゃった?ちょっと冗談入ってたんだけど」
「こんな所来る奴、よほどの変わった奴か、命知らずか、馬鹿な奴。」
ああ、すべて俺の事を言っているような気がするよぅ!特に最後の言葉をより強く言ってたし...み、見抜いているのかっ!?
「で、君はどうしてそんな事するんだ?」
「お前には関係ない。」
「え、まあそうだけど...し、知りたいから教え...」
「知る必要は無い。」
「だから、どうして、そう言うことを」
「帰れ。」
彼女が強く、重く言い放った。その声には緊張が走っている。草野は向こうから来る気配の方向を向いていた。
「何かいるのか?ここ...」
「帰れと言った筈だ!」
「ヤダネ!」
「手遅れになるぞ。」
頭の中で警告が鳴る。帰るなら今の内だと。これ以上ここに居るなら後戻り出来なくなると。
危険だ。
この場所も
この子も
全てがこの世界のものじゃないような。
本能が言う。
今ならまだ間に合うと。
「私に関わるとお前も死ぬ。だから私を一人に...」
「うるせえ!!」
本能も、警告も。全てがどうでもよかった。
「誰も一人じゃ...生きれねぇんだよ!!死んじまうんだ!!心がな!!」
草野は驚いてたが、すぐに元の鋭い目つきをし、俺を見つめながら言い放った。
「それでも私は一人にならなきゃいけない。それが定め。それが...一番いい方法」
その時、気ずいた。どうしてこいつが他から神秘的で近ずけないと言われるのを。たしかに、神秘的で、強く、その眼光も何もかも独りになればなるほど、強く、美しくなる。そして物静かな所も全てがいいと周りには思わせられる。だけど、俺にはその奥に寂しさと何だか分からない闇を感じさせるんだ。
彼女の神秘さは危ない。このまま一人にしたらよくない事がおきる。
昔から働く変な直感が俺を突き刺す。彼女を一人にしたら駄目だと。
今思えばそれが俺の隠された能力だったに違いない。
「私は宿り木を持ってはいけない。」
きっと理由があるんだろうが
「そんなの俺はシラネェ!!」
「帰れと言ってるでしょうが!!」
「帰らん!!しったこっちゃねー!!」
「分からず屋め!!」
「言ったはずだ!!俺は無駄な命知らずだ!!」
あとで本当になってしまう俺の二度名。はっきり言って悲しい!!
「...好きにしろ...」
その後の戦いは目を見張るものがあった。もちろん出てきた怪物を草野が攻撃し始め、致命傷を草野が受けたとき俺がそいつにハンマーをお見舞いしたんだけど。
倒した後に草野はお礼を言って二度と口を聞くなっていってたけど、
勿論止めるつもりなんかサラサラないし?元より俺って危ない事に首突っ込むし?
もう後戻り出来ないし?
これからヨロシクナ草野千枝!!
「いい迷惑だ...まったく。」
千枝は眠そうに机に突っ伏した。
その5へ
無理やり感が強いですね。
草野千枝編は後ほど特別編として書きますんで。