番外編19:『因果のロスカット・パレード』〜結婚直前の土壇場でハシゴを外され、自らの傲慢と優しさの檻に自滅していく女子たちと、名前に人生をハックされた男の過酷な運命ログ〜4
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
第4話(完全版):タワマンの夜景に脳を焼かれた「偽装キラキラ女子」が、スイートルームでコンドームのように使い捨てられるログ(インフルエンサー・沙織の場合)
沙織(27歳)の人生のインフラは、100%「映え」で構成されていた。
港区女子の生態ログに憧れ、身の丈に合わないブランド品や高級ラウンジの写真を匿名SNSにパージ(投稿)しては、他人のスペックを値踏みして生きてきた。
彼女にとって恋愛とは、自分という商品を最高値で売却し、フォロワーからの嫉妬の視線を浴びるためのチェス盤だった。
そんな彼女の前に現れたのが、金融系の実業家を名乗る、実年齢より遥かに渋い貫禄を持った男、林(36歳)だった。
林が沙織の強固な「見栄のセキュリティ」をハックした手口は、彼女の『値踏み癖』を逆手に取った極めて洗練されたものだった。
最初の出会い、林はあえて「品のある男」を完璧に演じた。普通のハイスペ男のように自分の財力を誇示するのではなく、沙織が身につけていた偽装ブランド品のディテールや、彼女が「本当に良いもの」に見せかけようとしていた仕草を、見事に肯定してみせたのだ。
「沙織ちゃんって、自分の魅力をどうパッケージすれば一番美しく見えるか、完璧に理解してるよね。ネットの有象無象の港区女子とは、自己プロデュースの次元が違う。君みたいなセンスのある女性なら、俺の隣に並ぶインフラとしてこれ以上ないよ」
自分の虚飾を見抜かれるどころか、「最高級のセルフブランディング」として全肯定された沙織の脳内は、勝利のファンファーレで満たされた。
さらに林は、出会って間もない彼女に「これ、来週の経営者仲間のパーティーに着てきてよ」と、本物の超高級メゾンのワンピースを無造作にプレゼントした。
「ついに私は、私を最高値で買い取ってくれる本物の資産家を捕まえた」
沙織の防衛線は、この圧倒的な物質的インフラのパージによって一瞬で灰滅した。
だが、林の目的は「攻略完了後の無慈悲なロスカット」である。
男が用意した五つ星ホテルのスイートルーム。沙織が部屋の夜景やシャンパン、そして林から与えられたバッグをスマホで実況中継(裏ログ)し、フォロワーに向けて「最高の夜❤️」という欺瞞のシグナルをパージし終えたその瞬間、林の冷徹な声が響いた。
「お前さ、俺のことじゃなくて、この部屋と俺のスペックしか見てないよね。その透けて見える権利意識と傲慢さ、ぶっちゃけ見てて吐き気がするわ。本日終了でお願いします」
沙織の脳内システムがパニックを起こした。
「え……!? 林くん、何言ってるの!? 冗談でしょ!?」「冗談じゃないよ。俺を自分の『映え』の道具(器物)にすんのやめてくれない? 俺、そういう中身のない薄っぺらい女、一番嫌いなんだよね」
林の冷酷な言葉の刃に、沙織のプライドが激しく逆上した。
彼女はスマホをベッドに叩きつけ、髪を振り乱して抵抗した。「ふざけないでよ! あなたが私をここに誘ったんでしょ!? 私がどれだけあなたのために予定を合わせて、あなたの好みに合わせてきたと思ってるの!? 今更そんな理由で捨てるなんて許さない! SNSにお前のこと全部晒して、社会的破滅に追い込んでやるから!」
しかし、林の「免責の盾」は完璧だった。彼は狂乱する沙織を冷たい目で見下ろしながら、ポケットから一枚の書面を取り出した。
「晒せば? だけど忘れないでね。お前が俺から受け取ったブランド品や、この部屋の予約、全部『沙織ちゃんがどうしてもここに泊まりたい、このバッグが欲しいと懇願したから、善意で手配してあげた』っていうLINEのログ、全部保存してあるから。
脅迫罪でカウンター当てる準備はできてるよ。あとさ、この部屋のチェックアウト費用とバッグの代金、お前のカードで決済しといたから。
俺のステータスを利用しようとしたコスト、ちゃんと自分で払ってね」
「なっ……! 嘘でしょ!? 私のカードで……!? 返してよ! 返しなさいよ!」
沙織は林の胸ぐらに掴みかかろうとしたが、林は彼女の腕を冷酷にいなし、コンドームを破り捨てるようにスイートルームの鍵を置いて無言で退場した。
ドアが閉まる金属音だけが、静かに響いた。残された沙織の目の前には、莫大なホテルの請求額と、虚飾の更地が広がっていた。
SNSには「最高の夜❤️」と嘘の投稿をし続けながら、現実には男に staging(踏み台)にされた猛烈な屈辱。
他人のスペックを値踏みしていたつもりが、自分自身が最も雑に消費され、使い捨てられたという事実。
彼女の認知システムは崩壊し、その後、借金をしてまで「キラキラした私」をSNSに擬装し続けるゾンビへと退化した。
自らの欺瞞の檻の中で、請求書に押しつぶされて自滅していく、港区のモブ。それが彼女の凄惨な末路だった。
第5話へつづく




