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カヤ・キシュ

挿絵(By みてみん)



雲海を突き抜け視界が拓けると

眼下に広がるは大地より突き出す無数の岩

その平らな上面は他の岩のそれとつながり曲がりくねり

複雑な模様を成している、側面は段差と絶壁から成り

岩と岩の間を通る砂の河を横目にそそり立っている


カヤ・キシュ台状岩盤地帯、南方から吹き付ける大強風の運ぶ砂の流れが

幾千万年をかけて硬質のレダ頁岩けつがんに刻み込んだ黄褐色の芸術


砂の河の金色の流れに沿う岩の影の漆黒

壁面の褐色の赤のまた赤の層の折り重なるの成す縞模様

岩の表面の窪みの水たまりに光る陽光のきらめき


それらは後方へ過ぎ去り、また過ぎ去り、また過ぎ去る


「これより上昇に入ります、衝撃にお気をつけください」


アナウンスが入る、窓から前方を見やれば壁、果てしない壁面

地平線も空もない、黒い、薄緑と黒の石と草の山肌

ウカラ・クシュ山脈、前方はその高峰の一つ、リンギード山か

山裾に岩盤との境界に森の緑は広がりゆく、その上を飛行機は飛んでゆく


体が押さえつけられるような感覚

視界の全体を上から下へと山肌の凹凸おうとつの散らばりは流れゆく

やがて、白い物が見えてくる、雪だ

山頂を覆う雪の白の光、まぶしく両眼を突いてくる

突如、空が下りてくる、青空と白い雲とがの景色のとばりを下すように

機は頂を超えたのだ、遥か向こうに立ち塞がる壁はターロス山脈

青い影となって正面から遥か左へと連なっている


直下に目を移す、突き出した岩、側面に表れた地層

巨大な石板の半分を山に埋め込んだような岩

それらの表面に降り積もった雪の白の絶壁に露出する山体の黒と褐色

手に触れんばかりの距離を通り過ぎてゆく

そして落ち込んでゆく、どんどん遠くなる

山頂から中腹へ山裾へ景色は移り変わり遠のき広くなる


目を上げれば山裾の森の向こうに暗い緑はどこまでも広がりゆく

湿原、表面の水の薄膜、その下の複雑な地形、水底みなそこの浅い窪みの濃い緑

深い窪みの果てしない暗緑、苔と藻と泥土と葦

水面みなもから疎らに突き出すタチワレの木、絡み合うイラクサガイの木の密生


ホロ・レベシュ大湿原、ターロス山系より

十数の急流となって駆け下る雪解けの水の行き場の無い流れの

滞積の果ての腐敗と繁茂と泥濘でいねいの地


果てしなく続く、果てしなく続く・・・・・

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