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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

距離

作者: 藤原麻呂眉
掲載日:2026/01/26

本作は、日常の一場面を切り取った短編です。

現在連載中の「Unspoken…」とは世界観を共有していない、単独作品となっています。


言葉にされなかった感情や、名前のつかない距離感を描いています。

静かな時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。

「なぁ、春。今日一緒に帰ろう?」


 授業の合間、昼休み。

 空き教室の隅、床に座って壁に背をあずける。俺の隣で微睡む春に話しかける。


「あーいいねぇ。あ、やっと受験から解放されたし、夏くんが気に入ってたあのカフェ行きたい」


 高校3年生の冬。あと2ヶ月もすれば、俺たちは別々の土地で別々の大学に進学する。


「もうすぐ、こうやってダラダラできるのも終わりなんだな」


 春のサラサラな髪を見つめた。


「三年間あっという間だったね。

もう、高校生活やり残したことない?」


 目を瞑ったまま問いかけてくる。


「やり残したことか」


 教室を見渡し、思い出を振り返った。


 俺と春の出会いは、高校に入学して初めてのクラス。たまたま隣同士の席になって意気投合したのがきっかけだ。


 文化祭も、修学旅行も、花火やクリスマスも。


 気づけば隣に、春がいた。


「俺は……結構満喫したかも」


 春がクスリと笑ってこちらを見つめてくる。


「何それ」

「僕は、もっと二人でpictokで動画撮ったり、制服で一日中ドリームマウスランドで遊び回ったりしてみたかったかも。お揃いの耳付きカチューシャなんかつけたりしてさ」


 背伸びをして、また壁に寄りかかって目を瞑る。


「それは大事なやり残しだな。

来週、一緒にどう?」


「うん、いいね」


 表情は読み取れない。けど、声色は弾んでいた気がする。


「俺ら大学に行っても遊んだりしような」


「それは、どうかな」


 春の口元が微笑む。


「人生なんて、何が起きるかわかりませんからね」


 春はわざとらしく息を吐いた。


「春が、嫌だって言っても遊びに行く」

「お互いに新しい友達ができたって、春の隣は俺の席だから」


「はは、そんなの今更でしょ」


 春の頭が夏の右肩に乗る。

 いつもの甘いシャンプーの香り。

 夏も体重を預ける。


ーーキーンコーンカーンコーン……


 予鈴が鳴る。

 次の季節まで、あと5分。

挿絵(By みてみん)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


本作と同じく、言葉にしない関係性や心の揺れを主軸にした連載作品

「Unspoken…」も投稿しています。


もし雰囲気がお好みに合いましたら、そちらも覗いていただけたら幸いです。

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