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1章第9話北の風、南の約束 ― 分岐する旅路 ―

朝靄に包まれた青森駅のホーム。

吐く息が白く溶ける中、日比野結衣はスマートウォッチを確認していた。

「次のチェックポイントは……函館? まさか、海を越えるとはね」

隣に立つモブ参加者の一人、写真家の水嶋亮が笑った。

「旅は、知らない風に吹かれるほうが面白いですよ」

二人はフェリー乗り場へ向かう。青森の潮風が、始まりの街・東京の熱気を遠い記憶に変えていく。


そのころ、関西ルートでは唐沢陽介と桐谷美羽がサイコロステージに挑んでいた。

「出た目で行き先が変わるんやろ? ここは……運や!」

唐沢が転がしたサイコロは、静かに止まり――“6”。

「大阪経由・九州行き!」と実況が叫ぶ。

美羽が小さくガッツポーズをする。

「運も実力のうちやな!」


一方、御影慎と中村慎之介は北陸新幹線の車内。

「このペースじゃ脱落は避けられないな……」

「焦るな、御影くん。人生も旅も、早く着けばいいわけじゃない」

慎之介の落ち着いた声が響く。二人の背後のモニターには、再び“ワンダーボンビー”の姿が映った。

「ハッハー! まじめに生きる人ほど、ちょっとズレちゃうボン♪」

車内に小さなどよめきが起こる。


北海道へ渡る者、九州へ向かう者、中央に留まる者。

9,999人の分岐点が、まるで運命の樹の枝のように広がっていく。

東京から始まった物語が、今や列島全土を駆け巡る。

そして画面の片隅で、MC・橘レオンが宣言した。

「次のイベント、“人生の分岐カード”が各地に配布されます! 選択を誤れば脱落、しかし正解ならアジア行きのチケットが近づく!」


結衣はフェリーの甲板で風を受けながら、遠くに霞む函館の灯りを見つめた。

彼女の胸中で、見えない声が囁く。

――まだ誰も、本当の“ゲームの意味”を知らない。

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