【第1章第54話 新潟クロスリンク・再起動列車】
越中を抜け、列車は新潟県境を越えた。
山間を抜けるトンネルの出口で、光が一気に広がる。
眼下には広大な平野、田の水面に空が映っている。
「これが越後……。」
玲奈が呟く。
翔は頷きながら、端末の通信ログを確認した。
【全国再接続:進行度92%】
あと少しで全国マップが完全に復旧する。
だが、静寂を切り裂くようにアラートが鳴った。
【クロスリンク・エラー】
御影が即座に反応する。
「二つのルートデータが同座標で重なってる。
これは“再統合”じゃなく“干渉”だ。」
モニターに映ったのは、新潟駅の構内。
しかしそこには、同じ構図の映像が二重に存在していた。
片方は翔たちの現在地、もう片方は――別ルートの“彼ら”。
「……あれ、俺たち?」蓮が驚く。
「まさか、もう一つのチームが――」
「並行記録体が出現した。」結衣が冷静に分析する。
「データがループし、自己衝突を起こしてる。」
そのとき、レオンの声が割り込んだ。
「おっと!? これは前代未聞の事態!
全国再接続の副作用で、“もう一つの自分”が登場だぁ!」
玲奈が端末を握りしめた。
「どうするの? 放っておくと記録が壊れる。」
御影が静かに言う。
「統合じゃなく、選択だ。どちらの記録を“残す”か。」
翔は迷った。
だが、画面の向こうの“もう一人の翔”が口を開いた。
『こっちは京都ルートで遅れてた。
でも、お前らが進んだ道も、俺たちの道も同じだろ?』
“もう一人の翔”が笑う。
『なら、二つの旅を重ねればいい。』
端末が光り、クロスリンクの線がひとつに収束した。
データの統合成功――表示が切り替わる。
「……やったか?」
結衣が画面を確認し、微笑む。
「二重記録が一つの流れになった。全国マップ、100%。」
その瞬間、新潟駅の構内に“再起動列車”が入線した。
車体には「CROSS-LINK EXPRESS」と描かれている。
レオンの実況が熱を帯びる。
「全国予選・中盤突破記念スペシャルミッション!
再起動列車、全ルート統合者限定で発車します!」
翔が笑った。
「やっと、ここまで来たな。」
玲奈が頷く。
「でも、まだ先は長い。きっと次は“東の境界”よ。」
蓮が立ち上がる。
「よっしゃ、再起動列車、乗り込もうぜ!」
汽笛が鳴る。
再構成された地図が光の軌跡を描き、列車は東へ。
全国再統合ルートの真の幕が、いま上がった。
(第1章第54話 了)




