【第1章第53話 越中・記憶の再接続ポイント】
富山から東へ向かう電車は、田園を滑るように進む。
春の光がガラス越しに差し込み、どこか懐かしい空気が漂っていた。
「越中って、こういう穏やかな場所なんだな。」
翔が窓の外を見ながらつぶやく。
蓮が笑い、カメラを構えた。
「こういう景色、ゲームの中にあると絶対人気出るぞ!」
車内に響くのは、ゆったりとした車輪の音。
だが端末の画面には、淡く赤いラインが点滅していた。
【記憶再接続フェイズ開始】
「また来たか……」御影が小さくつぶやく。
玲奈が表示されたメッセージを読む。
『過去に脱落した旅人が、一時的に“記録の残響”として復帰可能。
ただし、再接続中は現在データが不安定になる。』
「つまり、ゴーストではなく“記憶の再会”ってことね。」
その瞬間、列車の通路に人影が現れた。
「……お前ら、まだ続けてたんだな。」
唐沢陽介――北海道ルートで姿を消していた彼が立っていた。
翔が立ち上がる。
「唐沢!? まさか復帰フラグ……!」
「いや、まだ“再接続状態”だ。完全には戻れてない。」
唐沢の声に、少しノイズが混じる。
玲奈が微笑んだ。
「でも、こうして話せるだけで十分。だって――」
「――旅は、誰かの記憶が続けてくれるから。」
車内の照明が一瞬落ち、別ルートの映像がモニターに映し出された。
『京都ルート再開、桐谷美羽・中村慎之介、通信安定。』
『広島ルート、千堂葵・蓮、データ補完成功。』
『関東ルート、翔・玲奈・結衣、記録リンク維持中。』
レオンの実況が響く。
「おおっと、全国各地で“再接続フェイズ”が一斉発動中!
まるで各地の記憶がひとつの地図に戻っていくようだ!」
唐沢が微笑んだ。
「……俺、もう一度だけ走りたい。北海道の空まで、繋いでくれ。」
御影が端末を操作する。
「了解、再リンク承認。これで全ルートが一時統合される。」
列車の窓の外、青空に光の線が走った。
それはまるで、全国を一本の軌跡で結ぶかのようだった。
玲奈が言う。
「ねぇ翔、もし誰かが消えても――」
「記録がある限り、また会える。」翔は静かに答えた。
列車は越中の地を抜け、次の目的地・新潟へ向かう。
車内のスクリーンには“再接続成功”の文字が浮かんだ。
全国の旅が、またひとつに繋がる。
(第1章第53話 了)




