【第1章第47話 敦賀ポート・分岐前夜】
夜明け前、フェリー「ノースレーン号」は静かに敦賀港へ入った。
霧は晴れ、海は穏やか。だが、甲板の空気には張りつめた緊張が残っていた。
「……やっと地に足がついたな。」
岩永蓮が深呼吸をしながら笑う。
「海の上だと、どこまでも自分の影が追いかけてくる気がしてさ。」
翔は無言で頷き、端末を開く。
【イベント結果:推理フェイズ完了/全員生存/記録安定率92%】
結衣が小さく微笑んだ。
「高城のデータ、完全に消えたわけじゃない。
航跡に、“誰かがいた記録”だけが残ってる。」
港の電光掲示板が点灯する。
『敦賀ポート:中継ハブ地点。
次ルート選択――北陸再巡行/関西逆走/東北再帰』
御影慎が読み上げる。
「つまり、ここが全国中盤の分岐点というわけだ。」
唐沢陽介がルーレットカードを掲げた。
「ここでルートを決めるんだな。運命のスピンだ。」
「でも、ただのルーレットじゃない。」玲奈が指摘する。
「ここには“記憶投票”っていう仕掛けがある。
過去に誰と旅をしたか、心が選んだ方向がルートになる。」
慎之介がゆっくり言う。
「つまり、絆の方向が進路を決める。」
翔は静かにルーレットの前に立った。
金属の矢がゆっくりと回転する。
東北、北陸、関西――文字が光り、やがてひとつに止まる。
『北陸再巡行ライン』
レオンの実況が響く。
「選ばれたのは北陸ルート! 敦賀から金沢、そして能登へ!」
蓮が笑う。
「また俺の庭だな。」
結衣が即座に返す。
「でも今度は、“記憶が先に着いてる”場所よ。」
玲奈が首を傾げる。
「それ、どういう意味?」
「私たちが行く前に、もう“誰か”が到達してるってこと。」
港の時計台が鳴った。
空の色が微かに反転する。
翔が小さく呟いた。
「時間のズレ……まさか、ルート間で時差がある?」
御影が端末を確認し、顔を上げる。
「時間軸の再構成……各ルートが少しずつズレ始めてる。
このまま進めば、同じ場所でも“別の現実”に入るかもしれん。」
唐沢が肩をすくめる。
「ま、面白いじゃん。ゲームは続くんだろ?」
慎之介が微笑む。
「そうだ。旅はまだ終わらない。」
レオンの声が最後に重なる。
「敦賀ポート・分岐前夜――これより日本列島、再巡行モード突入!」
波が打ち寄せ、朝日がゆっくりと昇っていく。
(第1章第47話 了)




