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【第1章第46話 推理航路・誰がワンダーフォロワーか】

フェリー「ノースレーン号」内部。

 非常灯だけが赤く灯る廊下を、翔たちは慎重に歩いていた。

 波の揺れが体を小刻みに震わせる。

 船内放送が、低く告げる。

 『残り時間:17分。ワンダーフォロワーを特定せよ。』


 唐沢陽介が焦ったように笑う。

 「なぁ翔、推理戦ってこういうの想定してた?」

 「人生アクションの一種だろうけど、ここまで密室とはな。」


 玲奈は壁にもたれ、静かに目を閉じた。

 「ワンダーフォロワー……“他人の記録を歩く者”。

 つまり、誰かの過去行動を模倣して潜伏してる存在。」

 御影が頷く。

 「行動ログを照合しよう。どの時間、誰がどこにいたか。」


 翔が端末を開く。

 【記録データ/第45話時点】

 ・翔:甲板監視 05:00〜05:30

 ・玲奈:医療室で備品整理

・結衣:データ同期中

 ・蓮:エンジンルーム点検

・慎:船長室付近で通信確認

 ・唐沢:厨房でルーレット検証


 御影が眉をしかめる。

 「結衣、同期って……何と?」

 「新潟港の端末。だけど、途中で“別ID”に干渉された。」

 蓮が顎を掻く。

 「そりゃもう確定だろ。そいつがゴーストじゃね?」

 玲奈がすぐ遮る。

 「早い。――もう一人、“復活者”がいたはず。」


 その瞬間、非常灯の下に影が落ちる。

 海霧の中から現れたのは、先ほど海から上がってきた男だった。

 名札には“高城航平”の文字。

 内部データではモブ扱い――だが、誰もそれを知らない。


 「俺がフォロワーだと?」

 声は落ち着いていた。

 「違う。俺は“失われた船員”の記録。

 船と一緒に沈んだデータの残響だ。」


 レオンの実況が割り込む。

 「推理フェイズ、最終判定前!

 参加者は一名を指名せよ――!」


 唐沢が手を挙げる。

 「俺は結衣さんに一票。干渉されたログが怪しい。」

 御影が慎重に言う。

 「だが高城も“未登録”だ。存在そのものが不確定。」

 翔は静かに周囲を見回した。

 全員の目が交錯する。

 船の揺れが大きくなり、甲板の上で霧が弾けた。


 「……結論を言う。」翔は口を開いた。

 「ワンダーフォロワーは“高城航平”。

 でもそれは、敵としてじゃない。“記録そのもの”だ。」


 玲奈が小さく頷く。

 「つまり、この船が抱えていた“もう一つの過去”。」


 高城が笑った。

 「ようやく気づいたか。俺は消えるために現れた。」

 その言葉とともに、彼の体が白く光り、霧と共に溶けていった。


 レオンの声が響く。

 「判定――成功! 推理完了。

 ワンダーフォロワー:正体=記録残響体。船内安全化。」


 静寂が訪れた。

 波の音だけが残る。

 翔は呟いた。

 「記録が人になる。……旅って、もう現実と夢の境がないな。」

 慎之介が微笑んだ。

 「境界を歩ける奴だけが、最後まで残るんだ。」


(第1章第46話 了)

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