【第1章第44話 越後ライン・雪の境界】
山形から新潟へ抜ける越後線。
車窓を流れる雪景色は、白一色のはずだった。
だが、その中に薄く光る線が走っている。
「これは……記録の残響だ。」翔がつぶやく。
列車の端末に、半透明のマップが浮かぶ。
“越後ライン:再構築中。未確定データ多数。”
結衣が頷いた。
「このルート、かつての参加者データが散らばってる。
つまり――“復活イベント”の可能性が高い。」
玲奈が少し顔をしかめる。
「つまり、また誰か戻ってくるってことね。」
「いいこととは限らんけどな。」御影が静かに答える。
雪深いトンネルを抜けると、信濃川の光が見えた。
そこに待っていたのは、一人の男。
「久しぶりだな。」
中村慎之介――かつて北陸ルートで別れた旅館経営者。
彼の足元には、古いカード端末が光っていた。
「俺は“再巡行者”。データの裂け目に落ちて、戻ってきた。」
翔が息をのむ。
「復活パターン……まさか、あんたまで。」
慎之介は笑った。
「旅ってのはな、帰る道を見つけるもんだ。」
その時、空にざらついた音が響く。
列車の上空、薄く人影が揺らめいた。
「またゴースト?」蓮が身構える。
違った。
音の主は――再召喚された“他ルートの参加者たち”だった。
「三重合流イベント、発動。」
レオンの実況が入り、雪原が光に包まれる。
新潟港側から北陸チーム、長野山中から中央チームが姿を現した。
「ここが合流点、“雪の境界”だ。」
唐沢が手を振る。
「みんな無事でよかった!」
千堂葵が微笑む。
「まだ旅の途中よ。泣くのは早いわ。」
その瞬間、端末に赤いアラートが走った。
『強制移動イベント発生:新潟フェリーライン起動』
玲奈が叫ぶ。
「待って、まだ統合処理が終わってない!」
しかし列車の床が光り、全員の姿が白に包まれる。
最後に翔が見たのは、雪原の中で佇む慎之介の笑みだった。
「――次の港で会おう。」
視界が反転し、凍てついた海風の音が響く。
新たな舞台は、フェリーの甲板だった。
(第1章第44話 了)




